2016居住環境実習・演習(Ⅱ)期末報告会01


7月27日(水)午後におこなわれた3年次の居住環境実習・演習(Ⅱ)期末発表会の概要を3年生6名が一人ずつ報告します。今回は立川班と倉吉班で別々の発表となりました。
1.立川~樗谿の町並み調査
立川~樗谿には、昭和18年(1943)の鳥取地震と昭和27年(1952)の鳥取大火を免れた町家・社寺等歴史的建造物が数多く残っている。鳥取東照宮をはじめ、指定・登録済みの文化財建造物が拠点的に点在し、そのほか伝統的町家等歴史的建造物が各所に分布している。また、建物は改造されているが正面の植栽が豊かな宅地もあり、とくに町中の路地や山際の旧道沿いに緑が多い。上町の一部の街路からは鳥取城天守跡が視界に納まる。さらに、漫画家の谷口ジローが立川・樗谿の風景を描いている。

1-1 連続立面写真と連続立面図
立川から樗谿の範囲を、A~Qの17ブロックに分け、ブロック内でそれぞれ通りを挟んで北をN、南をS、東をE、西をWと番付した。建物の番付を決めて撮影し、その写真を編集ソフト「インデザイン」を用いてパソコン上で貼り合わせる。現在、全17ブロックのうち16ブロックの連続立面写真が完成している。残りのブロックは夏休みの課題にする。
あとで紹介するデータベースを基にして、景観が良いと思われるエリアの連続立面写真をピックアップした。図4は立川町1丁目の山沿いを通る旧道である。赤枠内に示したように、このブロックには屋根の低い中2階の長屋系住宅が多く分布している。また、植栽の豊かな宅地が多く、車の通りが少なく、人が歩きやすいヒューマン・スケールの空間が続く。
図5の立川町2丁目・3丁目には、明治以前に建てられたと思われる中2階形式の建造物が軒を連ねている。表通りに面した町家だったが、今は営業していないため「しもたや」(後述)に分類される。とくに黄色い丸で囲った建物は、建物保全度および景観保全度が秀でており、歴史的な町並みの核になっている。

↑図4 ↓図5


上町は、鳥取東照宮のある樗谿公園や、市指定文化財「樗谿グランドアパート」がある。 樗谿グランドアパートは、仁風閣に次いで古い擬洋風建築として知られている。上図の赤枠の2棟は擬洋風建築の一部を残すものである。また、このブロックには、伝統的な町家や、建築家がデザインした最近の建物が点在しており、「山の手」地区の雰囲気を強く感じさせる。ただし、アルミパネルのビルAS012については歴史的景観に調和していないと評価した。

質の良い町並みを残す上町で連続立面図を作成した。「樗谿グランドアパート」の左右に連続する13棟である。建物の番付に即して、3年以上のゼミ生が一人一棟を担当し、スケッチを貼り合わせて連続立面図とした。上図の赤枠が樗谿グランドアパートで、付属する建物は、大学院に在籍する中国留学生の荊(けい)さんがスケッチした。 すでに述べたように、樗谿公園に近接するAブロックは、「樗谿グランドアパート」に代表される擬洋風建築、伝統的町家、建築家がデザインした現代建築などが軒を連ねており、旧城下町エリアの中の「山の手」景観を伝える代表的な場所である。「山の手」とは「下町」に対する概念で、身分の高い人たちの住宅が建ち並ぶ居住区であり、それが町並み景観に反映している。またこのエリアは、鳥取東照宮や樗谿公園と近接しており、景観的にはとくに重要なエリアのひとつになっている。(水田)
