被災した未指定・未登録文化財に支援を!

『環境大レポート』第28号から
ひさしぶりに大学の広報誌、公立鳥取環境大学学報『環境大レポート』に記事を書きました。たしか私学開学の年に「茶室とバラック」なる随想を寄せた記憶があります。だから十数年ぶりのことか。8ページに鳥取県中部大地震の特集が組まれており、旧建築系のメンバー2名とともに短文を寄稿しました。
以下は校正前の原稿です。
浅川「被災した未指定・未登録文化財に支援を!」『環境大レポート』第28号:p.8、2017年3月7日
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県中部は文化遺産の宝庫であり、本学開学以前から歴史的建造物の調査に携わってきた。湯梨浜町の「橋津の藩倉」「尾崎家住宅」、倉吉の伝統的建造物群(町並み)などがその代表であり、調査後、多くは国や自治体の指定・登録を受けている。今年度は国登録文化財申請をめざして倉吉市河原町・鍛冶町にたつ2軒の町家に焦点を絞り、研究室をあげて調査研究に取り組んでいる。その矢先に中部地震が発生し、町家の土蔵(空家)で白壁が崩落し、瓦屋根がずり落ちてしまい、今はビニールシートに覆われている。こうした調査の中途段階で被災すると、国や自治体の救済措置の対象とならない。そこで、私たちは講演会等を利用して被災建造物に係わる報告書を販売し、売上金を対象家屋の所有者に直接寄付する活動を始めた。ところが、被災の影響で所有者は動揺しており、寄付を受け取られはしたが、いったん逡巡されたのである。破損は大規模ではないが、修理代は安価なわけではない。修理すべきか撤去すべきか、悩ましいと思われている。私たちは今後も支援活動を持続し、修復保全の道筋をつけたいと願っているが、なにより行政は、保全が担保された文化財建造物だけでなく、未指定・未登録の価値ある遺産にも目を配り、歴史都市「倉吉」の未来を再構想すべき好機と考えるべきであろう。


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