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縄文-建築考古学、再び(9)

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フィナーレ間近

 1月19日(土)、みどり市岩宿博物館で西鹿田中島遺跡整備委員会の最終回に出席した。3月下旬に史跡公園のオープンセレモニーが予定されているが、さてどうなるか?
 前夜、中途半端に呑んだものだから早くに目がさめて中途半端に仕事をするしかなく、委員会では眠気との戦いだった。他の委員が多く発言するところは極力引いて体力を蓄える。それでも、要所では前に出なければならない。いちばんの出番は、骨組復元をした縄文草創期住居に子どもが昇って危険だというので、布覆いを被せるという提言があった場面。整備の方針を決めた流れとあきらかに矛盾している。


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 ひるがえって、からっ風の強いこの地にテント風の建物を建てても強風で吹き飛ばされる危険性があるとこれまで何度も議論されており、さらに鹿皮の確保が楽ではないことなどから、骨組の露出展示をすることに決めたにも係わらず、工事を担当する技術者が「うちの子どもなら間違いなく昇る」と発言した一言で布覆いをつくって被せることにしたというので、①横風の水平力を孕む危険性、②骨組露出展示を目的化しているのに骨組がみえなくなる矛盾、について指摘したところ、見直しとの回答を得た。
 この問題と係わってイングランドはヨークのミュージアム・ガーデンの話をした。中世修道院の遺跡を復元せずに保全しており、ところどころの残骸に5~6歳ぐらいの少女が登ったり、若者が昼寝したりしているが、管理側は何も規制していない。それは行政と国民が相互信頼している証だが、日本ならまず柵をめぐらして「貴重な文化財に触るな、危険だから近寄るな」とするに決まっている。

 現場で骨組をみると、黄色い防護塀が住居を囲い込んでおり、看板に「のぼらないで! きけん! 遊んではいけません」と書いてある。まだオープンしているわけでもないのに・・・その後、妻木晩田事務所に連絡をとり初期整備で復元した骨組の状況を訊ねたところ、「柵は設置していないし、子どもが昇って怪我したこともない」という証言を得た。おかげで塀をめぐらしたり、布を被せたりすることにはならないように思う。そもそも、子どもたちが遊びに来てくれるような公園になればよいのだが。


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↑ヨークのミュージアム・ガーデン



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 植栽や復元住居などは順調に工事を終えているが、ガイダンス施設の工事は佳境を迎えている。佳境は昨年内に迎えねばならなかったのだが、工程管理の面では遅れ気味のようであり、今後の成り行きによってはオープン・セレモニーは来年度になるかもしれない。遅れるなら遅れるで、時間ができるわけだから、少々趣向を凝らして人集めできるような知恵を絞りたいものだ。


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 博物館の敷地には貯蔵穴の屋根が復元されていた。アイヌのチセに倣って笹葺きとし、棟を樹皮で覆っている。わたしは笹葺きに反対している。理由は単純で、笹で屋根を葺いた証拠が考古学的にみつかっていないからである。鹿皮葺はあるのか、と問われればないが(民族学的資料なら山のようにある)、土器紋様にみるとおり、編物は必ず存在したはずであり、そういうマット状の素材で屋根を覆った可能性はあると考えている。笹葺き屋根については、担当者が以下のサイトのプリントを提供してくれた。

  http://www.chinetsu.jp/cise01.php

 結論を簡単に述べるならば、笹葺き屋根・壁のアイヌ住居(チセ)の場合、炉火を強くしすぎると、住居内外の温度差が激しくなり、屋外の寒気が屋内に一気に流れ込んでくるので、火は屋根雪が融けない程度の弱火にすることが肝要だということである。つまり、笹葺き屋根を下地にして雪のカマクラを維持できればよいわけで、だとすれば、冬の家として土屋根が圧倒的に暖かいことになるであろう。西鹿田中島遺跡の場合、諸般の事情から草創期住居は骨組復元として、皮纏いの建物はガイダンス近くに小振りで再現することにしたが、貯蔵穴の屋根を復元するにしても、屋根被覆材の整合性から鹿の毛皮を使ってもらいたいものである。
 一年前の寒風が嘘のような暖かい一日だった。あとは完成を待つのみ。建築考古学に係わるわたしの最後の仕事になるかもしれない。悔いはまったくありません。


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↑芝生保護材(摩尼寺奥の院に使いたい)  ↓滞在証明
0120西鹿田中島05所在証明01

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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