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続・ハ地区の進撃(9)-第6次ブータン調査

170913ブータン田園風景


ジャンカネ瞑想洞穴の測量

 9月13日(水)。名残を惜しみつつ、3日間お世話になったソナムジンカ・ファームハウスを離れました。別れの朝の記念撮影はすでに先生が報告されています。この日はティンプーに向かう途中で、ジャンカネ瞑想洞穴(ハ地区)とドゥブジ・ラカン(パロ地区)を訪ねます。これら2か所は昨年の第5次調査でも訪れていますが、外側から写真を撮影しただけなので、なんとか「調査」らしきものをしたいと思ったのです。
 標高2900mのハから同2200mのパロ・ティンプーまで、大きくスラロームしながら長い山道を下っていきます。車窓に映る風景にうっとりみとれながらゆったりと時間が流れていくのを感じました。高くそびえる山々や深い渓谷、八雲立つ空が段畑や集落と一体になった景色には、なにげに日本との親近性を覚えるのですが、そのスケールの大きさに圧倒されるばかりです。
 その後、立ち寄った街道沿い集落のレストランを間借りし、ソナムジンカでキンレイが準備したお弁当と道中のスーパーで購入したカップヌードルをいただきました。ところが、レストランの衛生状態には少々問題があり、先生は食あたり気味の症状になり、翌日のパジョディン登山にも大きな影響を及ぼすことになります。


170913ジャンカネ


 ジャンカネ瞑想洞穴の周辺には、川沿いにマニ水車(マニコロ)の小屋が建てられ、樹々には五色旗(マニダル)がかけられ棚引いています。豊かな自然と調和した五色の風景によって、なんだか清らかな気持ちにさせられます。ここでスケッチ、高さの測量、周辺の配置図の作成などを行いました。山道を抜けて瞑想洞穴に近づけるかと思いトライしてみましたが、安全を確保できないため断念することになりました。長期間にわたり過酷な瞑想修行を続け、生と死の境に至る瞑想洞穴という場は、生半可なことでは立ち入ることすらできないのだと実感しました。それにしても、ドローンを持ち込めなかったことがつくづく悔やまれます。

 【メモ】 ・高度約2600m。路面からの瞑想場までの高さ約45m。
  ・高さ2mほどの石積壁が3.5mほど離れて2つ並び、その右脇に高さ1mほどの版築壁を1つ確認。
  ・悟りに至る修行ではなく、谷筋に住み着く悪霊の浄化を目的として造営された。本堂のない独立した
   瞑想洞穴。


170913ジャンカネ測量風景 170913ジャンカネ遠景 
↑左)測量風景 右)遠景  ↓左)スケッチ 右)配置図
170913ジャンカネ スケッチ 170913ジャンカネ配置図



170913ドゥブジ・ラカン遠景


ドゥブジ四天王

 つづいてドゥブジ・ラカンです。ドゥブジ・ラカンは中世期に小さな仏堂として出発しましたが、17世紀のドゥク派政権による国家形成期の直前には山城ゾンになっていたそうです。それがシャブドゥン・ガワン・ナムゲルによる天下統一後の行政改革による廃城命令により、再び僧院として蘇ります。正面の楼閣(ウチ)はゾンに特有な高層建築ですが、石垣壁の細部を観察すると、石の配列や色調の異なる部分が見受けられます。日本の城郭石垣と同様に、石積修理の痕跡なのだそうです。敷地奥にある本堂はジェツェン・ラカンといいます。ジェツェンとはカギュ派の宗祖(のひとり)とされる聖人ミラレパの尊称で、このラカンにはミラレパが実際に訪れたという縁起が伝えられています(『ブータンの歴史的建造物・集落保存のための基礎的研究』2000)


170913ドゥブジ・ラカン本堂


 本堂脇の扉には四天王が鮮やかに描かれています。四天王とは須弥山頂上の忉利天(とうりてん)に住む帝釈天に仕え、中腹で仏法を守護します。四天王は東西南北の四方位に対応する守護神で、中国・日本では(東)持国天、(西)広目天、(南)増長天、(北)多聞天または毘沙門天と呼び分けますが、ゾンカ語との対照を以下に示しておきます。

 持国天 - を守護する。ブータンではShar Gap。白い肌。琵琶を持つ。
 増長天 - を守護する。ブータンではLho Gap。青い肌。剣を持つ。
 広目天 - 西を守護する。ブータンではZang Gap。赤い肌。左手で蛇(または竜)を持つ。
 多聞天 - を守護する。毘沙門天とも呼ぶ。ブータンではNub Gap。金の肌。右手に杖らしきもの(傘?)、左手に小動物(マングース)を持つ。チベット仏教では宝石を吐くマングースの伝説が伝えられる。前々日のガキ家でも確認。

 日本における四天王は甲冑を身に着けた唐代の武将を模した姿で表現されますが、ブータンの四天王は日本のそれとはかなり異なった姿をしています。こうした特徴はアジア諸国で広まっており、中国でも古くはこのような姿で祀られていたようです(唐代には現在の武者姿となっており、それが日本に伝えられたと考えられています。

四天王01左上 持国天 Shar Gap
四天王01左下 増長天 Lho Gap
四天王02右上 広目天 Zang Gap 
四天王02右下 多聞天(毘沙門天) Nub Gap


 本堂内部に入ってみると複数の像が祀られていました。写真撮影は禁止されていましたが、中央に聖人ミラレパ、その両脇にシャブドゥンとその祖先ガワン・チョゲルが配され、そのさらに外側にグル・リンポチェと十一面観音(ソンツェンガンポの化身といわれる)が祀られているのを確認しています。(公爵だっしょ)


170913ドゥブジ・ラカン楼閣
↑楼閣ウチは城の中心施設であり、城の中央に配置された。ラカンに改修後は囲壁が切り縮められて外壁側に貼り付いている。門のようにみえるが門ではなく、仏堂でもない。外からみる場合、僧院のランドマークとして圧倒的な印象をもたらしているが、用途上は「雑舎」のような使われ方をしている。

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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