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紫陽花の咲く径

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燕返しに散る、クロアチア

 昨夜の3試合、つまり初日のトーナメントは退屈だった、という意見が少なくないようである。どの国も負けたくないから、攻めにいかない。攻撃的サッカーを標榜するポルトガルまでもが、まさかギリシア化するとはゆめゆめ思いませなんだ。
 クロアチア対ポルトガル戦のキックオフ前、WOWOWのインタビューに答えたハリルホジッチ監督は、クロアチアがチャンピオンシップを獲れるだけの実力を備えていると述べていた。ボスニア出身の人物にしてみれば、クロアチアはサッカー王国であった旧ユーゴスラビアの遺伝子をうけつぐ唯一の星だから高く評価しているのかもしれないが、わたしは自分と同じ意見を公言する初めての専門家の出現に嬉しくなった。


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 しかし、キックオフ前から嫌な予感もしていた。クロアチアはユーロにおいてホームのユニホームでは勝ったことがないのだという。そのクロアチアが赤と白の市松模様を身に纏っている。おまけに、ポルトガルは攻めない戦法をとってきた。最初からPK戦を予想させる試合展開であった。
 ポルトガルが奔放なサッカーを捨てギリシア化した理由は、おそらく二つあったと思われる。まずクロアチアが若手5人を使って(つまり1軍半で)スペインに逆転勝ちした実力を過大評価して畏れを抱いたこと。いまひとつは中2日の肉体疲労である。自陣に強固なブロックをつくって相手に攻めさせ、体力を温存しつつカウンターを狙うが、最悪PK合戦でも十分という「戦略」が露骨にあり、その結果、双方異常なほど相手を警戒する神経戦となった。フェルナンド・サントス監督は、どんぶり勘定で流れに任せる小父さん顔をしているが、戦後のインタビューでそういう「戦略が奏効した」とコメントしている。どこかでみた顔だと思って調べてみれば、2014ブラジルW杯で日本が戦ったギリシア代表の監督であることが分かった。日本をどん底に突き落としたドロ-ゲ-ムの立役者である(ギリシアはベスト16に進出した)。あの試合で日本代表をみる気がしなくなった。それだけの守備だったわけで、その戦術がポルトガル代表にも浸透したということだろう。


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↑(右) かわいい子猫もらってください


 
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 クリスチャン・ロナウドは決勝点以外の場面では消えていた。ロナウドが消えていたからポルトガルは勝利をおさめることができたのだろうと思う。もしクリロナが暴れ狂うような展開になっていたら、仮に打ち合いになったとしても、ポルトガルは敗れていただろう。ロナウドがワン・ノブ・ゼムとして、前線からのプレス係に徹し、守備に貢献したからこそ、金星を引きよせたのだと思う。それにしても、最後の最後、決勝点に絡むあたりはスーパースターたる所以であり、ベイルのクロスに比肩する大仕事をやってのけた。
 試合全体の流れとしては、アトレチコ対レアルのCL決勝を彷彿とさせた。本来攻めるはずのポルトガル(レアル)が攻めてこない。だから、クロアチア(アトレチコ)が攻めるしかない。リズムが狂う。それにしても、クロアチアはあそこまでナーバスになる必要はなかったのではないだろうか。いまフランスやドイツの横綱相撲をみていると、クロアチアにももっとリスクをかけて攻め込んでほしかったと思う。そうすれば、ポルトガルも反攻せざるをえなくなったはずであり、乱打戦に動いた可能性はあるだろう。
 最後の場面は巌流島の対決のようでしたね。小次郎が燕返し一閃、その刃を飛び越えて櫂を打ち下ろす武蔵。あしたのジョーのクロス・カウンターか。見応えがあった。


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 フランスが2-1でアイルランドを倒した試合のあと、WOWOWは懐かしの映像として、ユーロ1976ユーゴ大会の準決勝、オランダ対チェコスロバキアのハイライトを放送した。これは貴重な映像ですね。74年のW杯ドイツ大会決勝で敗れたオランダが、捲土重来で臨んだ大会であったのだが、準決勝は延長戦の末、チェコが3-1でオランダを下す。その映像を初めてみた。会場はザグレブ。大雨で芝生が荒れており、オランダは自慢のパスワークも集中守備も機能しなかった。ユーゴの隣国チェコは、こうした天候に慣れていたのか、足下がしっかりしており、前半からオランダを圧倒した。いちばん驚いたのは、伝説のリベロ、オンドルシュだ。大柄のオランダ選手よりさらに一回り大きく、前半にはオランダ守備陣よりはるか高い打点からヘッドで先取点を奪う。そして、後半にはオウンゴール。一人舞台だね。
 チェコスロバキアの勢いは已むことなく、決勝ではベッケンバウアーの西ドイツまでもPK戦で下し、優勝を遂げる。あれもまた旧ユーゴスラビアでの出来事だったんだね。


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 というわけで、わたしが推していたクロアチアが敗れました。残るはイタリアか。スペインを倒して、ぜひドイツと戦ってほしい。ドイツはイタリアを苦手としているからね。スロバキアのようにはいきませんよ。
 フランスのレベルはドイツに及ばない。イングランドがフランスを喰う可能性もある。まさか、見限ったはずのイングランドが頂上に登り詰めたりして・・・(ヤバイ)


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↑ブルーベリーと紫陽花

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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