パリンカの夢(7)

居住環境実習・演習(Ⅱ)中間発表 その1
6月7日(水)におこなわれた中間発表の内容を3年4名が分担して報告します。トップバッターの私のブログアップが遅れたことをゼミのみなさんにお詫びします。
今年の3月、先生たちがスロバキア・ハンガリーを訪問し、パリンカという酒に出会った。スロバキア・ハンガリーは寒冷な高地にあるため小麦栽培に不向きであり、洋梨・林檎・プルーン・アプリコットなどの果実栽培が盛んである。それらの果実を材料につくられる蒸留酒を「パリンカ」と呼ぶ。とくに洋梨のパリンカが有名だ。それは「梨のウォッカ」というべき風味を備えている(図1).

スロバキアのセベチェレビィ村では酒蔵を見学し、その後、パリンカの試飲となった。通訳ガイドは偶然にも鳥取県智頭町出身の女性であった。試飲会はたちまち宴会となり、手作りのチーズとハムを酒菜にして宴席は盛り上がったそうだが、パリンカのアルコール度数が52度と高いので、日本勢はまもなく酩酊状態に・・・こうして出会ったパリンカに魅せられ、帰国後、鳥取でのパリンカづくりを思い立ったそうだ(図2)。

ここで、日本の果実酒と東欧の果実酒パリンカの違いを簡単に説明する。日本の果実酒の代表は梅酒であろう。梅と氷砂糖を焼酎につけ込んで作るため、どうしても甘みが強くなる。一方、パリンカは洋梨、林檎、プルーンなどの果実そのものを蒸留して作るため、甘みはほんのり残る程度で、果実本来の香りを感じながら、ドライなウォッカを飲む感じでのむことができる(図3)。

さて、なぜ梨パリンカなのか。県東部の佐治や智頭は雪深い山間地域であり、稲作にむいておらず、梨・林檎などの果実栽培が盛んである。近年ではプルーンや洋梨も栽培するようになっている。こうした生業と風土はスロバキア・ハンガリー地域に似ている。鳥取は日本有数の梨の産地であり、全県的に梨を栽培しているが、JAを通して市場にでる商品梨は一部にすぎない。この「分どまり」から外れた「クズ梨」を活用して梨パリンカをつくれないかという発想に至ったのである。
梨ワインについては、すでに製品化が進んでいるが、甘味が強い醸造酒であり、必ずしも高い評価を得ているわけではない。
梨を材料にした蒸留酒(=パリンカ)はこれまで国内で製造されたことは(たぶん)なく、挑戦に値する。二十世紀、長十郎、赤梨、洋梨の「クズ梨」を蒸留してウォッカ/焼酎にすれば、風土性を感じるドライな地酒になるのではないか、という考えに至ったのである(図4)。

ここで、醸造酒と蒸留酒の違いを説明しておく。醸造酒とは、日本酒、どぶろく、ビール、ワイン、シードル等の総称である。材料となる米、麦などの材料に麹をまぜて糖分を発生させ、そこに酵母(イースト)を加えることで、糖分がアルコールと二酸化炭素に分かれて発泡性の醸造酒となる。糖分が高ければ高いほどアルコール度数が高くなる。
蒸留酒とは焼酎、ウィスキー、ブランデー、グラッパ、ウォッカ等の総称である。醸造酒を蒸留してつくる。蒸留とは、水の沸点が100℃、アルコールの沸点が78.3℃である温度差を利用する。醸造酒を煮沸し90℃9前後に保つと、アルールだけが気化する。それを冷却して液化すると、濃度の高いアルコールが抽出され、蒸留酒となる(図5)。【ゆずまる】
