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トンレサップに帰ろう(2)

異文化社会における学校づくり

 5月24日(水)。3限の「パリンカの夢」中間発表練習を早めに切りあげ、4年生+αとともに母校をめざす。SGHトンレサップ課題の指導は午後3時すぎから始まった。生徒数は15名程度で3班に分かれる。女子が多い。まず自己紹介した。

  わたしは本校の卒業生です。もう60歳になってしまいましたが、開校百周年のときに2年生
  でして、野球部が甲子園に出場して仙台育英を3-1で倒したのを応援したんですよ。大学
  は建築ですが、そんなに建築が好きなわけではなく、むしろ文化史・民族学・考古学の分野
  と深く係わってきました。トンレサップには2回行きました。いつも辺境を放浪しています。
  放浪ほど楽しいものはない・・・

 寅くんはこちらを覗きこんで、「あれをやるんですか」と問うてくる。そっとウィンク?すると、本当にやっちまった。

  このたび名古屋グランパスからFC東京に移籍してきた○○です。

 結果、おおすべり。予想どおりです。何ヶ所かまわって挨拶するに、あまりに真面目でつまらなかったので、蹴球酒場用に準備した挨拶ネタを高校でも披露したのだが、受けるわけありません。「やっぱ受けなかった」という自虐コメントが受けるパターンです。


 その後、班ごとに学校のエスキスをみせていただいた。指導の日程が6月中旬から3週間早まったことは生徒にとって良かったと思う。もっと早く訪れてパワポをみせるべきだったかもしれない。生徒たちには土地感がない。湖面の水位が雨季と乾季で10mばかり上下するという漠然とした知識をもっているだけで、湖と湿地と水田の区別がつきにくい生態を実感できているわけではないのだ。
 エスキスはお世辞にも誉められたものではない。わざわざ東京から来た寅くんは呆れ気味で、隣のデスクでずいぶん熱い指導をしていた。わたしはすでに慣れてしまっている。今まさに環境学科で建築を教えているので、似たようなものなんだな。高校生たちは建築の基礎を学んだこともなく、専門的な指導をうけているわけでもない。偏差値は高いのだろうが、そんな17歳前後の生徒が学校を設計し、模型をつくるなんて、もとより無茶な話なんだ。この若者たちは体制の被害者ではないか、とさえ思った(COCに似ている?)。
 ただ、この課題をこなすことのご褒美として、シェムレアップ行があるのなら結構ではないか。アンコール遺跡群とトンレサップ湖。私だってもう一度行きたい。ところが、そういうツアーはないのだそうだ。会場にいた生徒・先生、だれも行かない。

  そりゃ、モチベーションあがらんね・・・
  後ろに並んでいるうちのゼミ生は夏休みにブータンに行くのよ。

と発言すると、近くに坐っていた女子高生が羨ましそうな顔つきになった。

 活発な質問をうけ、80分の指導時間はまたたくまに過ぎた。エスキスは未熟だが、潜在的な知的能力は十分高い。42年ぶりに教育現場に接し、さすが母校だと唸り喜んだ。そして最後に、異文化社会における「学校づくり」の問題を述べて、まとめとした。

  発展途上国における学校建設といえば、ビートたけしがベナン(アフリカ)、島田紳助が
  カンボジアで実践していますね。わたしも中国雲南省の辺境地域に学校を建てるから
  協力してくれ、と学会の先輩から依頼されたことがあるのですが、「そんなことはしない」
  とぶっきらぼうに断った経験があります。学校は科学に基づいた新しい知識を若人にもた
  らしますが、そのことで地域の伝統的文化を大きく変容させ、過疎を導く触媒となるから
  です。19世紀に類似の役割を果たしたのはキリスト教会でした。キリスト教の世界観が
  普及することで伝統的な信仰や文化が崩壊していく。学校の場合、科学的な新しい知識
  の普及によって、おじいさん、おとうさんたちの価値観や文化が否定されるようになる。
  若者たちはより高い教育を受けようとして故郷を離れ、都市に引っ越して高校や大学に
  通うことを望みます。結果、その地域で過疎が進み、後継者を失うのです。そうした変化
  をまったく否定するわけでもないのですが、学校建設を国家が制度として地域にもたらす
  ならいざしらず、異文化社会でくらす外国人が主導してよいのか疑問に思っています。
  そうした地域の社会問題と学校の係わりを考慮しながら、学校づくりのプランを練り上げ
  てください。 

 後日、担当の先生から感想文の一部が送られてきた。きっと良い内容のものを選んだのだろうが、以下に転載させていただく。

  「苦労もない完璧な学校をつくることがベストなのではなく、トンレサップ湖の人々の暮らしを大切
   にした学校をつくることが、私たちにできる最大の努力だと思った」

  「現地の実際を知ることができた。アイデアが現地でどのような影響を与えるかをしっかり考えて
   進めたい」


170524西高記念撮影①web 170524西高記念撮影②doc

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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