狛犬コレクション(1)


倉田八幡宮の狛犬
倉田八幡宮には叢林・大イチョウなどの天然記念物や麒麟獅子舞(無形民俗文化財)が国や自治体の指定を受けているものの、社殿建造物などは近代の作らしく、有形文化財として指定・登録にあたいするものはないのか、ざっと観察したところ、狛犬が摩耗して古めかしくみえた。
大雲院所蔵懸仏研究の残像なおあざやかなこのごろ、向かって左側の一角を有するものが雄の狛犬、右側が無角の雌の獅子というイメージを強く抱いていたのだが、調べてみると、日本において獅子が角をもつようになるのはどうやら平安時代からで、中世から簡略化が進み、とりわけ昭和以降は左右ともに無角のものが過半を占めるようになった。とすれば、倉田八幡宮の狛犬は建造物と同じ近代のものとみればよいのかもしれないが、それにしては一部の石獅子の摩耗が激しすぎる。
さて、角がなくとも、雄と雌の区別はつく。一般的に、向かって右側の獅子は阿形(あぎょう)で口を開き、左側の狛犬は吽形(うんぎょう)で口を閉じている。倉田八幡宮には3列6体の獅子が設置されており、以下、簡単に紹介しておこう。



1.拝殿脇の狛犬
上は拝殿脇左側の吽形。角はないが、原則どおり、口を閉じる。目は凹む。下は阿形。わずかに口を開ける。口内に舌のような表現あり。目は凸る。雄雌とも尾が大きく縦に屹立し、股間にいっさい表現なし。






2.結界脇の狛犬
神門と拝殿中間に渡された結界の左右にも狛犬を配する。上は左側の吽形(雄)。角なし。口を閉じる。下は阿形(雌)。わずかに口を開け、口内に舌の表現あり。拝殿脇の獅子より、心なしか厳しい顔をしており、尻を突き上げて威嚇の姿勢をとる。股間に表現なし。しかしながら、拝殿脇と結界脇は同一の作風であり、同期の製作か。




3.神門脇の狛犬
神門脇の狛犬だけは作風が異なっている。摩耗も激しい。製作年代が若干遡る可能性があるかも?


上は右側の阿形(雌)。口を閉じた大人しい獅子だ。下は吽形(雄)。口を開き、下で玉を転がしている。しかも、胸元に子の獅子を抱え、子の獅子は右の前足で玉をおさえている。
中国の場合、阿形(雌)が玉取り(左前足で玉をおさえ、吽形は右前足で子を抑える。これが原型だが、日本では阿吽のいずれかが玉を加え、さらに右前足で子獅子を押さえる例が少なくないという。
鳥取ではどうなのか、エクササイズの際にぼつぼつ調べてみよう。

