飛行船
飛行船とは、細君が大学時に在籍したサークルの名前である。飛行船に乗れるわけではなく、日本のあちこちを旅してまわる男女のグループであった。彼女はこのサークルで恋に落ちた。独身時代、ずいぶんその話を聞かされた。聞けば聞くほど、自分の片想いを思い知らされるわけだが、恋愛とは不思議なもので、これだけ気の短い男が辛抱強くなる。恋は魔法だ・・・
春ごろから飛行船の同窓会が開催される通知が届いていて、もし彼女が参加するとなれば、送迎役を務めねばならないので、私自身が連絡役をかってでた(彼女は右手で文字が書けない)。幹事役の方にお願いしたのは、「ともかく電車の乗り換えで手間がかかるので、大学近辺よりも、難波か梅田がありがたいです(大学近辺でもなんとかしますが)」という厚かましい内容で、これには幹事役さんもお困りになったらしい。難波や梅田は便利なところで、お店も多いが、なかなかツテがなく、探しあぐねたそうだが、6月になって以下の通知が届いた。
日 時: 7月16日(日)PM3時~PM6時
場 所: 中国料理「桃谷楼」ルクア大阪店
大阪市北区梅田3-1-3
ルクア1100(イーレ)10F
JR大阪駅中央口徒歩1分
ルクアという高層ビルは大阪駅前の新名所のようである。10階がレストラン街で、3時前に到着すると、8割以上の店の前に行列ができている。桃谷楼の前でうろうろしていると、まもなく男女の幹事があらわれた。細君の体のことをすぐに気遣ってくださった。女性の方は、結婚式の会場でお会いしたことがある。35年前のことである。お互いお腹に目をやった。わたしが3時間も会場の外で待機することを気にしておられるので、
「大丈夫ですよ。この人には、風俗にでも行ってくる、と言ってありますから」
と答えたが、笑いには変えられなかった。しかし、大阪で風俗なんか行ったりすると、地元のクラノスケだけでなく、カヤマやヘイケやノビタが遠征してきている可能性さえあり、ばったりなんて洒落にもなりませんからね。
春ごろから飛行船の同窓会が開催される通知が届いていて、もし彼女が参加するとなれば、送迎役を務めねばならないので、私自身が連絡役をかってでた(彼女は右手で文字が書けない)。幹事役の方にお願いしたのは、「ともかく電車の乗り換えで手間がかかるので、大学近辺よりも、難波か梅田がありがたいです(大学近辺でもなんとかしますが)」という厚かましい内容で、これには幹事役さんもお困りになったらしい。難波や梅田は便利なところで、お店も多いが、なかなかツテがなく、探しあぐねたそうだが、6月になって以下の通知が届いた。
日 時: 7月16日(日)PM3時~PM6時
場 所: 中国料理「桃谷楼」ルクア大阪店
大阪市北区梅田3-1-3
ルクア1100(イーレ)10F
JR大阪駅中央口徒歩1分
ルクアという高層ビルは大阪駅前の新名所のようである。10階がレストラン街で、3時前に到着すると、8割以上の店の前に行列ができている。桃谷楼の前でうろうろしていると、まもなく男女の幹事があらわれた。細君の体のことをすぐに気遣ってくださった。女性の方は、結婚式の会場でお会いしたことがある。35年前のことである。お互いお腹に目をやった。わたしが3時間も会場の外で待機することを気にしておられるので、
「大丈夫ですよ。この人には、風俗にでも行ってくる、と言ってありますから」
と答えたが、笑いには変えられなかった。しかし、大阪で風俗なんか行ったりすると、地元のクラノスケだけでなく、カヤマやヘイケやノビタが遠征してきている可能性さえあり、ばったりなんて洒落にもなりませんからね。
行列のない店を探すと、そこは蕎麦屋だった。ジムビームのハイボールを注文して喉を潤し、ザル蕎麦一枚。これで15分しか経っていない。店を変えようとも思ったのだが、すでに酔いがまわっており、なんとなくもう1杯飲みたくなり、腹は全然減っているので、こんどはカレー蕎麦を注文した。気持ちよく飲んで食べて、そして酔っぱらって、椅子に坐ったまま眠りに落ちた。その十分後、店員に起こされ、やんわりと退店を促された。
それから9階に下りて、スタバと複合して設けられている書店「蔦谷」内の休憩スペースに陣取った(1時間500円)。パソコンの電源が弱くなっていたが、延長コードまで用意してあり、ここでは結構働いた。授業の準備やパワポの修正などおおいに進んで、気がつけば6時である。10階にあがってベランダの椅子に腰掛け風に吹かれていると、電話がなり、先の女性幹事さんが細君をベランダまで連れてきてくれた。お互いの腹を見合いながら、再び少々雑談し、細君を連れてその場を離れ、エスカレータでJRと同じ階まで下がっていった。
細君はあまりお酒を飲まなかったようだ。元彼の前でしおらしくしていたにちがいない。しかし、同窓会の前日と翌日は少々ナイーブになっていて、ひょっとしたら想うことも多かったのかもしれない。機嫌のよくない時間がないこともなかったが、それはわたしが麻雀ゲーム「極」に熱中していたからだと彼女は言う。なにが真実なのか、本人以外分かるはずもないが・・・
それにしても、ルクアをはじめとする大阪駅周辺の喧噪には辟易した。大都会にはついていけない。田舎者には無縁であるべき場所だと思う。
それから9階に下りて、スタバと複合して設けられている書店「蔦谷」内の休憩スペースに陣取った(1時間500円)。パソコンの電源が弱くなっていたが、延長コードまで用意してあり、ここでは結構働いた。授業の準備やパワポの修正などおおいに進んで、気がつけば6時である。10階にあがってベランダの椅子に腰掛け風に吹かれていると、電話がなり、先の女性幹事さんが細君をベランダまで連れてきてくれた。お互いの腹を見合いながら、再び少々雑談し、細君を連れてその場を離れ、エスカレータでJRと同じ階まで下がっていった。
細君はあまりお酒を飲まなかったようだ。元彼の前でしおらしくしていたにちがいない。しかし、同窓会の前日と翌日は少々ナイーブになっていて、ひょっとしたら想うことも多かったのかもしれない。機嫌のよくない時間がないこともなかったが、それはわたしが麻雀ゲーム「極」に熱中していたからだと彼女は言う。なにが真実なのか、本人以外分かるはずもないが・・・
それにしても、ルクアをはじめとする大阪駅周辺の喧噪には辟易した。大都会にはついていけない。田舎者には無縁であるべき場所だと思う。