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男はつらいよ-ハ地区の進撃(11)

0903RTC01.jpg 160903 ロイヤルティンプー大学 RTC


作戦会議

 9月2日の夕方、わたしたちは買い物に出かけていたが、ガイドのウタムさんはワンチュク・ホテルの厨房で松茸の調理に骨を折っていた。まず、「焼き物」という感覚が諸外国にはないようだ。ソテー(炒め)なら難なくできるが、焼くのは慣れていない。ホテルのシェフにはできないから、自分で焼くということだ。おまけに、キッコーマン醤油の小瓶とライムを用意してくれている。この旅で松茸をなんど食べたかわからないが、ソテーから網焼きに変わって、味はますます日本化していった。
 松茸をつまみながら、翌日の調査について協議を続けていた。前日(1日)夜に出会った「版築研究」四人組との討議からヒントを得ていたのである。話題が版築の年代に及んだとき、わたしは思わず先生に「えっ、壁の年代ってわかるんですか?」と質問してしまった。先生は「難しいだろうなぁ」と答えられたが、四人組の一人が「版築壁にも有機物(木片)は含まれていますよ」という反論をされた。それに対して、先生は以下のように答えられた。

   版築の壁に木片などが含まれることはあるでしょうが、それが心材型か辺材型かが
   不明なら、仮に年代が出たとしても、外側に年輪がいくらあるかわかないので、あまり
   意味がないと思いますよ。


0903ツァリウ01 ツァリウ廃墟


 たしかにその通りだと思う。さらに細い木枝の場合、年輪数が少なすぎて、たいてい信頼限界20%前後の年代候補が5つぐらい示され、結局、どの年代が正しいのかさっぱりわからない、という結論にASALAB自体ずいぶん悩まされてきた。となれば、版築壁の年代など、最初からギブアップしてしまえばよいのだが、うねり走る車のなかで先生は考えかたを少し修正されたのだった。壁に残る有機物がスサ(藁)であれば、話は変わってくる。バーミヤン大仏の例が思い起こされる。タリバンの攻撃で首が飛んだ塑像の内側に残るスサをドイツ隊が年代測定したところ、雲岡よりも新しい「6世紀以降」という結果がでたことにより、大仏(立像)の伝播経路に再考を迫られている。つまり、仮に版築の壁の中心部分からスサが検出されれば、その壁の築成年代があきらかになる可能性があるということだ。しかしながら、版築壁は木舞壁ではないので、予め土に粘りを与える必要はなく、スサの検出は容易ではないであろう。これについて、ウタムさんに訊ねると、ごく稀にスサを含める場合もある、というので、サンプル採取に挑むことにした。
 木材のウィグルマッチ・サンプルを採取する道具はもちろんもってきているが、土を掻く道具はない。そのとき目前のテーブルにおかれた大きなスプーンに目がとまった。自宅に帰るウタムさんに大きなスプーンを2本もってきていただくようお願いした。1本のスプーンで壁の表面を掻く。外部からの影響のないところまで表面を掻いて、次に2本目のスプーンで壁の中心に近い部分を観察し有機物の有無を観察した。


0903ツァリウ02 同上


*いちばん上の写真はロイヤル・ティンプー・カレッジ(RTC)。クンサン・チョデンさんの娘、ダルマ・C・ローディさんが教授を務める。達磨さんどっこだ?


0903ツァリウ03A 160903 サンプルB位置 サンプルB


サンプル採取

 9月3日(土)、タシツォゾンの参観を終えてから、ティンプーとパロの2ヶ所で建物跡(廃墟)から有機物サンプルを採取した。   

ツァルイ寺本堂脇版築壁(廃墟)
  所在地: 首都ティンプー市
  推定年代(ヒアリング): 15世紀
  備考: 現在の本堂脇に残る版築壁の建物跡。川岸側から山側にむかって3段(3室)に分かれる。
    【前室】高さ1層。わずかに赤みを帯びた灰褐色土。
        砂礫を多く含み、非常に堅いためサンプル採取を断念。
    【中間室】高さ2層。 赤みのやや弱い赤褐色土。
        サンプルAの採取位置等は略図と写真に示す(↓)。
    【後室】高さ3層。 赤みの強い赤褐色土。
        サンプルBの採取位置等は略図と写真に示す(↑)。

160903 サンプルA位置② 略図(ツァルイ)
↑ツァルイ廃墟サンプルA採取位置と略図
↓シャバ村農家版築壁(廃墟)。右は廃墟からダカルポ-ゲムジャロ寺を遙拝。
0903シャバ02 0903シャバ01


②シャヴァ村農家版築壁(廃墟)
  所在地: パロ地区シャヴァ村
  推定年代: 不明(常識的には19世紀以降)
  備考: 一般農家の建物跡か。
    サンプル採取位置等は東妻壁。
    サンプルAとサンプルBの2種を採取(略図・写真参照)
    壁は非常に硬く、砂礫を多く含む。スサ状の遺物、および
    小枝状の遺物らしきものを肉眼視で観察した・・・


160903 A位置②(編集) 0903シャバ03sam

↑東妻壁サンプル採取A位置 ↓同B位置・略図
160903 B位置②(編集) 略図(ゲムジャロ)


③ツァルイ寺本堂内陣2本柱最外年輪サンプル
 上のサンプルのほか、ツァルイ寺では内陣2本柱のうちの1本から外側20年輪を確認し、うち最外年輪(2年輪)を採取した。以上のサンプルはすべて業者に送付済みであり、分析・測定の結果を待っている。(くらのすけ15)
 

160903 年代チップ 略図(内陣)



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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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