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登録記念物-摩尼山の歴史性と景観の回復(20)

鷲ヶ峰連続立面図180208_02web


CADによる復元

 摩尼山鷲ヶ峰「賽の河原」を囲む地蔵堂・西国三十三観音石仏覆屋・鐘楼の復元図が完成しました(設計はmts一級建築事務所に委託)。以下、各堂宇の復元概要について説明します。

〇地蔵堂 
 断面は原則として三祖堂の矩計を参考にした。ただし、明治の絵葉書古写真にみる地蔵堂の屋根勾配はかなりきつくみえるので、三祖堂の宝形瓦葺きより強い7/10(正面)、9/10(背面)とした。
 昭和13年11月12日の『因伯時報』にいう格子戸が古写真では格子戸にみえない。ガラス戸の上下羽目板に縦連子を並べている。いわゆる「盲連子」であり、これを記者は格子と表現したのだろうと考えた。手描き復元ラフでは正面扉を引き違い戸にしたが、いまいちど精査した結果、両引戸と判断した。敷居の溝は1本で、両側の花頭窓の背面に片引き戸を隠す。


180206-1地蔵堂一式_01
↑地蔵堂平面復元図  ↓地蔵堂復元正面図・断面図
180206-1地蔵堂一式_02


 意匠上もっとも問題になったのは正面脇間の花頭窓である。年代が近いと推定した龍門寺巡礼堂(南部町・1823)の比例をまず採用したが、縦横比が絵葉書古写真とあわないので、以下の3案を比較検討した。

  A案: 「三祖堂内外陣境花頭窓」をほぼそのまま採用
  B案: 「龍門寺巡礼堂」圧縮採用案(当初案)
  C案: B案を古写真にあわせて縦横比調整

 下の比較図にみるとおり、古写真に近いのはA案もしくはC案であろう。しかし、類例の縦横比を調整するという方法は復元のあり方としては適切ではない(B案のように全体の比例を維持しながら縮小・拡大するのはありうる)。結果、A案を採用することとした(↑)。A案は三祖堂内外陣境の花頭窓であり、明治31年の「寺院所有物明細帳」は享保三年(1718)の建立とする。この記述を鵜呑みにするわけにはいかないが、三祖堂内外陣境の建具は非常に古めかしいものであり、18世紀に遡る可能性を否定できない。かりに地蔵堂の花頭窓がこれに近い形式であったとすれば、やはり「寺院所有物明細帳」の記載する地蔵堂の延享元年(1744)建立説の傍証になるかもしれない。


地蔵堂立面図_01比較
↑花頭窓の比較検討。左から、A案:「三祖堂内外陣境花頭窓」採用、B案:「龍門寺巡礼堂」圧縮採用案、C案:B案を古写真にあわせて縦横比調整


鐘楼180206_01


〇鐘楼
 鷲ヶ峰の鐘楼は礎石や部材を残している一方で、県内に適切な類例を見出せなかった。そのため「このたびは古写真と現存遺構・部材から寸法を推定するのが無難」との結論に達している。この方針に従い、鉛筆描きのラフスケッチをほぼそのまま清書することにした(↑)。

○西国三十三観音霊場石仏覆屋
 こちらもとくに類例とすべき建物が見当たらないので、絵葉書古写真を解読した鉛筆描きラフスケッチをCADで清書した。桟瓦葺きの棟は熨斗瓦ではなく、来待石とする。

 以上を総合して、鷲ヶ峰の建造物群を連続立面図として表現したのがいちばん上の図である。背景に描いた立岩の高さについて正確な寸法を得ていないが、測量時の調査風景写真に映る人物との対比などから、『因幡志』に記された「高サ凡ソ四丈」、すなわち約12m説は妥当であると判断した。  【今度こそ完】


180204摩尼山鷲ヶ峰地蔵堂など_03


【参考文献】
1.浅川滋男編(2012)『摩尼寺「奥の院」遺跡-発掘調査と復元研究-』平成22~24年度科学研究費基盤研究(C)成果報告書、鳥取環境大学
2.浅川滋男編(2013)『聖なる巌-巌の建築家をめぐる比較研究-』平成24年度鳥取環境大学学内特別研究費成果報告書、鳥取環境大学
3.浅川滋男編(2015)『思い出の摩尼-建造物の調査と景勝地トライアングルの構想-』鳥取環境大学学内特別研究費成果報告書、公立鳥取環境大学
4.田中寅男編(1983)『摩尼みちの自然と摩尼寺の歴史-摩尼さんまいりのガイドブック-』蛍光社
5.奈良文化財研究所(1987)『鳥取県の近世社寺建築』鳥取県教育委員会
6.田中新次郎著(1958)『因幡の摩尼寺』鳥取県民俗研究会

【参考サイト】
1.登録記念物-摩尼山の歴史性と景観の回復(1)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1571.html
2.登録記念物-摩尼山の歴史性と景観の回復(2)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1572.html
3.登録記念物-摩尼山の歴史性と景観の回復(3)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1616.html
4.登録記念物-摩尼山の歴史性と景観の回復(4)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1621.html
5.登録記念物-摩尼山の歴史性と景観の回復(5)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1637.html
6.登録記念物-摩尼山の歴史性と景観の回復(6)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1638.html
7.登録記念物-摩尼山の歴史性と景観の回復(7)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1677.html
8.登録記念物-摩尼山の歴史性と景観の回復(8)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1678.html
9.登録記念物-摩尼山の歴史性と景観の回復(9)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1684.html
10.登録記念物-摩尼山の歴史性と景観の回復(10)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1685.html
11.登録記念物-摩尼山の歴史性と景観の回復(11)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1686.html
12.登録記念物-摩尼山の歴史性と景観の回復(12)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1687.html
13.登録記念物-摩尼山の歴史性と景観の回復(13)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1688.html
14.登録記念物-摩尼山の歴史性と景観の回復(14)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1689.html
15.登録記念物-摩尼山の歴史性と景観の回復(15)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1700.html
16.登録記念物-摩尼山の歴史性と景観の回復(16)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1697.html
17.登録記念物-摩尼山の歴史性と景観の回復(17)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1704.html
18.登録記念物-摩尼山の歴史性と景観の回復(18)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1708.html
19.登録記念物-摩尼山の歴史性と景観の回復(19)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1709.html
20.登録記念物-摩尼山の歴史性と景観の回復(20)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1721.html
21.木彫仏、奈良へ
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-65.html
22.増上寺(一)
http://asaxlablog.blog.fc2.com/blog-entry-1701.html

 *以上、閲覧日はすべて2018年2月7日。

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Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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