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グルリンポチェがやってくる(1)

グルリンポチェがやってくる p00[表紙] グルリンポチェがやってくる p01[遊び紙] 表紙・扉


    グルリンポチェがやってくる

               テキスト:クンサン・チョデン
                 イラスト:ペマ・ツェリン


グルリンポチェがやってくる p02[序文] グルリンポチェがやってくる p03[序文]p.2-3

まえがき

 ブータン※1の風景は隅から隅までグルリンポチェ※2の恩恵を受けていると多くのブータン人は信じています。グルリンポチェは、この世にいる人間としても、仏の姿としても、国のあちこちをひろく旅して瞑想しました。そのため、美しい渓谷、山、湖、泉、岩などを含むブータンの自然の名勝地の多くはグルリンポチェに関係づけられています。
 ブータン人にとって、グルリンポチェはただ偉大な尊師であり、ブータンに仏教を伝えた歴史的人物であるというだけでなく、もっとも敬まわれ、愛されている神仏です。よちよち歩きの初歩的な信者が学び始めた経典暗誦から国家的祭祀まで、あるいは、孤立した一軒家からおそるべく豪勢な宮殿・寺院まで、グルリンポチェはブータン人の精神性と宗教文化の焦点です。
 ブータン人は健康、財産、長寿、安全、幸福な生まれ変わり、仕事と試験の成功、そして人生のほとんどすべての出来事をグルに祈ります。かれは人びとを悟りにみちびく無比の先達であると考えられています。とりわけグルはブータンの精神的な父であり、守護神であるとつよく考えられているのです。

 グルリンポチェは並外れた耳で信者の言うことを聴き、博眼によって信者のおかれた状況を見通し、慈悲深い心で信者の気持ちを感じとるとブータンの年配者は信じています。不思議なことですが、朝焼けの太陽光線にまたがり、とりわけ太陰暦※3の10日にグルリンポチェは自分を呼ぶ人のところに現れると信じられているのです。申月(さるづき)※4の10日は、ほんとうに不思議なことなんですが、グルリンポチェがすべての家庭と寺院にやってくる日だと言われています。グルリンポチェの崇高な降臨の儀式はプレウ・チョドと呼ばれ、中央ブータンにおける最も古い祭の一つです。


 このすてきな絵本で著者が注意を向けているように、グルリンポチェがやってくるという確信とともに、信仰の気持ちと供え物をもって、今日なお人びとはプレウ・チョドを催しています。プレウ・チョドは、いまでも著者の故郷タン渓谷※5の活気に満ちた慣習であり、ブータンの精神的な文化の代表例です。グルリンポチェは村社会に暮らすイェシェイ、ドルマ、タシ、デチェンたち※6すべての意識のなかに、いまでもぼんやりながら大きな姿をあらわします。悲しいかな、これらの霊的行動による信仰や祭は、ブータン以外の場所ではグローバリズムとそれに伴う物質主義、世俗主義、科学至上主義の嵐にさらされ、死に絶えようとしています。著者は本書において、プレウ・チョド期間中における人びとの空想・熱狂・祝祭の興奮を描き出しています。

 本書は若者の心が日常を超越して思考するのを刺激するだけでなく、プレウ・チョドの知識や実践とグル・リンポチェ崇拝を若い子どもたちに伝える一助となるでしょう。本書はグルリンポチェが完全に体現した精神的豊かさ、慈悲深さ、賢明さや悟りなどの国内的価値を保全し、広報する助けとなるでしょう。

--
カーマ・プンチョ博士
ローデン財団会長
ブータン文化資料シェジュウ局局長  {中西}


【注】
※1 ブータン
 ブータン王国。大乗仏教を国教とする南アジアの国家。
チベット系民族が人口の8割を占めている。公用語はゾンカ語。

*1 A_B Travel - ブータンの地図
http://http://www.japanbhutan.com/旅行情報/ブータンの地図/
(A.B Travel - ブータンの地図)

※2 グルリンポチェ
 ブータンに密教を伝えた北インドの僧侶。守護神または第二のブッダとして崇拝される。
 元の名をパドマサンバヴァという。

*2 GNHトラベルスタッフブログ - ブッダポイントのお釈迦様ではなくタキ・ラのグル・リンポチェでございます
http://blog.livedoor.jp/gnhtravel-staff/archives/8071834.html
(GNHトラベルスタッフブログ - ブッダポイントのお釈迦様ではなく
               タキ・ラのグル・リンポチェでございます)


※3 太陰暦
 月の満ち欠けの周期(朔望月)を基にした暦。朔望月(さくぼうげつ)は、月の満ち欠けの1周期である。とくに、朔(新月)から次の朔、あるいは望(満月)から次の望までの期間を呼ぶ。朔とは太陽と月の合(黄経差が0°)、望は太陽と月の衝(黄経差が180°)のときである。1朔望月を一月とする。29日の小の月と30日の大の月を交互において1年12か月を354日とし、30年に11回の割合で大の月を2度続ける。(参考資料:明鏡国語辞典 第二版 大修館書店)

※4 申月(Monkey month)
 太陰暦7月の異名。陰暦七月のこと。(サルの月)
http://www.weblio.jp/content/申月/ (weblio辞書)

※5 タン渓谷
 中央ブータンの中心地ブンタンから北にのびる谷筋の流域。クンサン・チョデンの実家は、タン渓谷中流域のウゲンチョリンにある。

※6 イェシェイ、ドルマ、タシ、デチェン
   (Yeshey, Dolma, Tashi and Dechen)
 本書に登場する女たち。


【連載中のサイト:グルリンポチェがやってくる】2年
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1364.html
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1384.html
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1385.html
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Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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