男はつらいよ-倉吉長屋物語(2)


五軒長屋の3Dモデルにむけて
11月22日(水)、今年度初めて倉吉を訪れました。山陰道(高速)工事のため鳥取からずっと地道をとおり、交通渋滞まであって、河原町に到着したときはすでに午後4時半を過ぎていました。河原町のMAD AMANOさんとは第2回仏ほっとけ会以来の再会です。種苗店の奥にある食堂で珈琲をごちそうになりました。ありがとうございます。
今回の訪問は、卒論の進捗にあわせて、「寅さんの風景」の倉吉版再現撮影とフォトスキャン用の多重撮影を目的としていましたが、午後から雲行きが怪しくなり、一部のメンバーを研究室に残して町並み選抜組での予備調査的なものになりました。

雨の中まず八橋往来を歩きました。町並みは「河原(かーばら)宿」並みに劣化しつつあるように感じました。河原町(かわらまち)のかーばら化が進んでいる。そんななかで、小川酒造本宅とその対面の五軒長屋はあきらかに八橋往来の町並みの核であると再認識されました。長屋の取り壊しは相変わらず実行待機状態のようであり、最悪の事態を想定し記録保存としてフォトスキャンによる3Dモデルを作成しようと現場に乗り込んだのですが、あいにくの雨で多重撮影できませんでした。しかし、撮影の範囲を決めることはできました。五軒長屋だけでなく、その周辺2軒程度までは撮影し、再現可能にしておこうと決めました。そもそもこういう仕事は、取り壊しを構想している市教委文化財課がおこなうべきですが・・・なんの動きもありません。私たちが作業を急ぐ以外にありません。


小倉家土蔵の現状
一方、この地区のもうひとつの景観の核である五叉路と鉢屋川流域については、やはり被災した旧小倉家の土蔵が目につきました。屋根にはブルーシートを被せ、白い壁の一部は崩落したままです。この場所の問題を簡単に振り返っておきましょう。五叉路の辻に建つ東地蔵はコミュニティ祭礼の中心としていまも活き活きと機能しています。その背面にあたる小倉家土蔵を駐車場にする構想が一年半前に浮上しました。その際、「河原町の文化を守る会」と所有者の間で協議がなされ、登録文化財申請に向けて主に今の4年生が3年時に調査を開始しました。しかし、昨年10月21日の県中部地震のため活動が頓挫していました。ASALABは、毎回講演会等で募金活動を続けています。登録文化財申請の活動は地震以来中断していましたが、今年の夏休みころから再開しており、先生は会長さんに申請を急ぐよう繰り返しお願いされていました。現在、「河原町の文化を守る会」が構想中の磯野長蔵記念館を実現するためにも、登録文化財申請を急がなければなりません。会長さん、よろしくお願いします。
小倉家・大鳥屋を中核とする町並みも、もちろん重要なフォトスキャンの対象地であり、大鳥屋からさらに鍛冶町の茅葺民家群までを範囲として想定しました。


↑見学 ↓寅次郎の告白(00:46:32)

鳥の杜
旧小倉家に隣接する大鳥屋さん(IJU大学)はご不在でした。最近、白壁土蔵群に支店?を出されたと聞いて、あとで確かめたところ、それは魚町の「旧山市洋服店」でした。旧山市洋服店は研究室の先輩たちが2010年に調査され、昭和レトロカフェへの転用案を示されました。その実測図と基本構想に基づいて、所有者が一級建築設計事務所に実施設計を委託され、2012年に「あかり舎 cafe」として開店したのですが、紅茶通にとって鳥取の紅茶が美味しいわけはなく、先行き苦しいだろうと予感していたところ、果たしてまもなく閉店。その後、みやげ物店に転じていましたが、そこもまた閉店となって、いまは大鳥屋=IJU大学の管理運営する「鳥の杜」となったのです。重伝建というブランドもってしても飲食店の経営は難しいと思い知らされる事例であり、ジャズ喫茶を構想中の先生も慎重に構えざるをえないと思われたようです。


↑(左)鳥の杜 (右)環境大OBが経営する陶芸品店

↑見学 ↓寅次郎の告白(00:44:16)

寅さんの風景-倉吉篇
上方往来河原宿を主題とする「寅さんの風景」講演は成功裏に終わり喜んでいるわけですが、倉吉の河原町を主題とする「寅さんの風景」についても思いをめぐらせています。その端緒に数枚の視察を試みようと乗り込んできましたが、ごらんの天候です。撮影予定場所は、鉢屋川を含む五叉路、茅葺の鍛冶屋「ひろせや」、加治町の三角地に立つ八百屋跡、玉川の白壁土蔵群などでしたが、撤去された八百屋跡地のみ人物を入れた写真を撮りました。大鳥屋の対面で、今は角地にプレハブが建つのみ。あの可愛らしい八百屋が懐かしいね・・・

↑見学 ↓寅次郎の告白(00:46:50)

倉吉の「飛鳥」
夕闇に紛れ、玉川地区をぶらぶらしました。鉢屋川が城下町の外濠であったのに対し、玉川は内濠で打吹山(城跡)に近接しています。近年、看板建築の修景が盛んにおこなわれており、そのひとつをたずねると、環境大学環境デザイン学科2期生の方がUターンで3年ほど前から陶芸品などを陳列販売する雑貨屋を経営されていました。八代地区で陶芸教室も行っているそうです。その後、恒例の清水庵をめざしたのですが、最近夜は閉店していることがわかりました。結果、近接する「飛鳥」を訪れました。大正初期に建築された「旧斉木陶器店」を修復・改修したものです。会長さんによれば、建築写真家の三沢博昭さんが日帰り予定を一泊に変更して撮影したという伝説のお宅だそうです。鳥取の「飛鳥」は閉幕し、倉吉の「飛鳥」が軌道にのり始めたみたいですね。
帰りには、薄皮にあんこがぎっしり詰まった鯛焼を買っていただき、大満足の見学となりました。あいにくの雨で気温も下がり、予定の調査は行えませんでしたが、倉吉の古い町並みや保存のために活動している方々と接することができて良かったです。(パディ&小次郎)



日本料理「飛鳥」(旧斉木陶器店) *大店会の隣です
倉吉市魚町2538 ℡0858-24-5575 https://hitosara.com/tlog_31004170/map.html