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ダーナの論理

摩尼寺参拝祈願

 4月9日(木)、報告書を持参して数ヶ月ぶりに摩尼寺を訪れた。門前に人影はまったくない。茶屋の灯りも消えている。そのまま、脇道の山道を車で上向。本堂裏の境内片隅にたどりつき、庫裏の正面側まで歩いて行った。ここも人影はない。そこに住職代行があらわれ、報告書を手渡した。

  「この境内だけはコロナの塵埃がまったく感じられませんね~」

  「ええ、ここは浄化されてます、大丈夫です。」

 そんな会話をしてから本堂を参拝。ささやかなお賽銭とともにコロナ駆除を祈願した。馴染み深い静閑な山寺に癒された。

 もう一ヶ所、報告書を預けたいところがあった。市内の紅茶店には、かのシンポジウムの広報でお世話になっていて、できればお茶を飲みながら報告書の内容を語り合いところだが、そういう時期ではないという自覚も強くあり、行くべきか否か車中で悩んだが、もしも客人がいたら入店しないと決めて長田神社の方角をめざした。こちらも人影がない。一台の車も停まっていないし、ガラス窓越しに店内を覗いたが、やはり一人の客もいなかった。少々安心して扉をあける。報告書をわたして、茶葉を買いたいというと、「いまはキームン以外、神戸の貿易商に茶葉が届かない事態になっていて、生憎ですが売れないんです」とめずらしく素っ気ない。少々粘る。

  「このまえマツコの番組をみていたら、チャイの達人おじさんがでてきてね。アッサムCTCを
  水とミルクで煮出したあとルフナで香りづけすると良い味になるとのことなので、試したくて
  買いにきたんですけどね・・・」

と事情を説明すると、あっさり了承され、CTCとルフナを50グラムずつ売っていただいた。八朔のマーマレードも買った。この人気店に一人の客もいないのをみたのは初めてのことである。
 この夜、島根で初のコロナ感染者が発覚した。その松江の高校生は夜の飲食のバイトをしていて、先月の3連休に母親と大阪旅行をしたとのこと。母親も感染しており、濃厚接触者は少なくないようだ。ネット上では、鳥取・島根の両県民が励ましあうコメントが溢れ、島根などの県外者から鳥取に対して「決勝進出おめでとう! 優勝してください」との激励があった。


禁断の蕎麦屋

 翌日、まる十日ぶりに奈良の自宅に戻ることにした。鳥取道は修理工事中で、河原インターから地道に降ろされ、智頭南まで走っても高速に上がれない。駒帰を過ぎて「みちくさの駅」が右手にみえたので、蕎麦の誘惑をこらえきれず入店。やはり客は一人もいない。3月いっぱい冬季休業だったので、久しぶりに大ザルをたくりたかったが、残念なことに、蕎麦は最後の一人前(並)しか残っていなかった。客足が落ちこむことを見越して、蕎麦打ちの量を減らしているのだという。また、テーブルは対面を回避するため片側座席に変更していた。二人でざるそば一杯、半殺し餅2本を注文。その後、お客が二組(3名+1名)入ってきた。二組とも蕎麦を所望したが、申し訳ないけれども、いま売り切れたばかりであり、一組は珈琲、一組はそばがきを注文された。



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循環の破綻

 高田渡のトークを思い出す。一日中ヒマで仕方ないとき、洗濯機や水道の蛇口を歯ブラシでピカピカになるまで磨いてしまうんだ、と。半年ばかり前の息子もそういう状態だったのだろう。親とは真反対に極端な綺麗好きで、食事後の皿洗いは瞬時に片付けるし、食洗機の扱いも見事。布巾の類は塩素水につけて殺菌してしまう。逆立ちしても真似のできない生活態度である。
 そんな綺麗好きの男が金魚水槽に目をつけた。水は濁り、アクリル面に藻が付着している。夏祭りの金魚掬いで手に入れた小さな八尾の金魚たちは体調数センチにまで成長しているが、濁り水や藻のためにみえにくくなっていた。これを、キッチンシンクを清掃する勢いで綺麗にしてくれたのだ。水は透明になり、アクリル面に付着していた藻も消えている。大きくなった金魚は外側からよく見えるようになった。家族一同喜んだ。
 しかし、二月ばかりして、大きな金魚一尾が死に、またしばらくして別の金魚が水に浮かんで死体となった。金魚の遺体は珈琲樹の鉢に埋葬した。金魚としての生涯を終えたが、その栄養分で珈琲豆に転生してもらいたいと願ったのである。
 その後も金魚は死に続け、七月には二尾まで減り、先週から最後の一尾を残すのみとなった。息子は金魚を病気だと思ったようで、最後に残った一尾の金魚をバケツに隔離している。塩素中和液に加え、殺菌液やビタミン液も買ってきて水槽やバケツに注ぎ込む。なんの効果もなかった。

 理由は分かっていた。水槽内の循環が破綻してしまったのである。わたしもずいぶん金魚やメダカを死なせてきたが、あるとき悟りを開いた。目覚めてしまったのである。魚を生存させているのは微生物なのだ、と。空気ポンプのスポンジ槽は2週間もすればどろどろのヘドロ状になる。そこはアンモニアの毒素を解体する微生物の巣になっている。金魚の糞尿を浄化して住み心地のよい水環境を維持してくれる。その一方で、スポンジ槽を放置しておくと、ポンプが詰まり、空気の出が悪くなる。
 ある朝、目覚めたのである。そうだ、微生物の巣となったスポンジ槽をチューブから切り離して水槽の底に残し、ポンプのチューブには新しいスポンジ槽をつなげばいい。この新しいスポンジ槽は周期的に清掃するが、古いスポンジ槽はいっさい触らない。水替えのときも、元の水を半分以上残して古いスポンジ槽はそのままとし、新しいカルキ抜きの水を補充する。こういうやり方では水に濁りが消えないけれども、金魚は死なない。金魚は透明な清水を望んでいるわけではないのだ。藻や微生物で濁った水が棲みやすいのである。
 息子は水槽を完全清掃するにあたって、古くなって汚れたスポンジ槽を廃棄してしまった。これが金魚連続死の原因である。2日前、ホームセンターに行って400円で小さな金魚を五尾買った。生き残った金魚とともに水槽に流しこんだ。バケツのなかで使われていたポンプのスポンジ槽はすでに汚れて深緑色になっている。微生物が培養されている証拠である。バケツの水も水槽に移した。十分ではないかもしれないが、すでに水中に微生物は拡散されているはずである。循環の準備は整った。

 さきほどまでTVで「ハウルの動く城」をやっていた。ハウルがソフィーを叱ったシーンに思わず笑う。ソフィーが良かれと思ってハウルの部屋を片付けたばかりに、魔法の一部がおかしな具合になり、髪を洗ったハウルが金髪になってしまったのである。「部屋を片付けるな」とハウルは怒って指示する。研究者も同じさ。汚い書斎が良いのである。整理されていないようで、研究者個人にとっては都合よく構造化されている部屋が細君や秘書や愛人によって片付けられるとパニックに陥ってしまう。放心状態になって、しばらく原稿が書けない。半死状態と言ってもいい。金魚の苦しさを身をもって味わうわけだ。

 

FCセクストン東西対抗オフサイド講座 レポート(3)

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 最後にトリを務めた篠田健一さんの講演要旨をお届けします。篠田さん作成の講演配布資料テキストをそのまま転載しますが、図版については一部差し替えています。

ここまでわかった! 日本人の起源

 20世紀後半から始まった分子生物学の発展によって、今世紀のはじめには、われわれホモ・サピエンスがおよそ20万年前にアフリカで誕生し、10万年より新しい時代に世界に拡散したということが明らかになった。そして現在では、DNAの情報に基づいた人類の起源や拡散についての議論が、世界の各地で行われるようになっている。遺伝子の系統解析は、現生人類(ホモ・サピエンス)の起源と拡散の経路に関するシナリオを構築し、集団の遺伝的な組成の比較は、従来の化石の研究とは異なる手法で、地域集団同士の近縁関係を明らかにしつつある。
 20世紀の終わりまでは、現生人類はおよそ2百万年前にアフリカを出た原人が世界の各地で独自に進化して、地域集団を形成したと考えられてきた(多地域進化説)。この学説に従えば、いわゆる「人種」は非常に長い歴史的な背景を持つことになるが、DNA分析の結果はこの学説を支持しなかった。DNA研究からは、アフリカを出たわずか数千人の人類が、数万年をかけて人間が居住可能な世界の隅々まで拡散したことが明らかとなっている(新人のアフリカ起源説)。このことは世界中に展開する現生人類は遺伝的には比較的均一な集団であるということを示している。この結果は、「全ての文化は同じ才能を起源として生まれ、基本的には同じ潜在能力を持っている」という認識の遺伝的な背景をなし、多様な社会を理解する際に重要な視点を提供することになった。
 日本人の起源に関しても、これまでは特定の地域からの渡来を想定していたが、アフリカ起源説が定説化したことで、発想を根本的に変える必要があることは明らかである。


篠田image1 
図1. DNAと考古学的な証拠から導かれた人類の世界拡散


1.日本人の起源
 地域集団の由来や成立の歴史を知ることは民族のアイデンティティと直結するため、古代から人類はその答えを求めてきた。日本列島集団に関しても、その成立史を明らかにするために広い学問分野で様々な研究が行われてきたが、最近では遺伝子研究が詳細なシナリオを提供している。従来の日本人の起源に関する研究の多くは、その起源地を特定するものだった。しかし、人類がアフリカで誕生し、世界に拡散したという事実を踏まえれば、この問いは「過去10万年間に、アフリカで誕生したホモ・サピエンスが、いつの時代にどのルートを通って日本に到達したか」という設問に置き換えて考えることになる。更に言えば、日本人の起源はアフリカを出た集団のアジアにおける拡散の中に位置付けられるものであり、東アジア集団の成立の歴史の一部として捉えるべきものなのである。

2.ミトコンドリアDNAの系統
 これまでに行われた集団の由来を解明するための多くのDNA研究は、ミトコンドリアDNAの系統解析をもとにしている。ミトコンドリアDNAは約16,500塩基の環状のDNAであり、1981年にはその全塩基配列が決定されている。ミトコンドリアは細胞質中に存在するので、卵子に由来するDNAが子に伝わることになり、従ってその解析は母系の系統を追求することになる。ミトコンドリアDNAは突然変異を起こす確率が核のDNAに比べて10倍以上高いと言われており、人類集団の中にも多量の変異が蓄積している。そのため、これまで世界中の集団で変異が調べられており、変異の系統関係が確立していて、集団の起源を追求するのに適している。ミトコンドリアDNAの遺伝子を記述している領域にある1塩基多型(SNPs)の組み合わせをハプログループと呼ぶが、この変異は人類が世界に拡散する過程で地域集団の中に生まれたので、ハプログループにも地域特有のものが存在し、それらの関係は人類の拡散の様子を再現するための手掛かりとなる。


篠田image2 
図2. 日本列島及び周辺集団のミトコンドリアハプログループの頻度


3.ミトコンドリアDNAから見た日本人
 図2は、日本人の持つミトコンドリアDNAのハプログループと周辺地域および縄文、弥生人と比較したものである。日本人の持つハプログループは朝鮮半島や中国東北部の集団と共通していることが分かるだろう。これらは弥生人にも共有されていることから、現代の日本人の持つ多くのハプログループは、弥生開始期以降に稲作農耕と共に列島にもたらされたものだと推測できる。現在では、現代日本人は在来の縄文集団に大陸から渡来した弥生集団が混血して成立したと考える二重構造説が主流となっているが、ミトコンドリアDNAの分析結果も概ねこの学説を支持している。ただし、最近行われた北海道集団を対象とした地域研究は、北海道の先住集団であるアイヌは沿海州の先住民と共通のDNAを持っていることを明らかにしており、列島集団の成立は単純な二重構造説では説明できていない。その由来を正確に知るためには、沖縄や北海道を本土日本の周辺地域としてみるのではなく、それぞれを独自の成立史を持った地域として捉える複眼的な視座が必要であることが指摘されている。


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 邪馬台国の所在地に諸説あるように、中国においても伝説の夏王朝の存否及び所在地は百家争鳴の状態にあった。しかし、河南省偃師の二里頭遺跡が殷(商)代初期にあたる二里岡文化(河南省鄭州市)に先行することが確定した結果、前世紀末までには、二里頭こそが夏の中心域であるとみなされるようになった。建築的には、『周礼』考工記に記載された「殷人重屋、四阿重屋」を彷彿とさせる裳階(もこし)付の正殿を広大な回廊で囲い込む宮殿跡が注目される。

 夏王朝の創始者を禹(う)と云う。あくまで伝承の域をでないが、禹は黄帝の玄孫にあたり、前二十世紀ころの中原(黄河中流域)を支配した。禹は人望篤く、黄河の治水に尽力した人物として史書に特筆されている。これと関係して、白川静は「禹」なる文字を「魚(の一種)」、藤堂明保は「蜥蜴(とかげ)」の象形とみる。禹(と黄帝)には『山海経』の霊獣に似るところがあり、洪水を制御する水神としての意味を担うという説が有力である。後代における龍のような神格、あるいは龍の起源とみなせるだろう。


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 二つの睡蓮鉢で冬を越えたメダカは数えるばかり。今年も加西パークで色とりどりのメダカを仕入れ、鉢に放り込んだ。4月28日(金)、その様子を確かめようと鉢を覗きこむと、別の小動物が水草上に浮遊している。両生類か爬虫類のようにみえたので、まずは柄杓で掬おうと試みたところ、いっさい抵抗を示さない。おそるおそる手で触れてみた。蜥蜴だ。溺愛しているペットのように物怖じすることなく、浮輪に揺られてゆらゆらするばかり。
 睡蓮鉢を治める禹にちがいない。このまま水に浮かんで極楽をきわめてほしい。数時間後、鉢を覗くと禹は消えていた。


0428蜥蜴01


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壁の花(植物)

ニオイアラセイトウ(匂いアラセイトウ)02 ニオイアラセイトウ(匂いアラセイトウ)01


 ウォール・フラワー(wallflower) は ニオイアラセイトウという和名をもつアブラナ科の多年草でもあります。この場合、「ダンスパーティなどで相手をしてくれる男性がいなくて壁際の椅子に腰かけている女性」とはなんの関係もありません。詳細は以下のとおり

ニオイアラセイトウ(匂いアラセイトウ)
植物界 Plantae
被子植物門 Magnoliophyta
双子葉植物綱 Magnoliopsida
ビワモドキ亜綱 Dilleniidae
フウチョウソウ目 Capparales
アブラナ科 Brassicaceae
アラセイトウ属 Matthiola
学名:Erysimum cheiri
別名:チェイランサス、ウォール・フラワー(wallflower)
花期:春
誕生花:5月6日
花言葉:逆境に打ち勝つ
出典:http://blogs.yahoo.co.jp/s4gurei/31227341.html


ウマ・エラマ

 個人的に「孤独な女」というイメージと重なるのはブータン高地に咲き乱れる黄色い花です(↓)。どんな草でも食べそうな牛やヤクなどの家畜がぜったいに食べない草です。人間も食べない。毒はないらしい。匂いが原因ではないか、とガイドのウタムさんは言っていました。ゾンカ語の呼称はウマ・エラマ(Uma Elama)、学名はSenecio Loetus Edgeworth とのことです。


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↑↓東ブータン・メラク高地(標高3400~3700m、2014)
2016壁の花01メラク02 2016壁の花01メラク04sam

プロフィール

魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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