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サテンドール(ⅩⅩⅧ)

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ウェザーリポート

 翌23日のイブイブ、大根島での仕事を終えホテルに戻ると、まもなくYカメラマンがロビーまでお迎えに来てくださった。じつは前日もYさんの会社を訪ねていた。学生のことで御礼を申し上げ、我らが自慢の「梨美子」を2本ばかりお歳暮したのだ。
 ホテルに近い「茜どき」という居酒屋で夕食をともにした。茜どきは典型的なチェーン店ではあるけれども、なかなか美味しいし、値段もリーズナブルだ。お目当ての「ウェザーリポート」は午後8時開店なので、かなり時間がある。のんびり語らうしかない。二人は個室で密談に熱中した。ジャズ喫茶に係わる構想を語り合ったのだ。というか、わたしのアイデアを披露したところ、カメラマンはおおいに賛意とやる気を示された。


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 我がジャズ喫茶は営利を目的としていない。老後のいきがいの場としたいのである。自分を取り戻すための場所だと言い換えてもいい。若いころから集めたLP、カセットテープ、CDなどを同好者で持ち寄り、少々高級な音響器機で聞いてもらう・・・話は徐々にもりあがっていった。
 8時が近づいて、いざ出陣。8時をほんのわずかばかり過ぎた時間にウェザーリポートに到着したのだが、すでに満席に近かった。この春に復活して、金・土の夜しかやらない特殊なお店であり、なにぶんノエルな週末だからね。端席に滑りこめたのはラッキーだというほかない。そこでケーキセットを注文した。珈琲に手作りケーキがついて千円、お酒類はおつまみ付き500円だから決して高くはない。ケーキセットを注文してしばらくすると、正面最前列中央の席に移動するよう指示があった。その席を予約していた客がキャンセルしたからだという。かくして、わたしたちはいちばんよい席でLPのジャズを聴く幸運に恵まれたのだった。


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 ここまでしてもらって誠に申し訳ありませんが、わたしはスピーカーから出てくる音に違和感があった。なにやら硬いのである。ピアノもホーンも音が立って融合していない。一関の「ベイシー」で味わえるような、人間らしいライブ感がここでは体感できないと思った。LPは本田竹曠、デクスター・ゴードン、ウィントン・マルサリスと続いて、恥ずかしながら少々飽きてきてしまい、ケーキと珈琲もたいらげたので、一時間ばかりで席を立つことにした。同じ音響で同じ音楽が流れていたとしても、条件さえ変われば長居できないわけではないのだが、なにぶん椅子の配列がコンサートホールのようになっているのが窮屈で仕方ない。椅子がすべてスピーカーを向いている。こういうお店も珍しいんじゃないでしょうかね。
 一関の「ベイシー」もたしかにスピーカー向きの椅子配列で、おしゃべりがしにくいようになっているけれども、流している曲について主人がいちいち解説したりしない。アルバムジャケットを棚にかけるだけで、片面終わったら次のアルバムにさっさと変えていくだけ。「ウェザーリポート」はLPを演奏者とする解説付きのコンサート会場であり、こういう音楽至上主義の姿勢はちょっと肩が凝りますね。もうちょっと気楽におしゃべりできないものでしょうか。ジャズを完全に鑑賞の音楽芸術としてしまっていいのかな、という疑問が湧いてきて、それは主人の方針によるものだから、わたしたちが外野からとやかくいうことではないのだろうけど、仮に自分が運営する側にまわった場合、こういうふうにはしたくないな。ジャズ喫茶は大騒ぎしたり、はしゃいだりする場ではないけれども、個人の趣味としては、やはり癒しの場にしたいし、わずかな時間でも自分を取り戻せる空間にしたいと思う。


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 なんていいながら、席を立ったことをじつは悔やみましてね。店を出ようとした瞬間にダイアナ・クラールのボーカルが始まった。たぶんクリスマスソングズじゃないかと思うんだけど、坐りなおすわけにもいかないし、出口のあたりで立ったまましばらくハスキーな歌声を聞いていました。去り際は去り難し。後悔と反省の日々を過ごしております。


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↑音響室  

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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