続・ハ地区の進撃(12)-第6次ブータン調査


ブータン民族遺産博物館
9月15日(金)。ブータン最後の日を迎えました。前日のバジョディン登山の疲れが残る中、まずはブータン民族遺産博物館を見学しました。ここでは、伝統的なブータンの住居や民芸品の造りかたなどが見学できますが、最大の目的はブータン焼酎(アラック)の製造過程の見学です。伝統的なお酒造りの工程を学ぶことで、ASALABで進行中の「パリンカの夢」プロジェクトの基礎資料としたかったのです。詳しい工程は続・ハ地区の進撃(4)で先生が紹介されています。
民家の玄関の上とか、屋根の4隅には「フライング・ファルス」を安置したり、壁に大きく描いています。フライング・ファルスとは「空飛ぶ珍々」という意味ですが、男性器は魔除けでもあり、豊穣祈願のシンボルでもあります。ブータンでは神聖なものとみなされているのです。ファルスを祀る文化は世界中で確認できます。たとえば、摩尼山の立岩の近くにも大きなファルスの木彫が岩の上に安置されています。祈祷か魔よけの意味があるのでしょうね。今後、「フライングファルス」を論文のテーマとする学生も出てくるかもしれません。


↑版築壁と開口部の製作行程 ↓フライングファルス


博物館を一通り見終えると手作りの織物が売られているのを発見しました。ここでは伝統的な方法で織られたものを販売もしているそうです。色合いがとても綺麗で肌触りもよく学生一同ほしがりましたが、値段が高く手がでません。ちなみに先生は巧な値引き交渉の末、ポラロイドを撮ってあげることを条件にスカーフを値切ることに成功されていました。


民族遺産博物館の視察を終え、いったんティンプー市街地に引き返して書店で地図や絵本を購入しました(きびたろうだけは日本漫画の英語バージョンを買ってました)。その後、パロまで移動してレストランで昼食。今年は韓国の旅行費優待年だそうで、数十人の旅客は入ってきたのには驚きましたが、別室に押し出されつつ、食事は今回の旅でいちばん美味しかったかもしれません。


ナムジョペリ村 版築壁サンプル採取
帰りの飛行機の時間が迫る中、なんとか一ヶ所版築壁のサンプルを採取したいと探し回り、パロ空港近くのナムジョペリ村で廃屋土壁の採取をしました。上下の写真にみるように、L字型の壁を残すのみです。前後には農家が軒を連ねており、それを田畑がとりまいています。先生は遺構をみた瞬間、そんなに古くないのと察したようですが、時間の都合上ここで土壁のサンプルを採取するしかないと判断しました。土壁は厚みがあるため、スコップで掘り出しなるべく中心に近いところを狙います。
作業を始めてまもなく、背面の民家に住む女性4人が仕事から帰ってきました。4人ともブータンの嗜好品であるドマ(檳榔樹)を噛んでおり、口を真っ赤にさせています。早速話を聞くと、この版築壁は背面側の二棟の農家を新築するにあたって壊した建物の残骸であるとのことです。つまり、いまの住宅の前身建物ですね。先生の予想通り、あまり古い年代は望めません。
話を聞かせていただいたたお礼にポラロイドでスナップを撮り、プレゼントしました。これが好評で、次々に屋敷から女性と子どもが出てきて写真を撮ってほしいと頼まれ、10枚近くフィルムを消費しました。調査もこれで終わるので、どんどん気前よく撮影し、住民にさしあげました。ポラロイドの効果は絶大です。
こうして僕たちのブータン調査はフィナーレを迎えました。帰途、バンコクで悪さもせずに屋台でラーメンを啜り、ホテルで4時間ばかり眠って空港に賭け戻り、台風来襲の一日前に関空に無事着陸した次第です。(OK牧場)


↑サンプル採取位置