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過去への旅路-みんぱく訪問記(2)

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映画セットと民族学展示

 2年4ヶ月前、「考古学と民族誌」というみんぱくの研究会でスピーカーを務めた。あのときはまだ重鎮に知り合いがいた。当時の館長は修士課程でミクロネシアを学んでいたころの師匠だったし、アムールをともに探検した歴史民族学者はアイヌに関わる博部館に転任する直前であったので、誘われて食堂で昼食をともにした。今はみんないなくなっている。いや、ひとりいるんだ・・・ちゃんとLABLOGに記録が残っている。
 いまから十年ばかり前、ハロン湾の文化的景観に関わる科研の研究を進めていたころ、桂林のカルスト地形と鵜飼を視察した後、広州に飛んで中山大学人類学系を訪ねた。わたしの記憶が正しいならば、あのとき私は50歳であった。調べてみると、「中山大学人類学系-南粤逍遙(Ⅵ)」という記事を2007年12月28日にアップしている。その3日後に誕生日を迎えて51歳になる直前だった。
 中山大学に日本から一人の大学院生が留学していて、ずいぶんお世話になった。その青年が今は立派に成長しみんぱくの准教授として活躍している。民博が所蔵する北方の狩猟具を調査したいとゼミ生がいうので、私は十年前に一度しか会ったことがないが、その後何度かメールをやりとりしていた准教授にほとんど十年ぶりにメールでお願いしたところ、ほんとに信じられないくらい丁寧な対応してくださって、昨日報告した「罠」の調査が実現した。本当にありがとうございました。
 収蔵庫での調査はスムーズに運んだ。ブータンで磨いたポラロイド活用の方法は特許をとりたいくらいのレベルに進化してきたと自負している(のは私だけ?)。これから先の整理は、これまた研究室伝統のファイルメーカによるデータベースを駆使してもらう予定である。


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 准教授は収蔵庫での調査終了後、常設展の案内までしてくださった。最初はビデオテーク。なんと懐かしや、貴州省黔東南ミャオ族トン族自治州をフィールドとする「貴州の住まい」と題するビデオが一瞬にして画面にあらわれた。蘇洞という村でのフィールドワークの記録である。1990~91年ころの調査で、いまはなき田中淡・周達生・江口一久らの先輩も参加してくださった。


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 それからヤップのチェチェメニ号を皮きりに常設展の参観が始まった。常設展はなんどもみたが、准教授によれば、2011年に大がかりな展示替えがあったとのことで、たしかに以前よりも躍動的な波動が感じられる。全体的な印象を述べるならば、伝統的な文化よりも現代文化に照準をあわせており、その地にある店舗の一部などをそのまま移設するとか、再現するような展示が目についた。そういえば、寅さん記念館の映画セットとどこか似ている。映画セットと民族学の展示がリアリティを追及するという点において同じ方向をむいていることを確認できた。たとえば、モンゴル遊牧民の円筒形テントの外側にBS放送を受信するアンテナを立てている(↓)。テントの内部は伝統的な佇まいだが、アンテナの存在により、遊牧する人びともすでに我々と同じようなニュース映像だとか、インタネット情報の恩恵を受けていることが分かる。考古学・建築史などの復元的な方向性とは真逆の展示理念だと言えるかもしれない。


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00みんぱく01ベリー01 ベリーダンス衣装


現在学としてのアイデンティティ

 これは、民族学(文化人類学)の存在意義と直結する問題なのだろうと思う。たとえば、准教授の専攻する中国の場合、歴史学・考古学・仏教学などが人文科学のなかで非常に重要な位置を占めるし、業績も圧倒的に多い。しかし、民族学はそれらの学問領域に追従するのではなく、自らの依って立つアイデンティティを明確にしておく必要がある。それは「現在学」的視点だということに尽きるであろう。2011年になされた大規模な展示替えは、大きく「現在学」の方向に舵を切ったものだと私は思った。決して間違った方針だとは思わないけれども、その一方で、どのように歴史的・伝統的な文化を表現するのかも当然問われなければならない。
 中国の展示は民間信仰に重きをおいてなかなかカラフルかつダイナミックになっていた。ただし、専属の研究者3名がすべて漢族の専門家であるため、漢族文化の展示は充実し、海外の華僑社会にも拡大している一方で、少数民族の研究者が一人もいないため、漢族展示との落差が大きくなっている。なにより、チベットの展示が薄すぎる。ブータンもないに等しい。インド以東の世界において、チベット・ブータンは非常に重要的な宗教文化の中心地である。なんとしてでも、この地域の展示を充実していただきたい。個人的な感想を述べるならば、ダライラマのいないアジア的世界など想像できない。


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 もうひとつ個人的なことを述べるなら、わたしの趣味は音楽であり、とくに弦楽器に目がないことはLABLOGの愛読者ならよくご存じであろう。この分野においても、伝統的な民族楽器だけでなく、現在的なポップ音楽の動向やベリーダンスなども展示してあり、もし学生を連れていなかったら、音楽コーナーにはりついていただろう。とくに気にしていたのは、中国古代の楽器「」である。日本の古墳時代遺跡から出土するようになった、この打弦楽器の類例を探してみたのだが、短時間だったためか、発見できなかった。音楽考古学の分野はいぜん未発達であり、ぜひとも民族音楽の研究者と交流して、日本の「筑」を復元してもらいたいものである。
 余談ながら・・・一昨年は人前で2回ギターを弾いたが、昨年はついに機会を逸した。ことしは復活してやろうと秘かに企んでいる。

 さて、日本対スイスが始まります。


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魯班13世

Author:魯班13世
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魯班(ルパン)は大工の神様や棟梁を表す中国語。魯搬とも書く。古代の日本は百済から「露盤博士」を迎えて本格的な寺院の造営に着手した。魯班=露盤です。研究室は保存修復スタジオと自称してますが、OBを含む別働隊「魯班営造学社(アトリエ・ド・ルパン)」を緩やかに組織しています。13は謎の数字、、、ぐふふ。

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