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科研新規採択!

ブータン仏教の調伏と黒壁の瞑想洞穴

 エイプリルフールにお知らせした新規科研採択内定から正式に交付申請書の作成に移行し、昨日学術振興会に送信しました。小さな科研ですが、なにぶん科研自体が通りにくい地方の小大学なので勇気づけられます。6年間ブータンに通った労苦が少しだけ報われた気がします。以下に概要を記します。

   研究種目: 基盤研究(C) 2018~2020年度
   課題番号: 18K04543
   研究題目: ブータン仏教の調伏と黒壁の瞑想洞穴 -ポン教神霊の浄化と祭場-
   代表者:  浅川滋男(共同研究者無)
   経 費:  4,299,000円 (直接3,300,000円 間接999,000円)

研究の目的
 仏教における調伏とは魔女・悪霊等を修法によって浄化し、仏教側の守護神として再生させる行為である。こうした邪神浄化のプロセスは、仏教拡散のあらゆる過程で限りなく確認できる。ブータンでも谷筋に1柱以上の守護神が存在し、そのルーツは仏教以前に信仰されたポン教の神霊に起源する。仏教の側からみればネガティブな存在でしかないポン教の女神や神霊が洪水・厄災などを引き起こす原因だと認識され、これらを調伏するため僧侶は黒い壁の瞑想洞穴で長期間の瞑想修行に専心する。その結果、魔女・悪霊は浄化され、谷の守護神として生まれ変わる。本研究は、〈1〉仏教僧院の縁起を聞き取りして「悪霊」の悪行を把握した上で、〈2〉黒壁瞑想洞穴などで「悪霊」を調伏したプロセスを調べ、〈3〉谷の守護神として再生した後の性格と本堂・仏間における祭り方を明らかにする。この問題をブータンにとどまらず、チベット側でも調査しブータンと比較したい。

研究計画
 上記〈1〉〈2〉〈3〉については調査時に僧侶や村人からヒアリングを重ねて明らかにする。この場合のヒアリング情報は「歴史的事実」ではない。それは、村人や僧侶が無意識に共有する歪曲した疑似歴史情報である。その集団幻想のなかに、ブータン人の自然観や精霊信仰、「悪霊」調伏の過程が埋め込まれている。歪められた認識の固まりこそが本研究の最も欲する文化的情報である。これに類似した情報は民話にも含まれている。民話・縁起を通してポン教系神霊の調伏に係わる情報を収集する。
 ヒアリングによって得られた擬似的地理情報(風水)を実際の地形と対比するため、仏教僧院周辺の地形をできるだけ正確に把握する必要がある。これについては、Agisoft フォトスキャン(研究室所有)を活用し、多重撮影した写真から地形の3Dモデルを作成し分析を試みる。このため高性能のパソコンTegara PC-3419(350千円)が必要である。
 現地調査では、僧院本堂や民家仏間の図面を作成する。本堂の場合、内部の写真撮影と実測調査は原則禁じられており、滞在時間も制限されるので、歩測によって略図を作成し、神仏の像とタンカ(掛軸仏画)の配置を野帳に描き込み、壁画についても制作年代や内容に係わる記録をとる。神仏の現地呼称はインフォーマントに正確な表記で書いてもらう。
 僧院だけでは十分な情報を得られないので、民家仏間の詳細な調査もおこなう。仏間は撮影・実測が可能である。まずポラロイドで神仏の像・画を撮影し、油性黒マジックで現地呼称等の情報をポラロイドに書き込んでから、一眼レフで仏像等を写し込んでいけば、神仏の像やタンカなどの画像情報を誤りなく網羅的に収集できる。実測についても、時間的余裕があるので、平面図・立面図すべてを描き切って採寸し、室内展開図を作成する。神仏等の配置がひと目で理解できるように、最終的には考現学的な室内パース図に仕上げたい。とくに重要な点は、調伏された守護神の性格と配置を正しく理解することである。
 瞑想洞穴ドラフは、部外者の入室を厳禁しているが、ブータン各地には、廃墟となった瞑想洞穴跡が散在する。その実測とヒアリングから当初の状況を復元する。調伏のためドラフ内部でおこなう修行の内容については、僧侶からヒアリングするしかない。以上の僧院本堂や瞑想洞穴掛屋等については建築年代を判定する必要もある。所有者の許可を得ながら、木造部材の年輪サンプルや版築壁に残る炭化材等を抽出してAMS法による年代測定を試みる。
 調査対象地は、初年度がハ地区を中心にした西ブータン、第2年度は中央ブータンのタン渓谷、最終年度はチベット・雲南に近い東ブータンを予定している。また、ブータンのチベット仏教ドゥク派と比較するため、初年度もしくは第2年度にブータンと生態系の近似する中国西蔵自治区・雲南省の境域を調査して、ゲルク派の僧院本堂・仏間と比較したい。

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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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