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こやにやこにや-今治再訪(1)

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古谷横枕の中世大型建物

 今年もまた愛媛にお招きいただいた。4年目になる。2015年、今治市の新谷(にや)森ノ前遺跡で出土した建築部材を現場で観察し、翌16年はプレハブの内と外で2年分の建築部材をつぶさにみた。なんだかよく分からない材が多いなか、1点だけあった栓に目が行き、それと複合するホゾ孔を伴う丸柱と横材を発見して「長押の起源」について思いを馳せた。
 昨年は「男はつらいよ-ブータン山寺放浪記」の講演で、現場の指導はしなかった。このたびは一泊二日の行程で、初日の6日(火)は県立埋蔵文化財センターで古谷(こや)横枕遺跡の掘立柱建物について指導した。新谷(にや)に対する古谷(こや)、つまり古い谷筋にある遺跡である。
 古谷横枕遺跡は弥生・古墳時代~中世の複合遺跡であり、今回は中世の掘立柱建物の解釈がミッションであった。鎌倉時代の大きな掘立柱建物が整然と建ち並ぶ。柱穴は小さいが、柱間は1.9~2.0m前後の等間に近い。鎌倉時代以降現在まで、1尺=30.3cmで固定しているので、柱間や総長などの長さをこの数値で割り算してったところ、柱間は6.4~6.5尺で納まることが分かった。これが所謂「1間」である。そして、1間四方の部屋、つまり面積「1坪」の部屋が整然と並ぶことがわかった。
 現代においては、1坪は6尺四方(3.3㎡)と定義されているが、これは1間=6尺とした場合の面積であり、1間はどれだけの長さとみるかは地域・時代によって異なる。1間=6.4尺なら1坪=3.7㎡、1間=6.5尺なら1坪=3.9㎡となる。古谷横枕の場合、鎌倉時代の建物群なので、現在のような規格化された「畳」はまだない。遺構からみて揚床にもなっていないが、1坪といえば畳二帖分である。日本人が起居する生活空間の単位となる規模であり、これが並ぶ大型建物はなにものかが集団居住する建物ではないか、と推察される。ただし、カマドや井戸は別の区画でみつかっており、二帖(1坪)は就寝・起居のための単位空間と言えるであろう。この点、「横枕」という小字名と対応しているようにもみえる。


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↑「ふくめん」という名の小鉢@松山空港


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 「僧坊」の可能性があるととりあえず指摘しておいたが、残念ながら仏教関係の遺物はみつかっていない。本堂などの主要堂宇は山上にあり、僧坊エリアは山すそに分置された可能性もあるが、いまの段階ではこれ以上踏み入ることはできない。類例もあるようでない。法隆寺東室(ひがしむろ)、唐招提寺礼堂 (元は東面僧房)、元興寺極楽坊(元は僧房東端)などが当初は僧坊であり、今も名残を残す古代の例であるが、中世の例はよく知らない。古い僧坊は講堂の三方(東・北・西)を囲むようにして存在したものであり、用語としては「室」「坊(房)」と対応しているようだ。そういう構成に近いような気もするが、さてどうなのか。
 「僧坊」という語感は格式高く聞こえる。しかし、ブータンのジムカン(長屋)相当の建物だから、鎌倉時代の地方の山寺でもその程度の建物ではなかったかとも思われる。これ以上書くと叱られそうだから、やめときます。


ボルドー移住

 仕事は早めに終わり、ホテルにチェックインして2時間ばかり寝てしまった。早起きしたので、iPadを開いて眺めているだけで、すぐに眠りに落ちる。
 夕食は近くの昭和レトロ風レストランで。忙しいのに、理事長以下5名も集まってくださった。『ドゥクパ・クンレー伝』が話題になった。巨大な金剛で火炎を放射し魔女を焼き尽くす。喜ばない男はいない。その後、オルチャンの店へ。毎年連れてきていただく店だが、あろうことか4月で閉店するとのこと。店を畳んでマダムはフランスに渡ってボルドーに住むらしい。ぜひワイナリーを経営してほしいと頼んだが、とても無理だと仰った。垢抜けした良いお店なので、エースの善愛さんが後を継けばよかろうにと思ったが、すでに移籍先が決まっているとのこと。
 ボルドーに移住か・・・羨ましい。


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↑ケンパが営繕として係わった今治市の校舎もほぼ完成。開学を待っている。オルチャンの店とは対照的でデザインは垢抜けしていない。大手ゼネコンの匂いもしない。設計は学園関連グループのSID創研と大建設計である。前知事の証言とは裏腹に、歓迎している県民は少ないと聴く。この点、2001年開学時の環大も同じだった。

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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