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【講演記録】倉吉の町家と町並み(7)

6.はるかなまち、その未来 【続】

 (2)小路の保全的再開発
 昭和30年代後半を描く「谷口ジローの風景」、森永キャラメルとか明治キャラメルなど看板に代表される「昭和レトロ」、さらにはアーケード商店街と不可分に係わる「看板建築」などの要素を集めた分布図が図40です。こうした昭和の遺産を使って街に活力を与えるにはどうしたらいいか。ということでA案・B案のプランを学生が考えました。一つはさきほど紹介した竹内君のアーケード圧縮復元=昭和レトロブロック構想(A案)です。一方、吉川さんは小路に着目しました。本町通りに直交する小路を保全的に再活性化しようと彼女は提案しています。彼女の場合は大蓮寺小路から会所小路に至る部分を「であい小路」と命名しています。その横丁に八百屋、魚屋、豆腐屋、駄菓子屋、居酒屋、雑貨屋などを集めて生活感あふれる賑わいの場所をつくるのです(図41)。東京のハーモニカ横丁など各地の小路=横丁の状況を調べた上での提案です。
 横丁とか小路とかいう空間に対して、いま世界的にどんな動きがあるかというと、ちょっと紹介しておきましょう。上海はアジアを代表する租界都市でした。フランス租界、ドイツ租界、日本租界があった。ここは外国人の住むところでして、里弄(リーロン)と呼ばれる小路がいっぱい残っています。、里弄は小路そのものも指しますが、小路を軸に構成される裏長屋ブロックのことでもあります。そういう歴史的な生活街区を国家的なプロジェクトとして保全的に再開発している。図42・43は「新天地」という里弄です。路地の美装に加えて、石庫門住宅をみごとに修景改装しています。整備前には路面は汚かったし、建物も傷んでいました。整備後は路面を舗装しなおし、建物も外観を維持しつつリニューアルされ、ブティックや土産物店が軒を連ねています。大変おしゃれな場所になっていて、外国人やら中国の上層階級らしき人たちで賑わっています。一部では古い建物を撤去して広場をつくり、スターバックスとかフランス料理店、タイ料理店などを集中させています。小路の景観を確保しながら、そういうブロックに再開発しているわけです。大したにぎわいです。
 上海では、「田字坊」という街区でも、大規模な投資によって小路の保全的再開発をしています(図44・45・46)。そもそも「田字坊」の「田」という漢字が示唆的なんですね。田という漢字の外側の「くにがまえ」は大通りなのでしょう。真ん中の「十」という文字が小路をあらわしています。その小路には、中国だけではなくて日本、台湾などの資本家が投資していろんなお店を経営している。イタリア料理、ベトナム料理、日本のお寿司屋さんなど、なんでもあります。そこに多くの外国人が押しかけてきている。こういう里弄の保全的再開発が大成功をおさめている例です。


2013倉吉の町家と町並み02配布資料_03


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プロフィール

魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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