渡名喜(Ⅱ)
掘り下げ屋敷の民宿
沖縄県島尻郡渡名喜村は那覇市の北西60km足らずのところに浮かぶ2つの島からなる。一つは渡名喜島、いまひとつは入砂島で、後者は無人島である。村の面積は3.74km²で、富山県舟橋村についで面積が小さい。いわばブービー面積の自治体である。
11月末の摩尼寺紅葉コンサートを終えたころから、渡名喜行の準備をはじめた。何度か村役場に電話し情報を得るに、年末年始は荒波によってフェリーがしばしば欠航するようで、旅程を定めがたかった。渡名喜島に渡れるか否かは一種のギャンブルのようなものだったのである。とりあえずは那覇まで行く。あとはお天気任せだ。幸い気候は穏やかだった。本州西部で4~5月の気候と思っていただけばよいかもしれない。渡航日の波高は2m。これぐらいならしれている。隠岐のフェリーは長時間だし、神戸港~関空のフェリーは短時間ながら波は高く船はおおいに揺れた。
フェリー琉球のなかで、わたしは波の震動をほぼ感じることなく、船内で読書し、まもなく眠りに落ちた。
後に同じ宿に泊まることになる京都の女性2名はこの波に苦しんだらしい。一人は酔ったといい、もう一人は酔い止めが効いてなんとか凌げた、と吐露した。かりにケントが乗船していたらどうなっていただろうか。
25日の昼過ぎ、那覇の泊港を出航したフェリー琉球は渡名喜港に着岸した。島の周囲は遠浅の珊瑚礁に囲まれており、渡名喜港は人工的に掘削してできたものである。以前は、珊瑚礁の外側に大型船を泊め、そこから小舟に乗り換えるか、干潮時に歩いて陸に上がったという。
港に着くと、民宿ふくぎのスタッフが出迎えてくれた。宿のヴァンには「沖縄米軍基地所在 市町村特別活性化事業」と書いてある(↑)。渡名喜島に米軍関係の施設があるようには思えなかったが、入砂島一帯は米軍の射撃練習場とされ、一般人の立ち入りは禁止されている。NHKの「ちゅらさん」はオープニング背景に、この入砂島を使った。
↑フクギの屋敷林