サテンドール(ⅩⅩⅩI)


能海寛生誕150周年記念特別展
3月14日(水)、大根島の中村元記念館で能海寛生誕150周年記念特別展「チベット仏教求法僧・能海寛と中村元博士」をみてきた。わたしが能海に関心を抱いているいちばんの理由は、最後の巡礼行程が西北雲南で終わっていることである。前にも書いたように、能海は大理から麗江へ移動し、そこで最後の手紙を投函した後、チベットに向かう途中で非業の死を遂げている。大理・麗江以北の地は1993~95年に調査した懐しいフィールドである。雲南といえば、東南アジアの水田稲作地域と連続するイメージがあるけれども、チベット・四川の高原地帯に連続する西北雲南では北方遊牧民の匂いがぷんぷん残っており、とくに母系社会で知られる永寧モソ人はチベット仏教の影響が著しく、住居内の炉の祭壇には火神ザバラを祀り、敷地に独立した仏堂を有する。たまたま調査中の民家に死者がでたため、住居内での殯(もがり)から荼毘に付す葬儀までのプロセスを詳細に調査した経験がある。ログハウス風の住居形式は東ブータン放牧民の住居ともよく似ており、ブータンとの比較という点では、高地草原の青海・西蔵以上に西北雲南が重要な位置を占めるように改めて考え始めている。
なんとか大理・麗江・永寧経由で入蔵できないものか、とこの正月から昆明の友人と連絡をとっていて、かなり色よい返事は頂戴しているのだが、先立つものを確保すべく動き始めているところです。夕方、記念館で能海寛の研究をしているOさんとこの問題について話しあった。わたしたちの僧院本堂・民家仏間研究とOさんたちの能海研究がリンクしていけば最善と思っている。


スイングカフェ
大根島に近い境港の側にジャズ喫茶があり、人気がじわじわとひろがってきていると山村カメラマンから教えられていた。新聞記事によると、ジャズ喫茶Swing Cafeの始まりは1990年まで遡る。その店も2015年にいったん閉店となったが、島根デザイン専門学校の元校長でグラフィックデザイナーの青木さんが3代目として店を引き継いだという。
出雲のサテンドールとは真反対で、昼(10:00~夕方)の喫茶店であり、明るく健全なお店である。食事の提供はなく、メニューは飲み物とケーキ類だけ。わたしたちは真昼の訪問となったので、できればカレーぐらいは食べたかったな・・・(わたしなら裏メニューで厨房に隠しおきする)



店奥の小さなステージに大きなブルーのスピーカーが鎮座している。その前に陣取って音楽を聴いた。女性ボーカルがスティングの「見つめていたい(Every Breath You Take)」をカバーしていた。一時期愛聴していた小野リサかなと思ったが、ちがう。最近流行りのかすれ声のアンニュイなムードで、バックはアコースティック系。「見つめていたい」のカバーは多いので、結局誰だかわからなかった。女性ボーカルの曲は明らかにCDだった。雑音はないが、生粋の生音ではない0と1の情報音の集積である。もちろんLPもたくさん所蔵されているが、こういう昼の店ではあまり難しいジャズはあわないよね。オーナーの趣味を押し付けると経営に躓く。そのあたりは釈迦の耳に念仏であろう。昼の客層はマダムたちであり、耳障りのよい音楽をうまくミックスする必要がある。米子の遠音がそうであるように、古典ならばどうしてもコニッツなどのクールジャズ系になってしまうだろう。スイングを店名にされているわけだから、レスター・ヤングあたりはぜひかけてほしいところだが、やはり通好みになってしまうかな?

岡茂一郎商店で利き醤油
ひさしぶりに平田を訪ねた。短時間の休憩であり、学生たちは町を走り回っていたが、わたしは岡商店の醤油アイスをほおばりながら、利き醤油もさせていただいた。「再仕込み醤油」について講釈を受け、味見したが、まろやかなことこの上ない。こういう醤油でアイスをつくるから美味しいんだな。持田醤油の醤油アイスとはまったく別物だそうでして、持田さんとこも頑張んないとね。
いま奈良の食卓には、岡商店のだし醤油とポン酢の小瓶が置いてある。上品な味です。


