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名勝「摩尼山」整備構想(2)

0915マニ10奥の院02 0915マニ10奥の院03縦01


奥の院-飛べよ、ドローン

 昼前に「奥の院」に到着しました。さっそく昼弁当です。みんなコンビニの麺類ですが、ケントさんは具材をひっくりかえしたり、とろろ蕎麦の先生は食べ終えるころになってとろろが残っていることに気づいたり、てんやわんやです。先生は久しぶりにみる「奥の院」の巨巌に感激されていました。かつては、岩下の法面は禿げ山状態だったのですが、今は高さ1.5m余りの灌木が生い茂り、しかも色とりどりの花を咲かせています。良い風景になっている、と喜ばれていました。
 ここで、いよいよドローンの登場です。一回めの飛行は順調で、いったん着陸しました。ここで先生から画像・映像の確認がしたい、という申し出があったのですが、パソコンがないとそれができません。次回はパソコンを持参しようと思います。そして、2回めの飛行に挑むのですが、突然、ドローンが動かなくなりました。ドローンとスマホのワイファイ接続がうまくいかないようです(摩尼山はワイファイが通じにくい)。そこで、ケントさんのスマホを諦め、わたしのスマホに必要なアプリをダウンロードすると、ドローンが動き始めました。


0915マニ10奥の院05
↑操作 ↓ドローン撮影写真
0915マニ10奥の院10ドローン01 0915マニ10奥の院10ドローン02sam


岩盤とロープ

 「奥の院」の岩陰仏堂から岩窟仏堂に旋回する道はとても危険です。急峻な岩盤が滑りやすい。そこで2014年にロープがわたされた。このロープはいわゆる虎ロープで黄と黒の斑が目立ちます。ロープは必要ですが、名勝らしく周辺の風景に馴染んだ色に変えるべきと思いました。虎ロープから寅ロープへ??
 そこからさらに上がっていくと、シダの群落があります。摩尼山の生態を示す重要地点ですが、今は繁茂しすぎて道を塞いでしまっています。こういう場合は路肩のシダを刈り込まざるをえないでしょう。また、シダ群落に近接する「立岩まで90m」道標の周辺では岩盤が露出しており、やはり非常に滑りやすくなっているので、長さ20~30mのロープが必要でしょう。


0915マニ10奥の院06ロープ01
↑「奥の院」岩陰仏堂前の虎ロープ  ↓繁茂するシダが道を塞ぐ
0915マニ11シダ群落01



0915マニ12立岩01 0915マニ12立岩02


霞むドローン-立岩

 もちろん立岩でもドローンを飛ばして撮影しました。ところが、空は霞んでいます。曇りだから、というレベルではありません。この煙った空気はPM2.5と考えざるをえないのではないでしょうか。発掘調査をおこなった2010年ころは青い空と日本海がよくみえたそうです。この霞は年々ひどくなっていくみたいです。


0915マニ12立岩05眺望01 0915マニ12立岩05眺望02
↑ドローンで撮影したが霞んでいる ↓西国三十三観音石仏背面
0915マニ13石仏01

 
 立岩から表側の登山路を下りていきます。この登山路は旧参道よりも新しく、路肩に多くの石仏が置かれています。石仏と言えば、今春卒業したNobodyさんの卒論テーマでしたが、先生は三十三観音の背面を観察され、ほらみたことか、という顔をされました。石仏の背面に文字が刻まれていると先生は何度も指示されていたのですが、先輩は「台座の側面に文字はあるが、背面にはない」と仰っていたのです。いま観察すると、石仏背面に寄進者と寄進年が刻まれています。三十三の石仏調査は大変ですが、後期に拓本とりの練習をしようということになりました。
 境内間近になって、また岩盤があらわれます。とても危険な場所であり、やはり2014年にスティール・パイプの手すりが作られたのですが、工事現場用のものであり、名勝に相応しくありません。これについては撤去し、ロープで新たに手すりに替えるべきだと思います。


0915マニ14手すり01 0915マニ14手すり02sam


閻魔堂を立岩に戻そう!

 境内におりると、すでに会議に参加する方々がいて、閻魔堂と鐘楼の間でなにか話していました。閻魔堂の背面側が大きく沈下していることにみな驚いているのです。いろんな対処法があるようですが、先生はこれを機会に閻魔堂を原位置にもどしたらどうか、と言われます。数十年前まで閻魔堂は立岩の隣に建っていました。天国か地獄か、死者の魂がどちらに行くのかを山頂で裁いていたのです。これぐらいの小さな建物なら、たしかに解体して山上に持ちあがれないことはないでしょう。一部の部材は山上建物のものを継承しているようですし、当初位置に戻すことで、登山客もまちがいなく増えるように思います。


0915マニ15閻魔堂01 0915マニ15閻魔堂02


 その後、学生2名は境内でドローンの撮影をしました。先生たちは庫裡で会議です。
 今回の調査をわたしなりに総括すると、全体的な山道の修復整備が必要だということです。崩れた土砂は山道を削り、その削れた土砂が川の源流を防ぎ山道を浸食している状態や、滑りやすくなっていたり折れていたりする丸太橋。文化財としての景観とは不釣り合いな立岩に掛けられたロープなどは、安全面や名勝地としての景観としてマイナスに影響する要因です。文化財としての価値を保ちつつ、名勝地としての景観を損なわない山道の修復・修景が求められるのだと感じました。
 会議はじつは前日の大雲院からの続きだそうです。会議のあとで先生が整理された修復整備の基本的な方針を以下にまとめておきます。(麻原鬢鬢20)

 1)「奥の院」に至る山道は旧境内参道であり、それ自体に文化財価値がある。その価値を損なわない整備に努める。
 2)植林地からの土砂崩れで道や渓流を塞いでいる場所については、寺から植林の責任者に対して、土砂除去・浚渫などの作業を正式にお願いする。
 3)2ヶ所の丸太橋は劣化が著しく、板橋か鉄橋に替えるべきである。その場合、木材の材種や鉄の色彩などに検討が必要。
 4)渓流の侵食により道が分断され、板橋もしくはデッキを架設すべきと思われる場所がさらに1ヶ所ある。
 5)既存の道標は混乱し腐朽しており、門前(石段)の前から「奥の院」を経由して立岩に至るルートで、いくつかの案内板・距離標示板を新設する必要がある。案内板のうち門前の2枚は現状のものを改修、「奥の院」「立岩」には新設すべき。このほか数カ所に距離標示板を新設したい。
 6)標示板と橋を一つの工作物としてデザインするのもわるくない。少なくとも、橋と標示板には同一のデザインコンセプトを採用する。
 7)岩盤など危険な道筋では手すりが必要だが、三徳山にならい、ロープを原則とする。一般的には道の片側、危険な場所では路肩の両側に設置する。ロープの色彩は周辺の自然にとけ込むものとする。

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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