男はつらいよ-寅さんの風景(17)

寅さんは文化庁に先行する
お盆休みは終わりましたが、子どもたちお待ちかねの地蔵盆はこれからです。来たる23日、大雲院(鳥取)も河原町(倉吉)も大にぎわいになるでしょう。
さて、「住まいと建築の歴史」講義の第15回(最終)のテーマは「居住環境と歴史的環境-町家と町並み」であり、中世城下町から近世陣屋町へと展開した倉吉の話を毎年取り上げます。そして、倉吉もまた「寅次郎の告白」の舞台です。城下町内濠の玉川、外濠の鉢屋川はみな映像になっていますが、撮影は重伝建選定(1998)を7年も遡る1991年のことでした。倉吉の町並みを全国的に広報した最初の媒体は映画「男はつらいよ」であり、その点において「寅さんは文化庁に先行する」と評価し、感謝すべきでしょう。
「寅次郎の告白」は倉吉のひろい範囲を映し出しています。玉川周辺は重伝建に選定されて町並みの質はほぼ維持されましたが、鉢屋川周辺は重伝建の候補に何度かなりながら、ついに行政が動くことなく、町並みの歯こぼれが劇的に進んでいます。そして、地域再興の起爆剤として期待された小川記念館だけでなく、鉢屋川沿いの地蔵背面に建つ土蔵等の調査研究も昨年の中部地震以来動きがとまってしまいました。

キリンぐら構想
そんな中で、磯野長蔵記念館の構想が萌芽し始めています。磯野は明治7年(1877)倉吉市河原町に生まれ、一橋大学卒業後、大正8年(1919)に麒麟麦酒株式会社を立ちあげました(詳細は↓右図をクリック)。キリンビールの生みの親が河原町出身なのです。
地蔵背面の土蔵(明治中期)を登録文化財にしようという漠然とした想いが先行し、その活用については具体案が示されぬままでしたが、このたび「河原町の文化を守る会」が正式に「磯野長蔵記念館」の構想を練り上げました。これが実現することを願ってやみません。ただ、「磯野長蔵記念館」という呼称は仮称であるにせよ、硬すぎるので、わたしは以下のような名前が良いのではないか、と思っています。
キリンぐら(麒麟蔵)-磯野長蔵記念館
キリンはビールのブランド名であるだけでなく、県内東部の民俗文化財「麒麟獅子」をイメージさせる名前で親しみがあります。一方、「くら」は倉吉の「倉」、土蔵・酒蔵の「蔵」、磯野長蔵の「蔵」に通じており、地域・用途・由来等を表現する最良の文字だと思います。自画自賛の独断的命名ですが、参考にしていただければ幸いかと・・・


*「男はつらいよ-寅さんの風景(16)」は こちら に引っ越しました。