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サテンドール(ⅩⅩⅦ)

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サテンドール

 仏の世界がノエル一色に変容していた年末の22日(金)、わたしは夜の出雲駅前を徘徊していた。駅前の大通りはイルミネーションでキラキラきらめき、真っ赤なベンチコートを羽織った私はさながらサンタさんである。駅前からとぼとぼ歩いて右を振り向くと「サンロードなかまち」のネオンが目に入る。撤去された倉吉のアーケード商店街とよく似ている。おそらく昭和30年代後半ころ街中にできた「横のデパート」で、中に入ると、看板建築がべったり軒を連ねている。寒々しいシャッター通りのところどころに大型の町家が残っている。アーケードをよくみると新しく更新されている。倉吉ではアーケードを撤去して看板建築を修景し町並みは古風になって重伝建地区の拡張域に選定されたが、出雲ではアーケードをモダンに建て直すことで老朽化に対処したのである。


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 「サテンドール」という名のジャズ喫茶を探していた。ホテルから電話して、このアーケード内にあることは分かっていたのだが、それらしい建物をみつけられないでいた。再び電話して訊ねる。指示に従い、すこし後戻りして、なんとか店の扉をみつけたのだが、果たしてそれは、さきほど凝視していた大型町家の隣にあった。なんのことはない、町家に神経が集中しすぎていたのである。灯台もと暗し。あとで聞いたところ、この大型町家は造酒屋の主屋であるという。翌朝ひやかしてみたのだが、地酒は高くて手がでなかった。


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 サテンドールの扉をあけると、西洋人が一人カウンターに腰掛け、静かにグラスを傾けて音楽を聴いていた。出雲には大学の医学部があるからね。大学関係の人なのかな、と想像を逞しくしたが、真実がどうなのか、もちろん知る由もない。酒を選ぶ。最近はもうハイボールばっかり飲んでいるので、いちばん安い酒を選んで炭酸で割ってもらった。デュワーズの12年。初めての酒だ。なかなか美味しい。


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 西洋人が席を立つのを見計らって、おもむろにカメラを取り出し、レンズを覗く。シャッターを押したところで、SDカードが抜けていることを知った。さきほどホテルでパソコンに突っ込んだんだ。あぁぁ、近くのローソンまで自ら使いっ走りさ。1,080円で8ギガのSDを仕入れ、店に戻ってデュワーズの12年をもう一杯。だれもいないので、思う存分写真を撮らせていただいた。
 町家の隣にあることから予想されるように、このジャズ喫茶は土蔵を改装したもので、小屋組がよく残っている。松江の常乃屋のように、2階の床を残していない。スピーカを置く部分以外は吹き抜けにしている。こういう建物では暖気が上に集中するのだが、屋根裏の扇風機が空気をうまいこと拡散している。


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 大型のスピーカーを備えているものの、LPをかけずに、DVDを壁に映し出す特殊なジャズ喫茶であり、少々拍子抜けしないわけでもない。最初はエレピを弾くビル・エヴェンス3のDVDが壁に流れていたが、まもなくアコースティックなビル・エヴァンスに変わった。漠然とした記憶しかなくなっているので、音源は定かではないが、いまネット上で資料を散見した限りでは、

  JAZZ625 ビル・エヴァンス I&II (1965録音)

ではないかな。ラファロとのファースト・トリオではなく、ゴメスとのラスト・トリオでもなく、両者の中間期の編成で、ベースはチャック・イスラエル、ドラムスはラリー・バンカー。なかなか評判の良いモノクロDVDのようです。


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 ロンドンパブ風の酒の揃えかたもジャズ喫茶としては例外的な方でしょうね。さすがノエルの金曜夜だけあって、あとから続々とお客が入ってきた。大学の研究室風の集団もいれば、夫婦か恋人らしきカップルもいる。ちょっとお洒落な二次会の会場になっていき、正直あんまり静かに音楽が聴けなくなってしまった。撮影もできない。蝶ネクタイをしめたバイトらしき若者はひっきりなしにカクテルをつくる。マスターは奥の厨房でツマミを作っている。この点、出雲のサテンドールは鳥取のカナイチヤに似ている。LPレコードを放棄して、おそらくさほどPAに拘っているわけでもないだろう。「メニューは少なく、音源と音響の質を高くして」というジャズ喫茶の原則を大きく逸脱することで、店は客で賑わっているんだ。先代から20年以上続いているというわけだから、まさに「持続可能」な経営を実現したことになる。


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 さて、自分でやるとなったらどうだろう。大型のTVを用意して、稀にDVDやユーチューブを流すのはわるくない。ただ、この酒の数量はしんどいな。やはりメニューはシンプルにしたい。珈琲、チャイ、ビールに乾き物のつまみ。これがベースで・・・ライムを浮かべたスパークリング・ソーダならありかも・・・それにウィスキーを混ぜればハイボールか・・・こんなところが限度でしょうね。

 酒をカルヴァドスのロックに変える。アップル・ブランデーもおいしいね。そして、最後はグラッパにした。アテは「カマンベール・アップル」と「えいひれ」。すべて美味でした。美味であることは持続可能な経営の根幹だと思います。

 最後は店を変え、駅前の「ほしえん」で割子を一人前。昼はざる、夜は割子の蕎麦三昧。生まれてきてえかったぁ!


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↑カルヴァドス   ↓グラッパとえいひれ
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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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