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ルート66

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テセウスの舟、あるいはウナギ屋秘伝のタレ

 上のプラントは、珈琲と入れ替わるように、玄関に追い出されたスパシフィラムです。庭にだそうか、と提案すると、家内はヤな顔をする。思い出のグリーングラスなの。新婚直後に向島か槇島の公団住宅でリビングに飾った二つの観葉植物の一つだから。一つはベンジャミン(小さなガジュマル)で、すいぶん前に枯れてしまった。スパシフィラムは繁殖力が異常に強く、またたくまに鉢中を根っこが埋め尽くす。土はどこに行ってしまったのか。鉢の中は根っこがとぐろを巻いてしまうので、頻繁に株分けすることになるわけですが、我が家のスパシフィラムは30年前から今に至るまで同じ濃紺の鉢に納まって室内を飾り続けてきた。
 ここでプルタルコス英雄伝の「テセウスの舟」に思いを馳せる。ご存じ、同一性に係わる命題として哲学者の間で議論の対象になってきた神話的題材である。クヌット・アイナー・ラールセン(1994)はこれを「火災で初重を焼いた法隆寺金堂」と重ね合わせて考察した。
    
   はたしてこれはテセウスの舟なのだろうか。でないとすれば、それはいつ潰えたのか?
   はたしてこれは法隆寺金堂なのだろうか。でないとすれば、それはいつ潰えたのか?

 このまえ、歴史遺産保全論でその講義をしたばかりなんだけど、おもしろい感想を書いた女子学生がいた。「テセウスの舟」の話を聴いていて、「創業以来継ぎ足してきたというウナギ屋秘伝のタレを思い起こした」というものです。生物の細胞が6年間で入れ替わる話を指摘した学生が昨年は数名いたが、ことしは鰻重秘伝のタレときたか。いや、勉強になるね。教えて、教えられる。

 なんのことはない、昨日わたしは、珈琲の樹に居場所を奪われたスパシフィラムをみて、「これもテセウスの舟だ」と思ったというだけのことなんです。
 AはA’に変容したのか、それとも、AはBに変化してしまったのか?

 



 どういうわけか、ビデオに「堺でございます」の録画が1回だけ残っていて、再生してみると、ゲストは陣内孝則、ギター当番は渡辺香津美。わたしは渡辺香津美というギタリストがあまり好きではありません。この人のギターを聴いて感動したことがない。とくに伴奏にむいていないのは「堺でございます」をみてりゃ、だれでも分かる。伴奏が歌の邪魔をする典型的な演奏家ですね。うまいとこ見せたいのかもしれないけど、結果として、前に出すぎて歌を台無しにしてしまう。歌手にとって生命線となる「間」を埋めてしまう天才というか、あそこまで歌い手とずれるのは自分の演奏にだけ集中してるからなんじゃないかな。「堺でございます」では野口五郎が息苦しくなって、途中で歌を放り出したことがありました。歌伴では、どうみても長谷川きよしに軍配が上がる(長谷川さんも時に音が多すぎるけど)。
 しかし、この日の「ルート66」は良かった。陣内の歌いっぷりはもろにリズム&ブルースで、ナット・キング・コールのオリジナル「ルート66」に近いものでした。こういうロックぽいアップテンポの曲のほうが渡辺香津美は活きるのかもしれない。一方、上は娘さんとダイアナ・クラールのデュオですが、とても同じ曲だとは思えないね。



こちらの方がオリジナルに近い。

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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