ツェゴ-命の着物(2)


デチェンは、はたおりがいやになっているのですが、
そのいっぽうで、赤んぼうのジャムヤンを
おかあさんといっしょにあやすのがすきなんです。
デチェンは、ジャムヤンぼうやが
おかあさんのひざからとびあがろうとするのを、
身をのりだしてみつめています。
さあとぶよ、ジャンプ、ジャンプ、ジャンプ、
そらとぶよ、ジャンプ、
あわだてきの中であわ立つバター茶のように。
くうくうないて、ぺちゃくちゃおしゃべり、
村ぜんたいでも、こんなにたのしげな赤んぼうはいません。
赤んぼうのドルジはやかましく、
赤んぼうのペマは泣きじゃくり、
赤んぼうのタンはわらうまえにねむってしまいます。


「ジャムヤンぼうやをいちどだけだかせてくれませんか?」
デチェンはたのみます。
「あなたのうでは、それだけでジャムヤンを
ささえられるほどまだ強くないのよ。
わたしが赤んぼうをだいているあいだ、
あなたはこの子をなでたり、キスしたりすればいいの。」
アウムワンモは言います。


デチェンはジャムヤンぼうやをやさしくなでてキスします。
「アイエモー、もっと大きくなってうでがつよかったらなあ」
とデチェンは思うのです。 【牧野】


アウム・ワンモは、ジャムヤンぼうやの
あつかいにものすごく気をつかっています。
ぼうやのことがそれだけたいせつなのです。
ジャムヤンぼうやのまえにうまれた
3人の赤んぼうはみなこの世にいません。
1才にさえならないうちに、
3人とも亡くなってしまったのです。
「わたしはこの子のことがとても心配なの。
どうやってそだてればいいのでしょうか?」
アウム・ワンモは声にだしておもいなやみます。


「その子のためにツェゴ、命の着物をつくるのよ!」
村の女たちは言います。
「命の着物?」アウム・ワンモーはたずねます。
「そう、そう、ツェゴ、命の着物よ。」
おばあさんはおかあさんのためにツェゴをつくり、
おかあさんはわたしたちのためにツェゴをつくり、
わたしたちはじぶんの子どもたちのためにツェゴをつくるのです。
「村をまわって、ちいさな命をもらうのよ、ソヤラ」
村の女たちはうたいます。


アウム・ワンモが家々をたずね、
「あなたの命でわたしの子どもにおめぐみをください」
とその母はたのみます。
人びとはふるぎの切れはしをあたえ、
ジャムヤンぼうやの長寿(ちょうじゅ)をいのります。
アウム・ワンモは布の切れはしをあつめます。
それはデチェンのおかあさんがおった布とよくにています。
赤、だいだい、きいろ、みどり、そして、むらさきまじりの青と
あい色のまだらもようでできた虹の色です。
小さなしまもようもあれば、大きな帯のもようもあります。
さらに、花とちょうちょのパターンもあります。 【田仲】
*この民話絵本の翻訳は以下のサイトに連載されてます。
命の着物-初級英語で読むブータンの民話
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1220.html
ツェゴ-命の着物(1)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1232.html
ツェゴ-命の着物(2)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1250.html
ツェゴ-命の着物(3)
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ツェゴ-命の着物(4)
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ツェゴ-命の着物(5)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1263.html