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大雲院と鳥取東照宮 (X Ⅸ)

大雲院美術品作業風景20160518


 5月18日(水)。PhotoScanによる3次元モデル制作のため、大雲院調度品・法具・什器等の多重撮影を先週に引き続いておこないました。今回撮影したのは「経机」「密壇脇机」「東館家紋入り椀」「西館家紋入り椀」「菓子器」「金属製の献茶碗」「木製の献茶碗」の7点です。


大雲院美術品①20160518


経机と密壇脇机

 経机(↑)と密壇脇机(↓)の撮影からスタートしました。いずれも現在なお使用されている仏具であり、大雲院造営期の1650年頃にご神体とともに江戸から授かったと伝えられています。2点とも薄い黒漆をベースとし、経机は格狭間(こうざま)にくすんだ青・緑・赤の彩色を施しています。東照大権現厨子や磬架と通じる彩色と言えるでしょう。とくに金具の芸術性が高いと感じました。金具には徳川家の三葉葵御紋が細かに彫られており、すべての御紋の大きさや形に若干の違いが認められます。


大雲院仏教美術品②20160518


二つの献茶碗

 金属製と木製の二種類の献茶碗です。本尊に献茶します。どちらの椀にも三葉葵御紋が彫られており、金属製の献茶碗全体には御紋のほかに細かな模様をあしらっています。木製は梨地漆の風合いが独特です。撮影にあたっては、細かな模様を再現できるよう気をつかいました。


大雲院美術品③20160518
献茶碗(↑金属製 ↓木製)
大雲院美術品④20160518



大雲院美術品⑦20160518 菓子器(池田家家紋)


池田家の椀と菓子器

 最後に撮影したのは、東館、西館、そして池田家の家紋が入った椀と菓子器です。こちらは仏具ではなく、大雲院が霊光院であった当初、池田家の分家、本家が霊光院を訪問する際に使用された接客の器でした。三品とも黒漆が綺麗に塗られており、その鮮やかさは現在になっても衰えた様子はありません。池田家の家紋といえば揚羽蝶蝶ですが、分家の東館家、西館家も同じ揚羽蝶の家紋を用いていました。注目していただきたいのは蝶を囲む家紋の輪郭です。輪郭が正円だと池田本家、花弁のように区切られているのが東館家、ギザギザ状になっているのが西館家の家紋です。つまり、池田家が大雲院を訪れた際には池田家の家紋が入った器を、東館家・西館家が訪れた際にはそれぞれの家紋入り器でもてなしたということです。こうしたもてなしが、当時の大名を敬う最高の接客であると考えられていました。そうした接客のできる大雲院の格式を高さを改めて実感できます。


大雲院美術品⑤20160518
↑椀(東館家紋) ↓椀(西館家紋)
大雲院美術品⑥20160518

【用語解説】 梨地漆
梨地とは「梨の皮のようなテクスチャア」を意味します。漆の風合いが「梨の実の地肌に似ている」ことからこう呼ばれるようになったようです。木製の金茶碗の漆塗装が「梨地漆」です。他の黒漆とはまったく風情が違いますね。
 http://nozomi.voxx.jp/column/archive_102.htm

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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