思い出の摩尼(1)-如来堂での朗読を終えて

鳥取中部地震の被災チャリティと青銅パネル進達式
11月12日(土)、「吉川美代子さんと愉しむ講演+民話朗読会」が摩尼寺の善光寺如来堂で開催されました。明治45年の国鉄山陰線全通を記念して竣工した如来堂では、八十数年ぶりに阿弥陀如来堂厨子がご開帳され、11月3日に中国観音霊場合同の大法要が営まれたことについては、すでにお知らせしたとおりです。「講演+民話朗読会」はご開帳・大法要にともなう行事であると同時に、「摩尼山」の国登録記念物(名勝地)決定の祝賀イベントでもあります。先週の水曜日、準備のため訪れた際は境内の寒さに震えていましたが、いざ当日になると、空は晴れ、外気も温かく、予想していたよりもはるかに心地よい環境下で会が執り行われました。私個人にとっても一大イベントであるこの日を、晴れやかな気候で迎えることができ、ほっと胸を撫で下ろしました。


とても残念なことですが、チケットの売れ行きは昨年の長谷川きよしさんのコンサートほどではなかったようです。10月21日に発生した鳥取中部地震の影響があったのでしょう。そこで先生は、このイベントに被災した文化財建造物チャリティの性格をもたせることを考えられ、会の最初に募金を募ることから始められました(↑)。さらに、2日ばかり前県教委に届いたという国登録記念物パネルの進達式がサプライズとしておこなわれました(↓)。

↑↓ 国登録記念物青銅製パネル進達式


学生による民話の朗読
昨年、一昨年と摩尼寺紅葉コンサートがおこなわれ、セミプロやプロの音楽家が如来堂で演奏しましたが、今回のイベントでは、研究室の学生が舞台に上がって朗読するという、新たな試みがおこなわれました。大勢の観客を前に、日本とブータンの民話を朗読するのです。光栄にも、私と、同期の武田君がその役割を担うことになりました。武田君はなんと高校時代、放送部の大会で県代表の一人に選ばれ、全国大会に出場した実力者だそうです。この実績からすれば、今回の”朗読会”における彼の抜擢は必然であったとも言えるでしょう。私はというと、クンサン・チョデン作『メンバツォ~炎立つ湖~』というブータンの民話絵本の翻訳に係わるプロジェクト研究4(2年次)のリーダーであったことを評価され、先生よりお声を掛けていただきました。自ら翻訳した絵本を朗読してみないか、というわけです。身にあまる役割を授かり、私はこの度の会を自分自身のイベントとして強く意識するようになりました。結果として、これまでの研究室のどのイベントよりも意欲的に携わることができました。


本番当日、私は受付係の仕事と衣装替えのため、前半のスケジュール(開会式・表彰式や吉川さんの講演など)に参加することができませんでした。そのため、いまとなっては、撮影された写真をみて、その場の雰囲気を想像するしかありません。であるからこそ、なおさら朗読会の印象が深いものになり、いまも鮮明に記憶に残っています。第2部の冒頭で先生の民話解説が始まったころ、いよいよ出番が近づいてきた、と体がうっすら緊張し始めました。続く武田君の朗読が終わるころには、若干体が硬くなっていました。そして、声が裏返るのではないだろうか、と不安を抱いたまま朗読に臨みました。しかし第一声、つまりタイトルを読み上げるところが練習通りにできたことから、だんだんと緊張もほぐれていきました。あとは練習通りにすればいい、と気楽な姿勢に戻ることができました。無事自分の出番を終え、あとは主役にお任せするだけでした。吉川さんの朗読にじっと耳を傾けるも、やはりプロの声には敵わないな、と思うばかりでした。
この朗読会が私にとって特別で、素晴らしい経験であったことは間違いありません。責任ある、貴重な役割を任されたこと、企画に大きく携われたこと、そして何より楽しかったことが、私の心に今なお感動を与えています。これこそまさしく、私の中の“思い出の摩尼”です。(ソニドリ)

