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考古学の民族誌

みんぱくプレゼンテーション1_01


複製の時代-地霊のオーラ

 2月13日(土)・14日とみんぱくの共同研究会「考古学の民族誌」にゲスト・スピーカとして参加してきました。共同研究の概要については、以下のサイトを参照してください。
   http://www.minpaku.ac.jp/research/activity/project/iurp/15jr176

 共同研究の代表者、ジョン・アートルさんは金沢大学の准教授で、観光人類学専攻。おどろいたことに、御所野遺跡に足繁く通われていて、土屋根の住居に興味をもち、私の話を聞きたかったんだそうです。わたしは13日のトップバッターとして「遺跡整備とオーセンティシティ-建築考古学の立場から-」という講演をしてきました。内容は1月17日の「遺跡整備と建築考古学」の圧縮版です。共同研究のテーマは「表象」なんだそうですが、ウィキペディアなど閲覧しても、なんのことやらよく理解できません。とりあえず大極殿の復元資金を確保した右翼的大物政治家は全史協でも顧問を務めているので、文化財とナショナリズムの関係を肌で感じていた、などと述べるとそれなりの反応があったようです。


みんぱくプレゼンテーション1_02 複製


 いろんな分野の研究者が発表された。まず気になったのは、奈文研が取り組むアンコール遺跡群の修復である。現地のシンポジウムで批判が相次ぎ窮地に陥った模様だが、それがなぜだかおわかりでないようでした。日本は重要文化財建造物の90%が純木造の国であり、木造建築の解体修理については長い伝統があって、優れた実績を残している。日本はアンコールに出向いてなおその手法を堅持し、石造のモニュメントを木造の解体修理の方法で修復しようとする。その目的は「モニュメントの健全化」である。建造物が傾いたり、崩れたり、危険な状態にあるので、それを健全な姿に戻すため解体修理するということ。つまり、傾いた壁は垂直に戻し、壊れた門は当初の姿に復元する。こんなことやるから批判の嵐となる、ということにまず気づかないとね。
 たとえば文建協とか文化庁の専門家に修復のアドバイスを受けたとします。日本のプロパーは、解体修理→(復原)→健全化の手続きを教えるでしょうが、その日本のやり方が石造文化圏では通用しない。現状維持を重んじるオーセンティシティの理念に相反するわけです。ヨーロッパでは、傾いたものは傾いたまま、崩れたものは崩れたままで維持展示し、解体修理をしない。その方法を何百年もかけて培ってきたわけで、日本人研究者はまずその手法を学んでから整備を検討しないと。石造の論理で木造を修復するのが無茶なように、逆もまた然り、ということである。


みんぱくプレゼンテーション1_03 本物


みんぱくプレゼンテーション1_04 複製


 もう一人印象に残る発表者がいた。「博物館と複製メディア」。日本最初の弥生土器を所蔵する博物館が完璧な複製レプリカを制作した。それを左右に並べて見比べても識別できない。そういう複製の時代に我々は生きていて、すでにオリジナルに接する必要がなくなっている、というような内容であったと記憶する。思い出すのは稲垣栄三先生の発言である。本物と複製の違いは、前者からは(たとえば胎土から)歴史的なデータをくみ取りうるが、複製からはなにも得られない。発表後、美学美術史を専攻する聡明な女性研究者に「貴方のようなプロでも土器と複製を左右に並べて見分けられませんか」と問うと、じつは左右並べて実物をみたことがないと答えられたのには少々驚いたが、インテリジェンス溢れる発表に刺激をうけた。ちなみに、遺構の場合、本物とレプリカがうり二つで識別できない、というほどの精巧な複製に接したことはない。造酒司の井戸なんて偽物だということが「だだわかり」で、残念なことに、訪問者は2枚ほど写真を撮るとレプリカに見向きもせず、次のポイントに移動していく。

 本物の遺構は「地霊のオーラ」を発している。ここ何回かの研究会でわたしは「地霊のオーラ」という用語を頻発してきたが、オーセンティックに整備された遺跡にはそれがある。「地霊のオーラ」をひしひしと感じとることができる。そうでない整備ではなにも感じない。遺構が露出している発掘庭園やスカラブレーのような遺跡だけでなく、露出度の少ない御所野のような遺跡でもわたしは「地霊のオーラ」を感じ取れる。こうしたオーラに敏感な触覚をもつ者ともたざる者で、遺跡の価値は大きく変わるであろう。そうしたことを、またしても考えるよい機会になった。


みんぱくプレゼンテーション1_05 復元

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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