気楽極楽長崎さらく(1)


グラバー園
やってきました、日本のマカオ。長崎に居ります。
昨日の午後3時に着いて、とり急ぎ南坂のグラバー園へ。旧グラバー邸の敷地にいくつかの洋館を移設してグラバー園を開設したのが1975年。子どものころ、父母に連れられグラバー邸を訪ねたことがあるのですが、そのときはまだグラバー園は開園していなかった。かすかな記憶のなかにある旧グラバー邸の印象は「小さな建物」です。
グラバー園はとてもとても素晴らしい大公園です。湾岸の高地を上り下りするためエレベータやスロープなどヴァリアフリーの配慮が行き届いているし、なにより植栽=造園が素晴らしいし、眺望景観も見事です。特別名勝に指定してあげてもいいんじゃないか、と思いました。

疲れていたので、いきなり洋館カフェへ。日本最初のレストラン「自由亭」です(↑↑)。そこでいただいた長崎堂のカステラが絶品でした。龍馬伝で亀山社中(海援隊)の猛者どもが汗まみれになってカステーラ創作に没頭するシーンがありましたが、あれがかくも美味なるお菓子の起源だったのでしょうか・・・どうやらちがうようですね。ホテルの近くに店を構える思案橋の「ふくさ屋」は創業390年の老舗というから、桃山時代にカステーラは持ち込まれていたのでしょう。それを海援隊が学んで全国で売ったんだろうか??
退園後、長崎堂に直行し、佐治ばあちゃんに宅配で送りました。会長にはふくさ屋の一品を買いましたが、賞味期限内に手渡せるかどうか。期限がくれば、我が家で食べちゃいますので。
自由亭は流行っています。内装など仁風閣とさほど変わりませんよ。天皇のご在所だからと気取っていないで、自由亭のような美味しい紅茶とお菓子を出すカフェテリアを1室設ければよいのにね。人はみな休みたい。お茶するために生きているんだから。良い空間に良い食材があれば人は集います。


旧グラバー邸はグラバー園のど真ん中にある(↑)。日本最古の擬洋風建築ですが、最古であるが故の質素さをまとっています。龍馬伝に映る華やかさとはやや遠い実態に接することができました。重要文化財です。妥当な評価だと思います。昨年、世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」23資産のうちの一つでもありますが、旧グラバー邸の評価は重要文化財で妥当と思われます。その一方で、グラバー園の風致は重要文化財(≒名勝)のレベルを超えている。冗談じゃなく、特別名勝に値するとわたしは思いました。

↑↓旧裁判所では着せ替えできます

旅行者は多いがカップルは少ない。海外旅行と同じで、女子だけのグループばかり目立ちます。

大浦天主堂はグラバー園の隣にあります。日本最古の木造ゴシック教会堂。1953年指定の国宝です。赤坂離宮以前の近代建築では唯一の国宝ですが、維新前の建築であるが故に「近代建築」の範疇に組み入れられず、日本最初の国宝建築を赤坂離宮に譲ったのでしょう。天主堂は、2007年に世界遺産の暫定リスト入りしていた「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の目玉です。本来、昨年ユネスコに申請するのはこちらの方だったと聞いていますが、阿部内閣肝いりで、「明治日本の産業革命遺産」と申請順を差し替えられた。2015年は長州が神聖化された年でした。門前の角煮饅頭店で聞いたところによると、天主堂の世界遺産申請は2年後だとか。
なぜグラバー邸と大浦天主堂が一体として申請されないのか。上に記した二つのシリアル・ノミネーションの枠組でしかとらえられなかったのでしょうか。もっと違う組み合わせがあるんじゃないかな。マカオは「マカオ」で世界遺産になっている。長崎だってそれができたような気がしないではありません。そもそもグラバー邸は産業遺産じゃない。
炉端焼の女将に訊ねたところ、「もう、なんでもかんでも世界遺産やねぇ、ええ加減にしてほしい」とのことでありました。ビートたけしやの大竹誠の感覚は変人のものではなく、世論を映し出していることを確かめられました。

長崎はいいところですね。日本の風土のなかに中国と西洋が溶け込んでいる。中国や西洋が好きでない人でも長崎はお気に入りの町になる。神戸や横浜のようにハイカラすぎないところがよいね。北野異人館の町並みなんて性にあわんもん。少なくとも私の居場所じゃない。広州あたりの租界都市を思わせる猥雑さがちりばめられていて、長崎の都市性をおおいに高めているんじゃないでしょうか。博多は別格として、熊本や大分以上の都会だね。
というわけで、2年ぶりに「九州の文化的景観」シリーズが復活しました。福岡、佐賀、大分、熊本、宮崎と続いて中断(渡名喜に行ってました)、長崎で復活です。そうそう、先日『堺でございます』で長谷川きよしがカバーした「長崎は今日も雨だった」がまた絶品でした。長崎は今日も明日も晴れなんですが・・・爽やかな青空がひろがっています。
