稲常の町並み(6)


門の形式分類
12月20日(水)、今年最後の合同ゼミになりました。前週から、稲常の町並みデータベースを修正しているのですが、やはり城下町や宿場町の町家とは違い、民家(農家)の場合は違う要素が入ってきます。表どおりに面するものとしては、とくに土蔵や長屋の有無と棟数、門の形式が重要です。今週はまず門の形式を演習室でおさらいし、以下の5タイプにわけることにしました。
棟門・腕木門(木戸門)・薬医門・四脚門・長屋門
上の図は左側4タイプを模式化したものです。

先生のミニ講義のあと、4年2名+3年2名の計4名で久しぶりに稲常を訪れました。稲常は豪農の集落であり、武家屋敷の要素を受け継いだ大型の農家が軒を連ねています。土蔵は高大で数も多い「分限者」ばかりです。門も通常なら腕木門程度のところが多いのですが、ここでは武家か社寺かにみまがうほど立派な門構えのお宅が少なくありません。しかし、形式の差異は微妙です。写真や立面スケッチをみているだけでは判断し切れないものばかりなので、現場訪問となったのです。ところが、いくら女子学生と雖も、なかなか門を内側から見ることはできません。敷地内にお邪魔するのははばかれるのでギリギリのラインで撮影させていただきました。傍から見ると不審者に・・・(笑)
上は長屋門の一種ですが、門のみの構造形式は棟門です。棟門の場合、2本柱だけで建つので、構造的には不安定であり、両側を土蔵や長屋の壁でサポートする必要があります。
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上は腕木門です。薬医門と似ていますが、控え柱が梁に達しません。控え柱の頭は宙に浮いているので、いわば主柱のフライング・バットレス(カヌーで言えばアウトリガー)ということになります。
上は四脚門です。民家に四脚門とは驚きですね。江戸時代なら贅沢禁止令が出されていたはずですからありえないと思います。近代の作と考えるしかないのではないでしょうか。四脚門の場合、文字どおり4本柱で屋根の重みを受けるのですが、扉のラインは梁間の中間となり、柱筋ではありません。そこに立つ壁付の柱は方立のようなものです。
今回の調査で門の形式分類は終わったので、今後は建物保全度・景観貢献度のクロスチェックを行いたいと思います。寒い中お疲れ様でした。来年も頑張りましょう! (ぱでぃ&あやかめ)

