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出雲ビル-松江市登録文化財

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松江市の登録制度

 昨年10月、松江市は市内に所在する歴史的建造物の保全活用を図るために歴史的建造物の登録制度を初めて適用した。お~いおいっ、登録文化財の制度は1996年から始まっているよ、という反論を頂戴しそうだが、それは「国登録有形文化財」であって、このたび松江市がはじめた制度は「松江市登録文化財」である。こう書くと、松江市登録文化財は国登録文化財の下位カテゴリーのようにも感じられるが、実体はその逆である。
 国登録文化財は補助金の出ない表彰制度であるのに対して、松江市登録文化財はファサードの修理・修景・改修に対して一定の補助金が出る。自治体指定文化財の補助金制度とどう違うかといえば、指定は文化財価値を継承するための維持・保存・修復全体に関わる補助であるのに対して、松江市登録文化財の場合、外観の補助に限定されるようだ。国の硬直化した指定・登録の制度を補いうる制度として注目に値する。こうした動きは松江市だけにあるわけではなく、先日紹介した平福の「瓜生原」も兵庫県登録文化財と三千万円の補助を受けている。こうして近隣諸県では新しい自治体独自の文化財保護制度を適用し始めており、鳥取も遅れをとってはいけないと20日卒業式後の市文化財保護審議会でも申し上げたところだ。
 白瀉本町の「出雲ビル」は昨年10月に登録制度をはじめて適用された3件のうちの一つである。申請書から概要を抜粋しておこう。

 出雲ビルは出雲益良氏がイギリス遊学の際にロンドンで見たデパートを松江に建てたいとの想いから、大正14年に「出雲ストア」として建築したものである。設計は大森茂。地上4階地下1階(498.4㎡)のビルは、松江最初期の鉄筋コンクリート造建築と考えられる。外壁はコンクリート研ぎ出しで石材風に加工が施され、壁面のレリーフや縦長の窓、逆読みの表記になっている「出雲ビル」の看板などが相まって、建物の個性を際立たせている。内部は、丸形の柱や天井の意匠などもユニークであり、内外とも当初の姿をよく残している。商業のまち白潟地区の歴史を語る上で貴重な建物である。


180315出雲カフェ 180315出雲ビル


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イズモ・ストア

 出雲ビルは地下に「IZUMO STORE」というギャラリー兼カフェを設けている。街を歩いているだけでは目立たないが、入口から音楽が流れ出てきているので、そこにカフェがあるらしいと気づく。入ろうかどうか悩んだが、カメラマンさんが誘ってくださったのでドアをあけ、椅子に腰かけた。伽藍として誰もいない。メニューを覗くと、スパゲッティやカレーの類はみな700円で、珈琲のおかわり自由とある。美味しかったし、安いと思う。ただ、敢えてリピートはしないだろう。
 音楽が曇っている。門前にCDプレーヤーをおいて音楽を流しているが、それは人寄せのためであり、カフェ内部では門前の音楽が微かに聞こえるにすぎない。ギャラリー兼用にしているのに音楽がこれでは不釣合いでしょう。音楽がないならないでいいけど、こういう曇った音楽は空間も濁らせるだけ。こういうビルこそジャス喫茶にすべきであり、地下の穴蔵に大きなスピーカーをどかんと押し込んで、隠れ家風に質の高い音楽を聞かせたいものだ。
 ファサードの改修費を補助しても、肝心の内部活用がずれていては元も子もない。出雲市駅前のサテンドールのように、人影のないシャッター通りにあっても人は集まってくる。店の雰囲気と音楽と酒・食が充実しているからである。
 少なくとも門前に音楽を流す必要はない。濁ったBGMよりも音学なしのほうが落ち着けます。


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コメントありがとうございます

あの日は土蔵を物色しておりました。ジャズ喫茶にできるような土蔵もしくは長屋門をわたしは探しています。その物件をみた後に出雲ストアに入りました。とても音楽に敏感になっていたので、ああいうコメントになってしまいました。昼下がりのお店はやはりケーキセットに音楽のペアが最適だと思います。3階にジャズバーができるなら、あまり機材にこだわることもないでしょうが、そこそこの音響で聞かせたいですよね。3階がジャズなら、地下はクラシックギターとかバロックのチェンバロとか趣を変えるのも一興かと案じます。ジャズバーにはぜひ行きたいです。その節はまたスパゲッティを食べによらせていただきますので、よろしくお願いいたします。
ご指摘の点は修正しておきました。失礼いたしました。まだ何かあるようでしたら、ご連絡ください。
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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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