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縄文-建築考古学、再び(2)

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三脚を組む

 カットした股木の構造材で三脚を組む。下端は設計図どおり竪穴のエッジにそろえ、上端は股木を噛み合わせる。偏見をもっている人たちがいる。こういう構造を弱いと思っているのだ。じっさい、博物館のど素人が「耐震は大丈夫か」などという専門家まがいの意見を口にした。撫子はどうしようもない。先端の股木を噛み合わせた三脚構造の堅牢さをわたしは小興安嶺のオロチョン族に教えられた。この構造はとても強い。


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 次にもう一つの変形三脚をつくる。まず長めの股木を完成した三脚の反対側から三脚頂点をめざして架けわたす。これは三脚と地面に渡す傾いた棟木のような材といえるかもしれない。この材を「長材」と呼ぶことにする(↓)。


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↑長材  ↓短材で長材を支持する
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 そして、二つの短い股木で長材の中間部を支持する(↑)。この短い股木を「短材」と呼称することにしよう。2本の短材と1本の長材で変形の三脚が構成されるのである(↓)。くりかえすが、この構造は強い。


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垂木がけ

 こうして完成した変形ダブル三脚の周辺に垂木をめぐらせる。材料はエゴノキ。これまで縄文建築復元で使った経験がなかったが、とんでもない威力を発揮した。柔軟性にとんだマルチ・ユーティリティの木材だ。垂木もやはり股木にするが、少々長めにカットしておく。この材をダブル三脚の頂点や長材にかけわたしていく。


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↑垂木がけ、ほぼ完成  ↓完成
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嗚呼、石斧

 こうして骨組が完成したわけだが、屋根葺きを前にして、股木のでっぱりを削除しなければならない。じつは、三脚の段階から少しずつよぶんな部分をカットしていたのだが、結論としていえることは、股木の先端部分は屋根葺きの直前まで触らないほうがいい。股木と股木の噛み合いによってジョイントされる工法なので、でっぱりが消えることで引っ掛かりが消滅し、部材の接合が上手くいかない場合がでてくるからだ。骨組が完成し、先端部分を切る。もちろん電動ノコでカットした。ところが、よせばいいのに、だれかが復元した石斧があると言い出した。石斧でエゴノキをカットしてみようということになった。結果、大の男が力を漲らせてもエゴノキは切断できなかった。やわらかい材だからかもしれないが、繊維方向に裂けていくだけで、断面のみえる切断にならないのである。さすれば岩宿時代や縄文草創期はどうしたのであろうか。おそらく、余分な股木を切らなかったのだろう。予め適切な長さに股木を調整していたのではないか? 【続】


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↑↓なにかがおかしい??
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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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