猫と昼寝のマルタな日々(3)


マルタの巨石神殿群
わずか5日間の滞在であったが、マルタのあらゆる側面に魅了された。地球の未来を感じた。それほどの場所であったと振り返って今も思う。まずは世界文化遺産「マルタの巨石神殿群」のお話からしよう。3月25日(日)、タクシーを1台チャーターし、島中の名所を駆け巡った。ちょっと駆け足すぎたので、最終日にもういちど訪れたところもある。ゴザ島を訪問したのは二日後の27日。
マルタとその離島にあたるゴゾ島の約30ヶ所で新石器時代に遡る巨石神殿遺跡が確認され、うち6神殿が世界文化遺産に登録されている。最初に登録されたのはゴザ島のジュガンティーヤ(Ġgantija)神殿で、年代は前3600~2500年に遡る。巨石建造物にはさらに古いものがあり、6500年前に遡る世界最古の巨石建造物であり、イングランドのストーンヘンジ(前2500~2000年)をはるかに年代で凌いでいるし、構造も複雑であり、「建築」であるのは間違いない(ストーンヘンジの機能は不明)。


日本に置き換えるならば、縄文時代の前期から中期に移行するころであり、気候学的にみると、いわゆるヒプシマール(気候温暖)期にあたる。縄文海進がひろがる日本において、高台に広大な集落が開発され、縄文文化の最盛期を呈したのと併行して、中国でも複数の地方文化が花開き、地中海でもマルタ島周辺に世界最古の石造建造物が造営されたのである。
学生たちにはいつも説くのです。気候が温暖になって人類は死滅するわけじゃない。ひょっとしたら、さらに栄えるかもしれない、と。
25日に訪れたのはマルタ島のハジャール・イム (Hagar Qim)神殿とムナイドラ (Mnajdara)神殿。両者数数百メートルしか離れていない。ごらんのとおりドーム屋根で巨石モニュメントを覆っている。レンゾ・ピアノの関空を小さくして被せたような構造で、のどかなマルタ島の自然景観には不釣合いだが、海岸近くの強風厳しい場所なので劣化・転倒を避けるためには仕方ないだろう。



↑ハガールイム ↓石偶(国立考古学博物館)




27日に訪問したゴザ島のジュガンティーヤ(Ġgantija)神殿が本家本元の神殿遺跡であり、他に先んじて1980年に世界遺産リストに搭載された。残りの5件は1993年の追加登録とのことである。
もう眠くて仕方ないので、くわしく遺構について記載するのはやめとくが、どうしても語っておきたいのは石造のビーナスのことである。24日のヴァレッタの国立考古学博物館以来、どの博物館やガイダンス施設を訪れてもこうした石偶が必ず展示してある。みな神殿跡から出土したものだが、ごらんのとおり、力士さんのように太った像ばかりで、いったい何をどれくらい食べていたのだろうと推測するのだが、あたりをみわたすと、同じような体型をした男女がわんさかいるではないか。とくに太った女性がじつに多いのである。わたしの腹がスリムにみえるほど、もっというと後白河御前の肉付きすら細身にみえるほどの体型がうようよいて、おまかえにみんなマツコの如く堂々としている。

問題は食事なんです。マルタについてはじめて入ったレストランで控えめにパスタを二人前注文したのね(3人で二人前)。出てきたディッシュをみて仰天したんだ。だって、一人前が日本の3人前ほどの分量なんだから。もちろん美味しい。極上の味です。美味しいのはピザでもハンバーグでも同じであり、3日めからいっさいパスタ類を注文しなくなった。野菜と魚介と肉だけのオーダーにしたんです。そうしないと、わたしたち自身いっそう石偶の体型に近づくこと疑いなしでしたから。



↑↓24日の昼食(ヴァレッタ埠頭)。
