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男はつらいよ-ハ地区の進撃(2)

160829 修復現場 ワンディツェ修復現場


連戦連敗-ワンディツェ寺

 8月29日(月)。ブータン調査初日です。今日は僧院2カ所を巡り、記録を取りました。
 まず、午前中に訪れたのはワンディツェ寺です。今枝先生ご夫妻からご推薦いただき、参観することになったのです。ティンプーから北へ3kmほど離れた森の中にあり、高度計は標高2500mを示していました。パロ~ティンプ地区の生活面が標高2200~2300mですので、わずかに高い位置にありますが、高地になれない身にしてみれば、この200~300mの高度差は身にしみて堪えます。車をおりて半時間あまり歩く山道で早くも息絶えだえ・・先生はステッキを使われました。
 ワンディツェ寺は17世紀にブータンを統一した初代ジュケンポ(座主)、サブドゥル・ナマン・ナムキュルによって創建されたと伝承される僧院です。もちろん宗派はドゥク派。元はゾン(城)であり、国家形成後の「一国一城令」的制度改正により、多くのゾンが廃止され、ラカン(僧院)に衣替えしました。


0829石工01 石工棟梁と壁試験体


 いままさに、先代国王(4代目)ジグミ・シンゲ・ワンチュクの指示で修復工事がおこなわれています。撮影は、内部だけでなく、正面の外観さえも禁止されています。みっともない状態では公開できない、という先代国王の強い意向が働いているようです。本寺に専住の僧侶はいませんが、担当の僧侶はティンプー最大の城、タシツォゾンの僧院におり、必要とあらば、こちらに出向いて法要をおこなうとのことでした。外回りは版築壁ではなく、分厚い石積で、石工の棟梁が何種類かの積み上げ方を検討していました。テーパーを少しずつ変えた壁のモデルを何種類も試作しています。
 本堂内陣には釈迦如来を祀っています。グルリンポチェはどこにもみえません。おそらくドゥク派を信仰する王族がニンマ派の象徴たるグルを敬遠しているのではないか、とガイドさんは説明されました。本堂内の柱など主要建築材は真新しいものに替わっていました。修復ではなく、再建に近い介入を進めているわけです。これも先代国王の意向だそうです。となると、古い建築材がどこかにあるだろうということで、石工の棟梁に訊ねると、素屋根の裏側だということで、早速全員で見に行きました。このころまでには、すでに互いに仲良くなっていて、棟梁は我々に年輪調査の許可をあっさり与えてくれました。ポラロイド写真が効いたのかもしれません。


160829 サンプル採取 0829石工02建築部材02



0829石工02建築部材01


 部材置き場で古材(柱)の年輪をみると、末口で200年輪以上あるのは間違いなく、年輪幅も1~2mm前後で密にそろっており、年代測定のサンプルとしては理想的です。そこで、二人で手分けして、ウィグルマッチのサンプルを採取すべく、マチ針を5年輪単位で打ち始めました。石工のみなさんはとても友好的で、お茶やお菓子を現場にもってきてくれました。そのまま120~130年輪あたりまで進んだころ、状況が一変します。直前まで友好的だった若いポリス?の1名が事務所マネージャーに連絡したところ、ただちに調査をやめるようにとの厳命がくだされたのです。ガイドはライセンス番号まで問われたらしく、相当びびっていました。
 少々反省しました。ポラロイドを撮ってあげた年長の棟梁は機嫌よく対応してくれたのに対して、ポラロイド撮影しなかった若いポリスが騒ぎだしたからです。まんべんなく大勢を撮影しておけばよかったのかもしれません。
 年輪測定とサンプル採取には失敗しましたが、基礎情報を整理しておきます。(くらのすけ)

   【サンプル1】大石担当  直径30cm×30cm  約60年輪まで確認
   【サンプル2】吉田担当  直径36cm×36cm  130年輪まで確認  長さ 249cm


0829石工03ポラロイド
↑右端の人物が騒ぎたてた。
0829石工02建築部材03
↑柱頭部分

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プロフィール

魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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