民家のみかた 調べかた(6)

古民家カフェの平面を復元する
ブログの担当者が体調を崩してしまい、レポートが遅れました。
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12月19(火) 。前週、現場で描きつなげた古民家カフェの平面図を当初の平面に復元する作業を4409演習室で各自おこなった。まず先生が手本を示された。復元図作成のコツは、まず変化のない部屋を描きあげ、痕跡等の証拠にしたがって他の部屋を当初に戻していくようにうることである。現在、カフェ黒田の一階は二つのゲンカン、ヒカエノマ、オクノマ、二室縦並びのイマ、ブツマ、ナンド、たてものをぐるりと囲むエンで構成されていて、大正(以前)の建築を昭和に移築したものと推測される。最も変化が少ないのはオクノマの八畳座敷である。
【オクノマ】 格式ある書院造の八畳客間で、奥に棚と床、その脇に平書院を伴う。背面とナンド側側面に建具はなく、今も昔も壁で隔てられている。
【ヒカエノマ】 オクノマの手前にある四畳間。現在ブツマとして使われているが、かつて仏壇はヒカエノマの裏側にあった。ヒカエノマをおくため、間取りは四間取りではなく、間口のひろい六間取りになっている。オクノマとは続き間になっており、宴席などで一体に使うことができる。オクノマとヒカエノマのみ長押をめぐらせる。
【ゲンカン(式台)】 玄関は2室ある。土間の玄関と畳敷きの玄関で、後者はヒカエノマと続き間になっている。いわゆる式台から貴賓客を迎える部屋であり、移築前は板間であった可能性もあるだろう。現在観葉植物が置かれている縁境の敷居・鴨居に三本溝が残るため、ここには障子が3枚入っていたと推定される。
【ゲンカン(土間)】 端の土間部分もゲンカンと呼んでいる。この土間はスド(簀戸)を介して奥の土間に連なり、トオリニワとなっていたが、今はスドより奥をフローリングのモダンなキッチンに改装している。当初は土間であり、カマドをおいていた可能性が高い。
【カミサンノマ】 キッチンとの境にカウンターをおいて洋室の客席としている部屋はカミサンノマと呼ばれている。実際、大きな神棚を鴨居の上に祭る。カウンター上の鴨居に三本溝の痕跡が残るので、土間境は三枚板戸であり、移築前は炉を切る板間であった可能性がある。古いタイプの民家では、式台の間からイロリ間まで通しの板間とし、ヒロマと呼ぶ。カミサンノマに連続するツノヤ(角屋)は移築の際、増設された。
【ブツマ】 ヒカエノマの反対側をブツマと呼び、かつては仏壇をおいていた。中2階にあがる階段を壁際に設けるが、当初は茅葺きであり、階段は瓦葺き中二階形式に改装して後のものと考えられる。
【ナンド】 オクノマの裏側にあたる6畳の寝室。床と押入を壁際に伴う。
以上より、平面は六間取りに復原された(↓)。
<この日のグロッサリー>
納戸(ナンド): 寝間。貴重品を置いたり、出産の場でもある。
半柱(ハンバシラ): 壁に貼り付ける長方形断面の柱。一方の壁からは見えないが、反対側からは見える。
トオリニワ: 民家・町家の表から裏へとぬける土間。
内玄関(ウチゲンカン): 家族など、主に内輪の人が日常出入りするのに使う玄関。 (野口)
