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2017年度 公立鳥取環境大学学内特別研究費に新規採択!

中国青海省・西蔵自治区におけるチベット仏教僧院の予備的調査研究

 先月23日、表記研究申請について採択通知がありました。満額回答でして感謝しております。以下、研究申請の概要です。

【研究課題名】
  中国青海省・西蔵自治区におけるチベット仏教僧院の予備的調査研究
【申請額】
  990,000円
【研究目的】
 ①背景  2013~15年度科学研究費基盤研究(C)「チベット系仏教及び上座部仏教の洞穴僧院に関する比較研究」(課題番号25420677)の最終年度に次回科研申請のため本学教育研究特別助成に「中国青海省におけるチベット仏教系僧院の予備的調査研究」を申請し採択された。採択後まもない2015年9月後半、省都西寧を訪問して青海省文物考古研究所の研究員と交流を図り、人的コネクションを確立した。その後、西寧に近い同仁、貴徳、夏河、青海湖などでチベット仏教ゲルク派(ダライラマの所属する最大宗派)の主要僧院と遊牧民放牧宿営地などを視察した。中国では、密教の瞑想洞穴を「修行洞」と呼ぶ。青海省は高地寒冷のなだらかな丘陵地域であり、ブータンのような「崖」は多くないが、ラフラン寺(夏河)やタール寺(湟中)などのゲルク派大寺の背後の山に修行洞が集中して設けられている。また、唐代にまで遡る西寧周辺の北山寺、白馬寺等にも崖面に修行洞の遺跡が露出している。こうした視察成果は、研究室ブログに「遊牧の彼岸」として連載したが、その改訂版を今年度の本学紀要に投稿する予定である。
 今年度は、チベット仏教ニンマ派(古派)とゲルク派の布教の道を辿ることで、アムド~チベット地域の重要僧院の実地情報を得るとともに、地元の研究機関との交流を図り、申請の準備を進めたい。


 ②目的  2015年の青海省(アムド)調査を継承し、西寧・青海湖から、都蘭、ゴルムド(格尓木)を経由して、西蔵自治区の首都ラサに至り、さらにツェタンまで足をのばす。この地域にはチベット仏教では最も古いニンマ派に加え、現在のチベットを支配するゲルク派の僧院が多数分布している。ニンマ派は、8世紀に北インドの僧パドマサンバヴァ(後のグルリンポチェ/蓮華大師)が伝えた最初の密教であり、各宗派の基礎となった。パドマサンバヴァはブータンも2度訪問しており、「ブータン仏教の開祖」と呼ばれる。ゲルク派は14世紀にツォンカパの開いた宗派で、ラサ郊外のガンデン(甘丹)寺を総本山とするが、ツォンカパは青海省湟中県(ツォンカ)の出身地であり、湟中に青海省有数の大寺タール寺を開山した。顕密併習を特徴とするチベット仏教にあってゲルク派は顕教を重視する関係上、仏像を祀り公開する本堂等の施設が過半を占めるが、その内側に密教の境内領域、裏山に修行洞を設けている。本研究では、西寧・湟中からラサに北上するゲルク派拡散の道を辿りつつ、修行洞のおおまかな分布の把握を目的の一つとする。いま一つ注目しているのは、版築壁構法のひろがりである。西~中央ブータンの僧院本堂及び民家建築は幅約1mの版築壁を構造体としているが、版築壁の源流は中国の中原地域にある。中原で出現した版築壁が黄河流域を遡上して青海省に達し、ゲルク派の北上とともにラサに至る。そこからブータンに南下した可能性を想定しており、こうした仮説を科学的年代測定等などから考察する。

【研究計画と方法】
 8月下旬に以下の行程の調査を予定している。
  第1日 関空~成都(出国) 四川省文物考古研究所を表敬訪問
  第2日 成都~西寧 青海省文物考古研究所を表敬訪問  西寧~青海湖~都蘭
  第3日 都蘭~ゴルムド(格尓木) ゴルムド発~【青蔵鉄道夜行列車】
  第4日 ~ラサ(拉薩)着 西蔵自治区文物考古研究所を表敬訪問
  第5日 ラサ~ツェタン(澤当)  第6日 ツェタン~ラサ
  第7日 ラサ~成都  第8日 成都~関空
 踏査地では、<1>写真撮影、<2>修行洞・境内配置のスケッチ、<3>ヒアリング、<4>文献収集、<5>版築壁に含まれるスサ(藁)等有機物のサンプル採取と年代測定、などに取り組む。
 国内の活動としては、チベット・ブータン仏教史の第一人者、今枝由郎委員を鳥取に招聘し、チベット仏教に係わる講演をおこなっていただく。

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研究助成費採択決定おめでとうございます。20歳若ければ自費を負担してでも参加したいプロジェクトです。
報告書作成段階で何らかのお手伝いができればと思っております。

山村さんへ

コメントありがとうございます。
奥様のお加減はいかがですか?
ゼミは女子が8割を占め、大変わりです。
また遊びにきてください。
プロフィール

魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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