2016居住環境実習・演習Ⅱ中間報告会(その4)

2-2 立川~樗谿の町並み調査
(1)町家建造物連続写真
立川から樗谿の町並みには以下のような特徴がある。
①大雲院(立川)から観音院(上町)を経て鳥取東照宮(樗谿)に至る山の手地区には、昭和18年の鳥取地震、昭和27年の鳥取大火を免れた町家・社寺等歴史的建造物が少なくない。
②鳥取東照宮は国指定重要文化財、観音院庭園は国指定名勝、樗谿グランドアパートは市指定文化財、吉村家住宅・岩田家住宅・立川稲荷神社は国登録有形文化財だが、大雲院は未指定。
③このほか伝統的町家等歴史的建造物が点在。
④建物本体は改変されているが、正面の植栽豊かな宅地が少なくない。とくに町中の路地や山際の旧道沿いに緑が多い。
⑤上町の一部の街路からは久松山(国史跡「鳥取城跡」天守)が視界に納まる。
⑥谷口ジローが『父の暦』(小学館・1997)で立川・樗谿の風景を描く。
いちばん上の図に町並みの拠点となる文化遺産を示している。について説明する。立川の大雲院が南端、重要文化財の鳥取東照宮が北端、上町の国指定名勝庭園「観音院」は中間辺りにある。

さらに市指定文化財と登録文化財もある(↑)。大雲院近くに登録文化財の吉村家住宅と立川稲荷神社、観音院近くに岩田家住宅がある。岩田家は中2階式の古風な町家で、江戸時代に遡る可能性もあるだろう。市指定文化財「樗谿グランドアパート」(昭和3年)は東照宮の参道にあり、周辺にも洋風の建物が軒を連ね、鳥取の「山の手」の風景を感じ取ることができる。上の三角形あたりから、鳥取城天守跡(久松山頂)を望むことができる。
下↓が調査範囲の全体図である。A~Rの17ブロックにわけている。ブロック内でそれぞれ通りを挟んで北をN、南をS、東をE、西をWとする。Aブロックを例にとって説明する。北側をAN、南側をASと記号化する。それぞれ北には11戸、南には16戸の家屋がある。撮影する建物の番号を決めて撮影する。番付の総数は532に及んだ。角地に建つ建物は2方向以上から撮影するので、重複数を引くと、調査対象は479だった。このすべての町家を1戸ずつ撮影した。


調査では、まずラベルを用意し、油性マジックで町名、ブロック名、建物番号、撮影日を書く。情報を書き込んだラベルを撮影して、カメラに基礎データを埋め込んでから、ラベルに対応した町家や空き地などの撮影に移行する。上図の上半の建物はいわゆる「近代和風住宅」で建物は通りに面していない。建物とともに、門・塀・植栽が景観の重要な要素となっている。下半は表通りの改造型町家である。格子はなくなって、アルミサッシ窓になっているが、2階の高さはかなり低いので、当初は幕末~明治に遡るかもしれない。下図の上半は路地裏の長屋である。やはり中2階が低いのでかなり古い建物だと思われる。下半は路地裏の専用住宅である。植栽が豊かで町並みによい影響を与えている。


すべての町家を撮影した後、編集ソフト「インデザイン」を使用して連続立面写真を作成する。現在、約50%の連続立面写真の作成が終わっている。連続写真が完成したら、とくに町並み景観の優れた場所を選んで、昨年の居住環境実習・演習(1)でおこなったように、連続立面図のスケッチと貼り合わせをおこなう予定である。
上の連続立面写真はAブロックである。大通りに面しており大きい町家が多い印象を受けた。スケッチをしたらいいと思うものをピックアップした。
下は路地の多いMブロッックの西側である。道が狭く町家が写真一枚に納まっていないので何枚も重ねて貼りあわせた。こちらもスケッチにしたらいいと思うところを拡大している。(みひろ)
