登録記念物-摩尼山の歴史性と景観の回復(12)

鷲ヶ峰の鐘楼
鷲ヶ峰の地蔵堂と直交関係をもって基壇上に建つ鐘楼は素朴な構造をしている。写真から看取できる構造形式・細部様式を以下にまとめる。
鐘楼: 方1間 切妻造桟瓦葺平入 四面開放
内転びのある角柱に腰貫・飛貫を通し、柱頭部は梁(虹梁型頭貫か?)、桁の順に載せて固める。古式な折置組である。礎石建の土台なし。小屋組は束立。棟木と軒桁に垂木をわたし、妻飾の破風板で隠す。おそらく野小屋のない化粧屋根裏で、屋根勾配は5/10前後、軒の出は1.5尺ばかり。人間との対比からみて、柱高は3,000mm前後か。

基壇上の遺構と古材
基壇上には4基の礎石が残っている。礎石は450mm×550mm程度の自然石であり、平らな上面の中心部分に45mm角の孔をあけている。これは柱下端に削り出したホゾ(枘)を納めた孔であろう。4つのダボ孔から平面寸法が復元できる。
鐘楼平面寸法: 桁行3,090mm(10.2尺) × 梁間2,970mm(9.8尺)
手測りの誤差を考慮するならば、復元設計においては10尺四方でよいかもしれない。なお、4基の礎石の北側に小さな自然石が2基露出し、上に木材を横たえているが、これらは鐘楼そのものとは関係なく、後述するように、三十三観音石仏覆屋の柱礎石の可能性があるだろう。
下の図にみるように、礎石の上面・周辺にはあわせて8本の角材が姿をとどめている。これら8本はA群(4本)とB群(3本)に大別できる。





A群: 4本の角材。長さは2,630mm(8,76尺)、2,665mm(8.80尺)、2670mm(8.81尺)、2680mm(8.84尺)を測る。断面は3材の採寸をしており、180×205mm(5.9×6.8寸)、186×200mm(6.1×6.6寸)、189×210mm(6.2×6.9寸)を測る。手測りの誤差、木材の収縮・磨耗を考慮するならば、柱高は9尺(2,727mm)、断面は6.0×7.0寸に復元すべきか。柱の側面に腰貫と飛貫の貫孔を2段に残すので、柱材とみてよかろう。貫孔は70×120mm程度のものと90×220mm程度のものがあり、両者は背違いになっている。古写真をみる限り、おそらく後者が梁行方向の貫、後者は桁行方向の貫を納めたものであろう。柱底面は磨耗が激しく、削り出しのホゾを残すものは一例のみである(↓)。

B群: 3本の板状の材。長さ3~4mに及ぶ。この長さにふさわしいのは棟木と2本の軒桁だが、そうであるならば角材の断面を有するはずである。板丈の貫とみるのが妥当かもしれないが、4m材は長すぎる。
以上、分かる範囲で寸法を復元しておこう。1尺=303mmとして、
鐘楼復元寸法: 方1間=10尺四方。柱高9尺、同断面6×7寸。
これ以外の細部の寸法は類例に頼るほかないが、次回にまわす。【続】



↑鷲ヶ峰鐘楼復元図ラフ *屋根はもう少し緩いね。