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続・ハ地区の進撃(7)-第6次ブータン調査

0911ガキ家02 0911ガキ家01


マチェナ村ガキ家

 9月11日の昼食後、午前に調査したケザン家の遠い親戚にあたるマチェナ村のガキ家を調査しました。民宿のすぐ近くにあるので、今年もまたキンレイが案内してくれました。先生、ウキウキです。昨年調査したゾング家は民宿とガキ家の中間にあります。ガキ家は3階建(屋根裏も含めると4階建)で調査が大変だったそうですが、ガキ家は2階建なので少しは楽かもしれません。
 ガキ家はマチェナ村で最も古い民家と伝承されていますが、今でも数名の家族がこの家で生活しているため内部はとても綺麗でした。ガキ家ではケザン家でできなかった内部の平面図を中心に立面図・屋根伏図を採りました。
 オモヤは1階が家畜、2階が人の生活スペース、3階はニンニクや家畜用の草を干す作業場となっています。2階の平面はシンプルで台所タプツァン、控えの間ヨッカ、納戸プー、仏間チェスムと仏間前室チェスム・ヨッカからなります。納戸を除けば四間取りですね。


0911ガキ家1階01 0911ガキ家1階平面図1階平面


 今回の民家調査はとくに仏間の調査が重要な位置を占めます。仏教僧院本堂で禁止されている写真撮影や実測を民家仏間では自由におこなえます。これまで本堂に祀られている神仏の配置や名称をなんとか聞き出すのですが、写真が撮れないので、実体として理解するのに苦労してきました。民家仏間では、まずポラロイドで像や仏画の写真を撮影し、それに黒マジックで名称をしっかり書き込んでから一眼レフ等による撮影をおこなうので、神仏の画像と名称が一対一で認識しやすくなります。
 住居空間の概念を知る手がかりとして、ゾンカ語の「ヨッカ」はとても重要な言葉です。ヨッカは「左(手)」を意味します。世界各地の民族で確認されているとおり、「右(手)」は「左(手)」に優越する概念です。前者が優位、後者が劣位に値し、そのことで左は右を補佐する脇役的な位置づけがなされるのです。


0911カマド01 0911ガキ家2階平面 2階平面


 ブータン民家の場合、入口に近い2室のうち中心的位置を占めるのが台所兼食堂のタプツァン、その控えの間(つまり脇役のスペース)をヨッカと呼びます。ヨッカは日本的にとらえるならば、居間あるいは茶の間でしょう。奥側の2室は仏間チェスムですが、仏壇や仏画をおく礼拝室はチェスム・ツァンコ(重要な仏間)、その前室(居間の奥)はチェスム・ヨッカと呼びます。チェスム・ヨッカは「仏間の控え室」です。ふだんは寝室にだって使えますが、法要プージャのさいにはチェスム・ツァンコで僧侶が祈祷し、チェスム・ヨッカで家人がお祈りするのです。
 学生が平面図・立面図の作成に苦戦する間、先生は仏間(礼拝室)に祀られている全ての神仏の像とタンカ(仏画)をポラロイドと一眼レフで撮影され、ゾンカ語の名称を書き込まれていきました。そのすべては書き切れませんが、最奥の仏龕には右からバイロチャナ神、ツェバメ(阿弥陀)、グルリンポチェの像を祀っています。これら3像以外はタンカもしくは写真でした。こうした資料は、繰り返しますが、僧院本堂に祀られる諸仏の理解におおいに役立ちます。夕方の資料整理では、ガイドのウタムさんをまじえて、神仏像と仏画について勉強会を行い、そのすべてを録音しました。


0911ガキ家仏間01 0911ガキ家仏間02
↑チェスム・ヨッカからチェスム・ツァンコをみる
0911ガキ家仏間02 0911仏間05
↑↓最奥の仏龕と仏壇 左からグルリンポチェ・ツェバメ(阿弥陀)・バイロジャナ神



0911仏間03 0911仏間ポラ01


科学的年代測定サンプル採取

 9月12日午前。前日やり残した平面図の採寸を終え3階に上がると、ニンニクの香りとともに床に敷き詰められた牧草が目に入りました。軒とケラバの深い大屋根に覆われた3階は、こうした乾燥に用いられる一種の作業場です。
 先生はそこにある珍しい束に目を見張っていました。形が根株状になっているのです。つまり、根本を太く、上端を細く削りだしています。使われている材は赤松ではなく、ブルーパイン(五葉松)。全高は2mぐらいですが、その中間に十字貫の孔が残っています。下右の3F略平面は柱(束)と壁の位置を示すための番付図ですが、こうした根株型の束は棟どおり(B)に4本並んでいます。調査したB⑤位置の材だけ格段と古くみえ、年輪も著しく多い。おまけにホゾ孔まで残っているのですから、あきらかに転用材でして、古いこと間違いなしと判断し、放射性炭素年代測定(ウィグルマッチ)用のサンプルを採取しました。


0912年輪年代01 0912ガキ家3階略平面←3階略平面(番付)


 まずは5年輪ごとにマチ針を打っていきます。初めのほうは順調に打っていけましたが、途中から材の摩耗や傷が酷くなり、マチ針を38本(190年輪)打ったところで作業を断念せざるを得ませんでした。しかし、まだ外に数年輪、内にも100年輪以上確認できます。樹齢300年程度の材と推定されます。年輪サンプルは外から「1年輪」「5年輪」「90年輪」「150年輪」「180年輪」の計4つ採取し、この中から状態の良いものを測定する予定です。データの基礎情報は以下のとおりです。

  材種: ヒマラヤゴヨウ(Pinus wallichiana)  (おそらく)芯持材・心材型
  確認された総年輪数: 190年輪(外側に10年輪程度、ホゾ孔の内側に100年輪以上みえるが測定不能)
  採取した年輪の位置: 外から1年輪、5年輪、90年輪、150年輪、180年輪の5ヶ所
  サンプル採取者: 岡崎&ウタム


0912年輪年代04 0912年輪年代02                                                              
 
 一方、A⑥の位置で版築壁に含まれる有機物サンプルも採取しました。壁の高い位置はあきらかに修復されているようにみえたので、フロアに近い壁の根本部分で探しました。こちらのサンプル採取もウタムさんが担当しました。ウタムさんは作業の手際がよくスピーディですが、学生は緩慢であり、スキルを向上させる必要があるようです。(OK牧場)


0912版築壁01 0912版築壁02
↑版築壁内の有機物サンプル探し(A⑥)

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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