パリンカの夢(12)


産業技術センターでの蒸留実験
6月26日、曇り。比較的涼しいお日柄です。若葉台にある鳥取県産業技術センター(地方独立行政法人)を訪問しました。
初めて蒸留器を目の前にして3年女子3名は興味津々。こちらが用意した市販のシードル、甘酒などを担当者のNさんに蒸留していただきました。若干予習はしていたので、蒸留器の仕組みはわかっていましたが、ブクブクとお酒が沸騰して気化し、それが蚊取り線香のような管を伝ううちに冷却され、試験管に雫をぽたぽた落としていく様に目を瞠りました!


1回目の蒸留実験では、シードル等果実酒は200ml、量が不足気味の奄美黒糖甘酒は110mlをフラスコに移し、試験管に少量のアルコール分が抽出された段階で火をとめました。アルコールは低い温度で早めに気化するので、時間をかけても蒸留水が増えるばかりで、アルコール濃度が低くなってしまうからです。以下、1回めの基礎データです。
①シードル(200ml) → 24ml抽出 アルコール度数12.4%
②ナシードル(200ml) → 30ml抽出 アルコール度数18.0%
③甘酒110ml → 5ml前後の抽出 量が足りず度数測定不能

もう少し詳しいデータがほしいので、再度蒸留をお願いし、承諾していただきました。以下、2回めの基礎データ。
①シードル(200ml) → 20ml抽出 アルコール度数12.9%
②ナシードル(200ml) → 23ml抽出 アルコール度数19.4%
③甘酒(1回めとの合計で230ml) → 12ml抽出 アルコール度数17.4%


↑冷却抽出 ↓度数計による計測



一般に蒸留酒はアルコール度数が25~55%程度なので、このたびの蒸留ではそこまで高濃度の蒸留酒を得ることはできませんでした。これについては、醸造酒そのもののアルコール度数を高める必要があります。醸造酒前の果汁もしくはモロミ段階において糖度を高める必要があり、さらにまた蒸留を2~3回繰り返す必要があるようにも思います。また、200mlの醸造酒を沸騰させて20ml前後の蒸留酒が得られるわけですから、商品化するためには、かなりの量の醸造酒が必要なことがわかりました。


それぞれ試飲もさせていただきました。以下、蒸留後のお酒について、女子3名と先生の率直な感想です。
①シードル蒸留酒
林檎の香りがする(あやかめ)
軽く飲める(ゆずまる)
少し甘みがある(小次郎)
林檎の香りがするイイチコ(ケーシー)
②ナシードル蒸留酒
日本酒みたい(あやかめ&小次郎)
梨の香りはない(ゆずまる)
やはりイイチコに近い。梨の香りは林檎ほどではないが、わずかにある。(ケーシー)
③奄美黒糖甘酒蒸留酒
香りがキツい(ゆずまる)
ピーナッツみたいな香り(あやかめ)
後味がキツイ(小次郎)
癖は強いが地酒らしい風味がする(ケーシー)
他にも研究機関ならではのアドバイスもいただきました。蒸留器の使い方、酵母の種類、他の酒造所の情報などなどについてですが、とくに重要だと思ったのは蒜山ワイナリーでグラッパを製造しているという情報です。訪問が叶うか否か。それはさておき、やはり実際に本物を見るのは本やネットで調べる以上の収穫があり、実り多い一日になりました。(ゆずまる)

↑研究室外の廊下に展示してあったライバル?商品。左から、梨吟醸酒、梨ワイン、梨リキュール(2本)、蜂蜜酒(2本)