デルス・ウザーラ

ゼミでDVDを鑑賞
10月18日(水)。雨が降っていたわけでもないのですが、ゼミは14講義室でDVD鑑賞となりました。日本とソ連の合作映画「「デルス・ウザーラ」(1975)は黒澤明監督の三大傑作と評価されるほど高い評価を得ていますが、シベリアの狩猟民族を主題とするためか日本ではマイナーであり、レンタルビデオ店の棚に並んでいません。こういう場合、何日かかけて取り寄せとなるのですが、レンタル後一週間で返却しなければなりまん。このため急遽18日に視ることになったのです(じつは大学の情報メディアセンターに所蔵されていることが後でわかりました)。私は北方の狩猟民族について勉強しているので、早くから先生に鑑賞を薦められていました。
【ストーリー】 ロシアの軍人アルセーニエフは、帝政ロシアにとって地図上の空白地帯だったシホテ・アリン地方の地図作成の命を受け、探検隊を率いることとなりました。旅程途中から、先住民ゴリド人(ナーナイ族)の猟師デルス・ウザーラが、ガイドとして隊に同行することになります。シベリアの広大な風景を背景に、「自然と人間」 をテーマに取り上げ、キャピタン(将軍)と猟師デルスの交流を描くスケールの大きな作品です。ウィキペディアは、「原始的であるはず」のデルス・ウザーラの生き方は、「文明化された」ロシア人に人生の意味などをシンプルかつ的確に示唆している、と評価しています。

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この映画の主役デルス・ウザーラは、ツングース系のゴリド人(ナーナイ族、中国側ではホジェン族)であり、おもにアムール川下流域に定住する。サケ・マス漁を主生業として川岸の竪穴住居に住むが、気候のよい時期に男たちは狩猟活動に勤しみ、森林の猟場を転々とする。猟師たちは山森に精霊がいると考えている。アニミズムの一種である。信仰、神話伝承、装飾文様などにはアムール川流域で隣接するツングースや古アジア、さらに中国漢族の影響を受けている。デルスは人柄が穏和で、自然の中で生き抜く洞察力と狩猟(銃)の技術・知恵を兼ね備えた人物として描かれています。
ロシア軍の調査団は、デルスの知恵によって何度か命を救われます。アルセー二エフとデルスが湖上で寒波にみまわれたときはデルスのとっさの機転で測量機材をのせる三脚を骨組にして蒲の穂の束で覆い、アルセー二エフは凍死を免れました。また、筏が急流に呑まれそうになったときは、川岸の巨木を伐り倒して急流に投げ込み命綱して陸に這い上がります。


デルスは自然の厳しさをもちろん知っています。そして自分が自然の中の一部として他の生物と助け合うことを当たり前におこないます。このデルスの生き方にロシアの軍人たちは心惹かれていきます。豊かさとはなんなのか? そんなことを考えさせてくれます。

ゼミ生の感想を少々紹介しておきます。デルスの生きるための知恵、自然に対する畏敬の念をひしひしと感じた。悲しい結末に考えさせら れる、などでした。映画「デルス・ウザーラ」は極東少数民族の自然とのかかわり方、知恵、生態、文明化したハバロフスクの社会、人間本来の生活などについて深く考えさせられ、また何度でも見たくなる作品でした。私も北方狩猟民族の世界にさらに惹きこまれました。(ゆずまる)
