2016居住環境実習・演習Ⅱ中間報告会(その1)

6月8日(水)におこなわれた中間発表会の内容を3年生6名が一人ずつ報告します。
1.倉吉河原町五叉路周辺の町並み保全
1-1 地蔵盆を未来へ -昨年度までの研究成果
これまでASALABの先輩たちがとりくんできた倉吉の町並みに関する先行研究についてまず紹介しておく。2001年度以降、5冊の報告書を出している。近年では、2013~2015年に「倉吉の歴史まちづくり」というテーマで調査研究をおこない、『倉吉の歴史まちづくり』と『地蔵盆を未来へ』という2冊の報告書を刊行したばかりである。これら2つの報告書では「歴史的風致」という概念に着目し、「打吹鉢屋川」新規重伝建地区の構想などを提言している。

1998年、打吹玉川地区が国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、2010年には追加選定がなされた。ASALABはさらに2013年度より、鉢屋川(旧城下町外濠)を挟む市街地西端の河原町・鍛治町の町並みと地蔵盆の調査に着手した。
上の画像の吹き出しの中は八橋往来と鉢屋川が交差する「五叉路」の部分であり、町並みの核となる場所である。最も質の高い歴史的風致を残す所だが、過疎と高齢化が進み、地蔵盆の担い手である子どもたち(中学1年以下)は数名を数えるのみとなっている。


いま述べたように、河原町・鍛冶町の歴史的風致の中核は、八橋往来(表の街道)と4本の小路が集合する五叉路の界隈である。路傍には東地蔵が祭られ、その対面に鉢屋川の清流が流れ、鯉が泳ぐ。地蔵盆の舞台となる東地蔵は安永2年(1773)に造営され、以来、地蔵盆の祭礼が続いている。
下の連続立面図は今年3月に卒業された先輩方が作成したもので、赤の枠線の建物が今回の調査対象である。
国土交通省の「歴史まちづくり法」定義では町並み・建造物等の有形文化財と、祭礼等の無形文化財の複合した良好な環境を「歴史的風致(まちの風情)」としている
伝統的な町並みで地蔵盆をとりおこなう河原町には、まちの風情がよく現れているといえるだろう。

東地蔵の背面に建つ土蔵を取り壊して駐車場にする計画がもちあがった。2月10日、関係者が集まり、緊急の打ち合わせを行った。(このとき旧小倉家土蔵を谷口希美さんがスケッチし、報告書「地蔵盆を未来へ」の表紙に使用された)土蔵が取り壊され駐車場になれば、町並みは激変。地蔵盆も台無しになり「まちの風情」が失われるだろう。そこで旧小倉家住宅主屋と土蔵を国の登録文化財にし、なんらかの活用をめざすべきだと先生は判断された。4月27日、登録文化財申請の基礎資料とするための調査第1回を行い、土蔵とオモヤの内部を視察。次回より実測に着手の予定である。(だっしょ)
