マンダリン・マカオ(1)

マカオ歴史地区の中国的遺産
なんどか述べたかもしれないが、澳門は三度めの訪問になる。一度めは2001年の3月、本学に着任する直前だった。コロアネ島にあるエッグタルト発祥の店、ロード・ストウズ・ベーカリー(アンドリュー)でエッグタルトを買い込み、対面の広場の椅子に腰掛けて背伸びしながら青空を見上げ、解放感に浸っていた。オレは彼岸に行ける・・・現実はそんなに甘くなかったが、此岸からワープして新世界に飛翔する前の快感を澳門で堪能した。


2回めは2006年の冬。澳門は変革を迎えていた。前年(2005)、「マカオ歴史地区」がユネスコの世界文化遺産に登録されたからだ。マカオ歴史地区の構成資産は23の歴史的建造物・庭園と8ヶ所の広場からなる。その大半はポルトガルの植民地遺産だが、中国的(マンダリン)なマカオもちろん含んでいる。媽閣廟はマカオの語源及び起源と係わる海神の祭場であり、盧家大屋と鄭家大屋は中国人の住宅である。規模からみれば、盧家は中型、鄭家は大型に分類されるであろう。


廬家と鄭家
10年前(2006)のレポートから再録しておく。廬家屋敷(廬家大屋)はマカオに残る数少ない中国式大邸宅として世界遺産に登録されている。清末、光緒十五年(1898)の建築。中国の大富豪にして銀行家、マカオの「カジノ王」とも呼ばれた廬華紹(廬九)の旧宅である。南方中国に特有な天井(テンセイ=小さな中庭)をもつ2階建ての住宅。ステンドグラスをはじめ、ポルトガル風の装飾が散りばめられ、清末中国の過剰装飾を抑制して、えもいわれぬ微妙な中葡折衷の意匠を生み出している。


鄭家轎道