スケッチ・オブ・ゴンパ -第4次ブータン調査(7)

8月31日(月)。ブータン調査4日目。ブータンに来て連日トレッキングがあり、何より道中の車酔いが私を苦しめた。この日は崖寺と麓を往来するトレッキングはなかった。午前はガイドに紹介された僧侶にインタビュー、午後からはブンタンにある有名寺院をみてまわった。
ブンタン山上のカルチュ寺
朝食後、私たちの宿泊しているミーファム・ゲストハウスの少し山手に寺院があり、その寺の僧侶にインタビューすることになっていたので、事前の境内見学をすることになった。寺の名前はカルチュ・ドラツァンという。カルは「~~の近く・、チュは「滝」を意味する。寺名は「滝の近くの僧院」ということである。仏教を学ぶ学校を兼ねたニンマ派の大僧院である。ドゥク派を国教とするブータンでは、ドゥク派の僧院には政府から資金援助があるのだが、他の宗派にはないという。ニンマ派も例外ではない。この僧院はミーファム・ゲストハウスなどの施設を管理・運営し、そのシノギと寄進により僧院と学校を経営している。


境内は本堂ラカンを中心に3方を諸堂宇で囲み、開けた一方からブンタンの市街地を見下ろせる。境内の離れには3階建て煉瓦造の建物があり、ここは生徒が寝泊りする宿舎である。境内入口付近には数棟建物があり、その一つは厨房がある。瞑想場はあると聞いたが、崖や洞穴を利用しているわけではない。小さな建物の中で瞑想しているのだという。開学当初、わずかしかいなかった生徒が、今では400人を超え、仏教を学ぶため国外からも入学者が来るそうである。寄進で賄われているため学費もいらない。厨房の外で学生が野菜の皮を剥いていた(先生が苦手とするキウリの特大バージョン!)。厨房の内部をみせていただくと、流し台や調理器具が並ぶ中、気になるものが目に入った。エコストーブである。普通のストーブ(カマド)で調理すると、生徒が多いためとんでもない薪が必要になる。そこで、エコストーブを取り入れ、燃料を節約しているのだが、このエコ・プロジェクトに対して国や国外(アメリカ?)などから補助金がでているらしい(その看板があった)。
境内に入ると、プージャ(祈りの儀式)の声が耳に入った。音をたどって、本堂に行きついた。鐘や太鼓の音の漏れる内部へと足を踏み入れる。先生を含めた数名でプージャを見学。隣接して部屋がもう一つあり、そこからはまた別の音楽が聞こえる。入口が黒い幕で覆われていて、入室を禁じられた。密教のプージャなのだと伺った。本堂を後にし、境内から出ようとしたとき、境内入口付近の一室に生徒の姿が見えた。中を覗くと、数人の生徒が経典を丸めていた。丸めた経典はツァーツァの中に入れるそうだ。

