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遊牧の彼岸-アムド高原の青い海(Ⅴ)

0919青海湖10ロンダ01 ロンダとタルチョ 


ロンダの祈り

 甲乙寺から南山方面の山道を走る。10分程度で青海湖が見渡せる高所までたどり着いた。青海湖はひろすぎて全景を一望とまではいかないが、俯瞰的に地理をとらえることができる。単純な自然の風景も十分素晴らしい。しかし、車窓に映る遊牧の風景にまた魅せられた。
 さらに車を走らせ、峠に向かう。峠では多くの車が駐車していた。ながぁいタルチョが空中に重なりあって舞い上がり、いったい何があるのかと胸騒ぎした。そのときガイドのチーさんが「活仏が来ている」と言った。活仏(生き仏)はちょうど車に乗り込むところで、わたしたちが下車するのと入れ違いで車は走り去っていった。
 活仏は消えたが、赤い袈裟を身に纏う僧侶はまだ何人も峠に残っていた。すでに述べたように、峠は聖なる「境界」であり、僧院が造営される訳ではないが、タルチョなどで華やかに彩られ、プージャ(祈りの儀式)がおこなわれる。


151019 青海 峠の尾根に沿うタルチョ  151019 青海 峠の僧侶


 わたしたちは尾根まで上り、青海湖を見下しろた。やはり絶景である。運転手のリーさん、ガイドのチーさんも私たちのあとに続く。リーさんは赤い箱を手にもっている。箱から紙束のようなものを取り出し、私たちに手渡した。手のひらにも満たない、正方形状の小さなマンダラがプリントされた紙である。これをロンダという(いちばん上の写真)。そういえば、歌姫の峠でも、タルチョのまわりに同じものが散乱していたことを思い出す。 リーさんも、チーさんも、ロンダを風に向かって放り投げた。否、天に向かって、投げ、そして、叫ぶ。

   アッチェラ~、 アッチェラー!

 アッチェラーは「順調に」という願いの詞である。中国風に表現するならば「万事如意」か。峠という、この世とあの世の境界で、天に祈りをささげるのだ。じつは、峠に来る前、車代の延長料金をめぐって、ガイド側と旅客側に不穏な空気が流れて始めていた。あれだけの旅費を支払って、まだ追加料金を要求するのか。そういう不満を日本側は露わにしていたのだ。そうした軋轢をふり祓うためにも、ロンダの祈りが必要になっていたのかもしれない。


151019 青海 アッチェラー アッチェラ~


ヤクと羊の遊牧民

 峠からの下りでは、何ヶ所停車して、遊牧の風景を撮影した。ブータンでは牛との混血種ばかりで、純血のヤクは一頭しか拝めなかった。ところが、青海省にはヤクがごろごろいる。青海湖民俗博物館では野生のヤクの剥製が展示してあった。放牧されたヤクは野生種かそれに近いものであろう。黒いヤクだけではない。白や銀のヤクもいる。羊はその何倍いるだろうか。
 ヤクはどう猛な動物ではない。至近距離から撮影できる。糞もいっぱい落ちているが、それはしばらくすれば燃料に変わる。うまいこと循環ができている。


0919青海湖11ヤク03 0919青海湖11ヤク04
↑ヤクと羊の群れ  ↓チベット族遊牧民テントの内部
151019 青海 遊牧民のテント訪問 151019 青海 峠 遊牧民テント



0919青海湖12テント01 0919青海湖12テント02夫婦01


 夢中になって写真を撮っていると、一人の男性が話しかけてきた。テントの主であり、家に招かれた。さっそく奥さんがバター茶でもてなしてくださる。二人は38歳。とても満足気な顔をしている。二人で羊170頭、ヤク30頭を養っているという。その仕事に生き甲斐を感じているのだろう。テントの中には大きなストーブがある。ストーブのおかげでとても暖かいのだが、さすがに冬になると寒さに耐えられなくなるという。別の場所に「冬の家」がある。それをみることはできなかったが、おそらく半農半牧民の住まいに近いものだろう。否、遊牧民の「冬の家」が通年居住の住まいになって、遊牧民は半農半牧民に変わるのだ。


151019 青海 遊牧民テント 記念写真 0919青海湖20羊の放牧02


菜の花畑をつきぬけて

 湖岸に下りて、蜂蜜売りのテントを訪ねた。4種類ばかり試食したが、菜種油と蜂蜜を混合したものがいちばん美味しく感じたので買うことにした。「ブータン食フェスティバル」でケプタン(蕎麦粉のパンケーキ)にぬって食べようと思う。
 夕食は宿泊しているホテルではなく、いちばん近くにあってガイドさんたちが泊まっているホテルでとることになった。不味かった。ろくに食べないまま外にでた。湖に向かって散歩しよう。いい腹ごなしになるし、湖岸まで行ってみたいのは当たり前のことである。
湖岸道路と岸辺のあいだには菜の花畑と綿花畑がひろがっていた。栽培植物としての意味はあまりなく、湖岸の風景を美化するための配慮なのだと聞いた。その畑には管理人がいる。畑をつきぬけて湖岸にいたるには畑の入場料が必要だとチーさんは言う。だから、「入るな」ということだ。入場料を聞くと「10元(200円)」だと管理人は答えた。わたしと先生はその代金を払って畑に入っていった。ガイドのチーさんは、柵の外に残り、柵の内側の管理人と雑談をしている。そこまでして、ツアー予定外の動きと係わろうとしないのである。


0919青海湖02菜の花01 0919青海湖13湖岸03sam綿 


 夕暮れの風は冷たかったが、湖をめざして歩くのは気持ちよかった。一面にひろがる菜の花と綿花のむこうに湖岸がある。菜の花畑が終わるあたりで段丘があり、そこを下ってさらに歩いた。岸辺から見る湖は、これまでみた景色とはやはり違った。塩水湖というので、すこし味見してみると、ほんのおり塩味がした。畔にはキャンピングカーが停まっていた。車なしで湖岸まで歩いてくる中国人もいる。柵の内側に入ってこないのは、我がガイドだけではないか。

 菜の花畑に入って写真を取り合っているカップルがいて、「どこから来たの?」と声をかけてみた。カップルは「雲南だよ」と答える。中国は豊かになっている。豊かになりつつある中国とその先にいる日本の友好はけっして夢ではない、と思った。王朝さえ崩壊すれば、の話だが・・・ 【0919完/ケント】


0919青海湖13湖岸01 0919青海湖13湖岸02sam
↑夕暮れの湖畔 ↓雲南から
0919青海湖13湖岸04雲南 0919青海湖20羊の放牧01

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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