大雲院と鳥取東照宮(ⅩⅦ)

仏教美術品の多重撮影と外陣柱年輪撮影
5月11日(水)。ゼミのメンバー全員が立川町並みの正面を撮影したわけではない。一部のゼミ生はPhotoScanによる3Dモデル作成のための大雲院所蔵美術品の多重撮影に取り組んだ。休憩を挟んで、町並み調査班が3人×3班から2人×4班に組織変更されたため、3年の1名が大雲院に残り、外陣柱年輪の撮影をした。
去る4月5日、3名が大雲院を訪問し、研究申請のための準備として、未調査の美術品・調度品をポラロイドで撮影し、基礎的な情報を整理した。それらの多くは池田光仲による東照宮勧請期(1650年前後)に遡るものである。今回はPhotoScanによる初めてのCG制作の第一歩として、小型の調度品・仏具を多重撮影した。今回撮影した美術品は「香炉」「角香炉」「柄香炉」「鶴亀の燭台」「磬(けい)と磬架」の5点であり、いずれも本堂の阿弥陀三尊正面で使用されている調度・仏具である。いずれの品にも徳川家三葉葵御紋が施されており、大雲院所蔵美術品と徳川家との係わりの深さを感じさせる。
PhotoScanはさまざまな角度から撮影した写真データを重ねあわせることで自動的に3Dモデルを作成するソフトである。より精巧なモデルを作成するためには多くの角度、距離からの写真撮影が必要になるのだが、自分はどうもピントを合わせるのが下手で、せっかく良いカメラを使わせていただいたにもかかわらず、近距離撮影で骨を折った。今後もできるだけ多くの美術品の3Dモデルを作成し、大雲院仏教美術品データベースの充実に役立てていきたい。
撮影した美術品
①香炉: オーソドックスな形状をした金色の香炉。左右対称で、凹凸少なく、撮影しやすかった。

②角香炉: 蓋に龍の装飾の付いた角香炉。細やかな龍の部分は今後の追加撮影を検討したいところである。また、この手の口の空いた龍の装飾には珠をはめることが多いのだが、本品には付いていない。


③香入: 蓋の部分に大きく三葉葵紋をあしらう。シンプルなデザインで撮影しやすかった。

④鶴亀の燭台: 亀の上に鶴が乗り、鶴が蓮の花を銜える。縦長の造形で全景を収めるにはやや離れて撮影する必要があり、細部を表現するために全景とは別に細部ごとに撮影していった。


⑤磬と磬架: 磬(けい)は仏教とともに日本に伝わった法具で中央の板を打ち鳴らして使用する。教授によれば、殷代青銅器にこの種の儀器はすでにあるだろうとのこと。磬架は彩色、金具が見事で、多数の三葉葵御紋をあしらう。彩色はくすんだ紅、緑、群青に特徴があり、東照大権現厨子に通じる。


外陣角柱の年輪撮影
昨年度、大雲院本堂内陣柱(南側の中央柱)の年輪サンプルをウィグルマッチ法放射性炭素年代測定し、以下の結果を得た。
大雲院 内陣入側柱
最外年輪年代(辺材部)・スギ
1670-1686 cal AD (95.4%)
この年代測定結果の建築史的意味については既報をご参照いただきたいが、旧阿弥陀堂の姿を残す4間四方の内陣は四天柱がケヤキの丸柱、本堂入側筋にあたる外側はスギの面取角柱である。サンプルを採取した柱は面皮材のようにみえる。面取部分の上下を観察すると、必ずしも表皮直下の「面皮」を残しているとは言えないようである。しかし、年輪を観察すると、心材の外側に辺材を肉視で確認できる。辺材と心材の色彩・色調の違いは写真でもはっきりしている。
今年度は、まだ研究費が確定していないが、旧観音堂にあたる外陣の角柱から年輪サンプルを採取し、放射性炭素年代測定する予定である。そこで、外陣角柱の表面をすべて撮影し、辺材を残す部材を精査するところから出発した。ところが、内陣柱とちがって、外陣柱には正面からみえる3面に張り板してあるものが多く、背面や高い位置での撮影が多くなり手間取った。現状では、心材と辺材の境目なのか、変色しているだけなのかを判断しがたいものが多かったが、今後精度を深めていきたい。
撮影方法としては、町並み撮影と同様にラベルに撮影場所、柱の位置(北から3番目ならN03)、日付など情報を書きこんで撮影した後に、遠景→近景の順で撮影した。下に比較的わかりやすかった例をあげておく。(キム3号)
大雲院本堂 外陣柱 W06 160511

昨年度、大雲院本堂内陣柱(南側の中央柱)の年輪サンプルをウィグルマッチ法放射性炭素年代測定し、以下の結果を得た。
大雲院 内陣入側柱
最外年輪年代(辺材部)・スギ
1670-1686 cal AD (95.4%)
この年代測定結果の建築史的意味については既報をご参照いただきたいが、旧阿弥陀堂の姿を残す4間四方の内陣は四天柱がケヤキの丸柱、本堂入側筋にあたる外側はスギの面取角柱である。サンプルを採取した柱は面皮材のようにみえる。面取部分の上下を観察すると、必ずしも表皮直下の「面皮」を残しているとは言えないようである。しかし、年輪を観察すると、心材の外側に辺材を肉視で確認できる。辺材と心材の色彩・色調の違いは写真でもはっきりしている。
今年度は、まだ研究費が確定していないが、旧観音堂にあたる外陣の角柱から年輪サンプルを採取し、放射性炭素年代測定する予定である。そこで、外陣角柱の表面をすべて撮影し、辺材を残す部材を精査するところから出発した。ところが、内陣柱とちがって、外陣柱には正面からみえる3面に張り板してあるものが多く、背面や高い位置での撮影が多くなり手間取った。現状では、心材と辺材の境目なのか、変色しているだけなのかを判断しがたいものが多かったが、今後精度を深めていきたい。
撮影方法としては、町並み撮影と同様にラベルに撮影場所、柱の位置(北から3番目ならN03)、日付など情報を書きこんで撮影した後に、遠景→近景の順で撮影した。下に比較的わかりやすかった例をあげておく。(キム3号)
大雲院本堂 外陣柱 W06 160511


