めだかづく日々(3)

週末の夜、夕食後一時間ばかり下宿で仮眠をとり、午後8時半ころからジムに行く。もちろんシュガーナックル・ボクシングジムである。昨年11月に患った椎間板ヘルニアのせいで、5ヶ月に及ぶジム中断があり、その間、腹部はどんどん膨らんで、大変なことになっていたのだが、ようやく週2~3回のペースでジムに通えるようになってきた。
ジムを終えて午後10時、風呂に浸かって着替え、下宿から奈良の自宅に向かう。体は軽い。眠気などまるで感じることなく深夜の高速を突っ走る。体調が良いと、休憩をとりたいという欲望が湧いてこない。それでも、一度は休んで厠などしたり、給油したり、ということで、加西パークに立ち寄ったところ、メダカを売っている。黒メダカは少なく、色つきのもの、改良品種が多い。ここでは欲望を抑えることができず、1箱1,000円のセットを買ってしまった。白・黒・紅などいろんなメダカを数尾納めたセットである。

帰宅するや否や「メダカ買ったよ」というとヤな顔をされ、しばらくして「また産まれているよ」との報告をうけた。あたりは真っ暗だが、加西で仕入れたメダカはただちに軒下の大きな睡蓮鉢に移す。翌朝、木陰の小さな睡蓮鉢を凝視すると、たしかに小さな糸状の生物が動いている。さっそく柄杓ですくいあげ、軒下の睡蓮鉢に設けた養魚槽へ。それから2日ばかりしてまた糸状の物体を木陰の睡蓮鉢で確認した。再び養魚槽へ。
かくして、養魚槽には現在、9尾の稚魚が隔離されている。緋メダカの稚魚である。嬉しくてしかたない。数も増やしたいし、成長した姿を早くみたい。

こうした喜びをかみ締めている別の人物とであった。シュープリーズのマダムである。「ねぇ、みてみて」と言われて、小さな小さな金魚鉢を覗く。それがよく見えない。我が家の養魚槽の稚魚のほうが活き活きしている。シュープリーズには別の金魚鉢が二つあり、そこには黒メダカの父母がいた。母の腹はまるでわたしの腹のように膨れ上がっていた。4日に1回のペースで水替えするそうだ。
人にみせたくなるほどメダカの産卵が嬉しい。その気持ちがよくわかる。ただし、人のことはどうでもよいね。気になるのは我が家のメダカばかりなり。
