2016居住環境実習・演習(Ⅱ)期末発表03-2

1-3 分布図から読み取る町と町並み(続)
(3)建物保全度と景観貢献度
図9は宅地植栽の分布図である。濃い緑が「植栽豊か」、薄い緑は「植栽がほどほど」な宅地を示す。植栽は全域的に確認できるが、主に立川町の山際や路地裏の区画が目立つ。宅地正面の植栽は、町並み景観に貢献していると評価した。 図10は建物保全度の分布である。指定・登録済みの文化財建造物以外にも、伝統的な町家や擬洋風建築が点在している。町並みとして連続する場所は多いとは言えないが、やはり町並み保全を考える上で、一番の基準となる建物であろう。

最後に景観貢献度について。歴史的な町並み景観に対する貢献度は、もちろん保全度の高い建物がもっとも重要である。しかし、建物の保全度が低くても、道路正面の植栽が豊かな宅地や、デザインのすぐれた現代建築などは景観貢献度が高いと考えた。
図11の左下は、出雲市の建築家がデザインした新しい土蔵風カフェである。右下の1棟は植栽の豊かな住宅である。いずれも、町並みに良好な影響を与えている。


以上の基準により、景観貢献度の高い建物の分布を示す(図12)。とくに評価の高かった「優・良」を、赤・橙色で色付けしている。図13では、建物保全度と景観貢献度の分布図を比較している。建物保全度だけでは「点」にすぎなかった建物群が、景観貢献度では「面」的に広がってきている。面的な広がりを見せる景観貢献度の分布図をこれから分析し、どのエリアを重点的に保全すべきか検討していく予定である。
今後の課題は以下のとおり。①町並みデータベースの修正と②「谷口ジローの風景」データベースの完成のため、夏休みに補足調査をおこなう。また、③町並み保全の対象とすべき範囲と保全手法については、今年度いっぱいかけて、ゼミ生一同で検討していく予定である。(谷口)
